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[写真] 2012年ツール・ド・フランス最終ステージの表彰台で闖入者を追い払うイノー(右)
ツール・ド・フランス「5勝クラブ」の3人目は、ベルナール・イノー(フランス・1978、1979、1981、1982、1985年優勝)。マイヨ・ジョーヌ累計着用日数はメルクスの111日に次いで2位となる79日。区間優勝回数は28回で、イノーの34回に次ぐ。
気迫あふれるファイターであり、泣く子も黙らすようなプロトンのボスでもあった。フランス人として最後のツール優勝者である点や、その強いキャラクターで、いまだにアイコン的存在だ。
現在、3大ツール(ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャ)を全制覇した選手は下記の5人だが、すべてで2勝以上しているのは彼だけだ。
ジャック・アンクティル(フランス)
ツール5勝、ジロ2勝、ブエルタ1勝
フェリーチェ・ジモンディ(イタリア)
ツール1勝、ジロ3勝、ブエルタ1勝
エディ・メルクス(ベルギー)
ツール5勝、ジロ5勝、ブエルタ1勝
ベルナール・イノー(フランス)
ツール5勝、ジロ3勝、ブエルタ2勝
アルベルト・コンタドール(スペイン)
ツール2勝、ジロ1勝、ブエルタ2勝
その他、ワンデイクラシックでも活躍。1980年リエージュ〜バストーニュ〜リエージュでは、極寒の吹雪の中、意地で優勝を手に入れた。170人以上が出走し、完走者は21人という試練を制したが、2本の指が凍傷になり、今でも寒さで疼くという。
現在と違って、当時はレース中のコミュニケーションの手段として、無線は使用されていなかった。だからレース中、イノーの怒号や罵声が響き渡り、男たちのぶつかりあいは生々しかった。
そんな闘志あふれる走りをした別名「穴熊」は、32歳を前にして引退し、酪農業を営むようになる。ツールに姿を見せるなど、自転車界との縁は続いていたものの、さほど未練があるようには見えなかった。
転機は2006年。農場経営に区切りをつけることを決める。2008年に来日した際、そのワケを彼はこう語った。「妻の兄弟の死に直面し、こんなこと(酪農)をしていていいのだろうか?もっとまだ他にできることがあるのではないか?、と疑問をもつようになったから」と。
以来、ツール主催者A.S.Oの渉外担当として、露出度は増した。2008、2009、2012年のように、表彰台に接近する闖入者を俊敏に追い払う様子は、どこかツールの守護神のようでもある。
Naco
1999年末、ホームページを立ち上げ、趣味だった自転車ロードレースの情報記事を掲載しはじめる。2000年夏からは、ツール・ド・フランスの現地観戦レポートを開始。同サイトには、ロードレース・ファンたちが数多く訪れている。現在、フリーランスのジャーナリストとして自転車専門誌に記事を寄稿している。
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