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獲得したジャージに自転車やヘルメットのデザインも合わせた4賞獲得選手たちはプロトンの中でもとりわけ浮き立つ存在だ(2012年大会)
チームジャージには流行があるらしく、以前目についたサイケデリックな色調は激減し、シックなモノトーン調のものが増えた。そんな中、存在感を主張しているのは、山岳賞トップの選手が着用する白地に赤い水玉ジャージだろう。この柄は、かつて本ジャージのスポンサーをしていたスーパーマーケット「シャンピオン」の柄から取られた、と思われがちだが、そうではない。
1975年、山岳賞のスポンサーを引き受けたショコラ・プーランが、自社製品やキャラバンカーにこの柄をつけたのが起源。もっとも赤玉ジャージは、戦前のパリをも彷彿させたという。1930年以降、夜の娯楽として、室内競技場で観戦を楽しむのが、パリジャンたちの間で流行していた。トラック競技選手のアンリ・ルモワヌ、通称「小さい水玉の男」が、トレードマークの派手な水玉姿でさっそうと登場すると、場内の視線が彼に釘づけになったという。
在りし日の華のあるジャージこそ、ツールの花形クライマーにピッタリ、そんな計算もあったかもしれない。ちなみに、本ジャージの導入は既述のとおり1975年ながら、山岳賞制度自体の開始は、1933年にさかのぼる。目的は、驚異的な上りの達人でありながら、下りが下手で、稼いだタイムを失ってしまうビセンテ・トルエバのような選手を救済するため。山頂地点に設けられた山岳ポイントを先着の選手に付与することで、士気も高まる。第1回受賞者は、もちろんトルエバだった。
一方、ツール開始50年目の節目に導入されたのが、ポイント賞。ゴール地点その他のスプリント地点に、いち早く到達した者にポイントが与えられていく。高速系の選手に分があるが、ゴール地点のポイント配分が一段と大きいため、集団ゴールスプリントに秀でていないと賞には手が届かない。最多ポイント獲得者が着用する緑のジャージ、マイヨ・ヴェールは、賞の創設と同時に発案された。
ウエアの緑色は、1953年当時、最初にこのジャージのスポンサーを担った老舗デパートにちなんでいた。この店は、19世紀初頭からオートクチュールではなく、固定価格で買える既製服を作製・販売し、20世紀初頭には、自転車に乗るためのジャージやキュロットも扱うようになる。丁度スポーツ用ウエアの需要に注目が集まり始めた頃で、主催者の雑誌ロトが、スポーツ用品販売店の広告を掲載することもあった。
ではなぜデパート協賛のウエアに緑色?という疑問は、店の名を聞けば解けるはず。「ラ・ベル・ジャルディニエール」。美しい(女性)庭師、とくれば、浮かぶのはやっぱり緑色。現在協賛するPMU(場外馬券販売などを手掛ける公社)も、これ以上ないほどハマっている。競走馬が駆け抜けるのは、グリーンの芝生。さらに、自転車競技用トラックが競馬場のコースを模して考案されたことや、ゴールめがけてダッシュする共通点を考えれば、まさに最高のマッチングといえる。
Naco
1999年末、ホームページを立ち上げ、趣味だった自転車ロードレースの情報記事を掲載しはじめる。2000年夏からは、ツール・ド・フランスの現地観戦レポートを開始。同サイトには、ロードレース・ファンたちが数多く訪れている。現在、フリーランスのジャーナリストとして自転車専門誌に記事を寄稿している。
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