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フアン・アントニオ・フレチャ
カルロス・サストレ
パブロ・ラストラス
つわものどもの名勝負や悲劇的クラッシュシーンのほかに、レースシーンの一部として忘れがたいのが、特色あるウィニングポーズだ。ファンを喜ばせたいから、と毎回ユニークなガッツポーズを繰り出してきたペテル・サガンの場合、駆けっこをするようなポーズもあった。唇に押し当てた人差し指を天高く突き上げるリシャール・ヴィランクのポーズも記憶に残る。
100周年という記念大会だったせいか、なぜか2003年はウィニングポーズの宝庫だった。
◆第9ステージ勝者:アレクサンドル・ヴィノクロフ
赤ん坊を腕の中に抱える仕草でゴール。その1週間前に1歳の誕生日を迎えた双子の息子を祝うポーズだった。その前年、息子が生まれた際には、こんな秘話がある。ツールに出場予定だった彼は、身重の妻を残して旅立った。しかし手痛い落車のため、直前で出場を断念。妻が出産したのは、自宅に戻った2日後のことだった。「ツールは逃したけど、最高の瞬間に立ち会えた!」まさに怪我の功名だった。
◆第11ステージ勝者:フアン・アントニオ・フレチャ
ツールーズのステージを制し、矢を射るポーズでゴール。自身の名前「フレチャ」とは、スペイン語で「矢」の意味なのだ。同時に、ハートを射止めるポーズと、取れなくもない。中退したバルセロナ大学時代の学友でガールフレンドのルルドが、当時ツールーズに住んでいた。彼女の家で過ごしながらトレーニングに出かけることもあり、周辺の地形は熟知していた。最愛の人の前で最高のアピールができた。
◆第13ステージ勝者:カルロス・サストレ
ポケットからおしゃぶりを出し、口にくわえてゴール。前代未聞のウィニングポーズとなった。「優勝を期待してわざわざ持ってきていたのですか?」の問いに、彼はこう答えた。「おしゃぶりは、お守り代わりに携帯していた。苦しい時代に支えてくれた家族に感謝の気持ちを伝えたくて、ふと思いついてこれを出したんだ」
◆第18ステージ勝者:パブロ・ラストラス
フィニッシュ地点で語りかけるように天を仰ぎ見て、そして指を突き上げたラストラス。天国への合図だった。丁度4ヶ月前にガンで母が急逝。余りにあっけなくて、茫然自失の日々を送った後のツール出場だった。途中疲労でノックダウン寸前だったものの、食糧補給と補水で立ち直る。3人のスプリント合戦にもつれ込んだフィニッシュ手前では、最高の贈り物を天に届けたい!、そんな思いでがむしゃらに漕いだ。この日は、母の誕生日。優勝への思いは、誰よりも強かった。
Naco
1999年末、ホームページを立ち上げ、趣味だった自転車ロードレースの情報記事を掲載しはじめる。2000年夏からは、ツール・ド・フランスの現地観戦レポートを開始。同サイトには、ロードレース・ファンたちが数多く訪れている。現在、フリーランスのジャーナリストとして自転車専門誌に記事を寄稿している。
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