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ツール・ド・フランスと巡る、フランスワイン12の旅 〜ラングドック・ルーション〜 ひまわり畑とフランス家庭に欠かせないワインと
ツール・ド・フランス by 山口 和幸[写真](c) Pressports/Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランスの象徴的なシーンとして、みなさんはどんな光景を思い浮かべる?そう聞かれたら、「一面のひまわり畑の中をカラフルなジャージに身を包んだ選手たちが走っているところ」と答える人も多いのではないだろうか。ひまわりの黄色はツール・ド・フランスのシンボルカラーであり、黄色いリーダージャージ、「マイヨ・ジョーヌ」は王者の称号でもあるからね。
ただし、丘の上の稜線まで見事なひまわり畑が広がっている景色は、フランスのそこかしこにあるわけじゃない。やはり息をのむような黄色のじゅうたんが目撃できるのは、フランス中南部に位置するラングドック地方やルーション地方だろう。都市で言ったら留学生も多いモンペリエ、そして「ここを見ずして死ぬな」のカルカッソンヌや、スペイン国境に近いペルピニャンだ。
ラングドック・ルーション地方は薄桃色の屋根瓦、焼けた大地が特徴。語頭に「カステル」、語尾に「ジャック」とつく町の名前が多い。それ以外の地域とはちょっと違う雰囲気に満ちあふれている。たとえばラングドックはかつてフランス語ではない「オック語」を話していた地域で、今でもとてもなまりのきつい言葉をしゃべるのもその理由のひとつだ。
ラングドック地方の出身選手で有名なのが、フランスのローラン・ジャラベールだ。愛称は「ジャジャ」あるいは特徴的な太い眉毛から「パンダ」と呼ばれ親しまれてきた。もともとはスプリンターで1992、1995年とマイヨ・ヴェールを獲得。その後、オールラウンダーに転身して2001年から2年連続で山岳賞を獲得した。
引退後はオートバイの後部席に乗りながらの解説を務めるなどで活躍していた。VIP車に乗って視察するサルコジ元大統領やオランド大統領にマイクを向けたのもジャラベールだった。独特のなまりがあって田舎者っぽいのだが、それがかえって親近感となって、現在でもフランス国民の人気者だ。今オフに交通事故に遭い、現在は療養中だと思うが、元気な姿をツール・ド・フランスの現場で見たいと切に願う。
夏は乾燥して暑く、冬は湿度があって温暖。そして日照条件がいいのでおいしいワインが収穫できる。日本ではあまりなじみがないかもしれないが、フランス一般家庭で最も消費されるコストパフォーマンスの高いワインなのである。ボクも旅の途中のシュペールマルシェ(スーパーマーケット)で赤ワインを買うなら、このラングドックあるいはルーション産だ。
ピレネーのおひざもとに位置するだけに、ツール・ド・フランスのコースから外れることは絶対にない。今年はどんな戦いになるのかな。ひまわりの生育はいいかな。ラングドック・ルーション地方のことを考えると、草の香りと赤ワインの味がふっと思い描かれる。どこかなつかしく、リラックスできるのである。
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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