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1903年ツールは7月1日から19日までの間に計6ステージが配され、トップと最下位の最終タイム差は64時間47分以上。第2回目に至っては、101時間36分だった。この場合、1ステージ平均16時間以上の差がついていたことになる。1905から1912年までは累計タイムでなくポイント制で争われたので時間差は記録に出てこないが、元に戻った1913年は63時間12分、翌年は99時間4分差だった。
最終結果の1位と最後の順位のタイム差が一けた以内に収まるのは1931年以降のこと。2013年、総合首位のブラッドリー・ウィギンスと最下位ジミー・アングルヴァンの時間差は、3時間57分36秒だった。このように昨今では、3週間走って、累計で3時間程度の開き、というのがスタンダードになっている。以前ほど、莫大な時間差がつかなくなったのは、制限時間制度が整備されたことに一部起因すると推測できる。
タイムリミットの算出には係数が用いられ、少し複雑だ。なにしろスタート時点で何時間以内に走ればいいと決まっているものではない。すべては一着の選手のタイムが基準になり、そこから「何%」以内でゴールせねばならない、というかたちになる。さらに、この「何%」の数値は、難易度を基にしたステージごとの格付けと、トップの選手が出した平均速度の組み合わせで決められていく。
具体的には、まず、すべてのステージは事前に区分けされる。平易なステージ、難易度中レベル、難度が高い区間、短距離で集中的に難度が高い区間、個人タイムトライアル(ITT)、チームタイムトライアル(TTT)の6タイプだ。ITTは平均時速に関係なく、トップタイム・プラス25%がタイムリミットとなり、シンプルだ。TTTの場合は、優勝チームの5位の選手から30%以内のタイムでゴールする必要がある。
しかしTT種目以外の区分では、トップタイム保持者の平均時速毎に基準が変わる。たとえば、分類「一」の平易なステージの場合。区間優勝者の平均時速が36キロ以下であれば、トップタイム・プラス3%以内が制限時間となる。36から38キロの間なら4%……といった具合(2011年時点)
ただし、悪天候、道路封鎖、理不尽な突発事項や、タイムアウトの選手が当日出走者全体の20%以上にのぼる場合などは情状酌量も可能、という条項が付加されている。2011年第18ステージなどはまさにそのケースだった。グルペットと呼ばれる後方の大集団に88人もの選手が含まれていた。
彼らは、1着のアンディ・シュレクより遅れること35分以上。その日のタイムリミットは33分07分だったから、本来ならアウト。しかし、スターター169人の半分以上の数字とあって、20ポイント減点だけで、集団はレース続行が許された。その中にはトップスプリンターのマーク・カヴェンディッシュも含まれていた。最終日、彼が総合スプリント賞に輝いたのは、この救済措置のお蔭だった。
Naco
1999年末、ホームページを立ち上げ、趣味だった自転車ロードレースの情報記事を掲載しはじめる。2000年夏からは、ツール・ド・フランスの現地観戦レポートを開始。同サイトには、ロードレース・ファンたちが数多く訪れている。現在、フリーランスのジャーナリストとして自転車専門誌に記事を寄稿している。
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