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サイクル ロードレース コラム 2013年6月19日

ツール・ド・フランスと巡る、フランスワイン12の旅 〜南西地方〜 ワインは明日への英気を養うための小道具だ

ツール・ド・フランス by 山口 和幸
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ツール・ド・フランスと巡る、フランスワイン12の旅 〜南西地方〜

[写真](c) Pressports/Kazuyuki Yamaguchi

南西地方(シュッドウエスト)は、その名のとおりの地方紙「シュッドウエスト」のおひざもとで、競合紙を発行するツール・ド・フランス主催社は駆け足で通り過ぎることが多いような気がする。この地方は地平線まで一直線の道が延びる大平原が特徴なので、ボクがそう感じるだけかもしれないが…。このあたりの主な産業は農業で、フォアグラやトリュフが名産。もちろんワインも赤・白が選びたい放題だ。

1994年のツール・ド・フランス。まだ駆け出しだったボクはこのあたりで審判車両に同乗したことがある。この審判車両はレースに先行してコースを走っていくのだが、お昼時になるとドライバーが無線で「これから任務を離れてランチにするからな」と他の車両に連絡。一気にスピードを上げてさらに先行すると、丘の上のゴキゲンな木陰を見つけて審判車両が停車した。

いかに世界最大の自転車レースの最中であろうと、ランチはしっかりと楽しむ。そしてゲストのおもてなしにはワインも欠かせない。もちろんドライバーは飲まないが、まずは立派なランチボックスを提供され、すかさずクーラーボックスから冷えた発泡ワインが取り出され、グラスにそそがれた。それを飲み干すと次はシュッドウエスト産の赤ワインが出てきた。

そのとき気づいたことは、「ああ、このレースは世界最高峰の競技であるとともに、社交や娯楽が同時進行で展開していくフランスの一大イベントなんだな」ということだった。そんなことを考えているうちに、「選手たちが近づいてきたぞ」とそそくさとグラスやランチボックスが回収され、本来の任務に戻っていったのである。

ゴール地点の横にはゾーンテクニックというテレビ中継車のスペースがあって、国際映像を提供するフランステレビジョンのスタッフが少なくとも200人以上ひしめく。専属コックと3台の食料車が同行し、大型テントを張り巡らせたテーブル&チェアでスタッフが優雅に食事をしているシーンを毎日のように見る。ここにも地元のワインが木枠ごと運び込まれるのである。

ちなみに選手はワインを飲むのか?いちおう夕食の各テーブルにはミネラルウォーターのグラスとは別にワイングラスが置かれる。テーブルにはあたり前のようにワインボトルが配られるので、飲みたい選手は飲める。しかしたいていは1杯程度のようだ。軽めの一杯は疲労回復のための血行を促進させるからだ。

その一方で、チームの所属選手が区間優勝したときの夕食はみんなで乾杯だ。「明日なんてどうだっていいよな」という雰囲気に気になる。たまたまレストランに居合わせたときは、ボクのところまで祝い酒がふるまわれた。健闘をたたえる。そして激闘を終えた人間たちが明日への英気を養うための小道具がワインなんだろうね。

代替画像

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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