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ツール・ド・フランスと巡る、フランスワイン12の旅 〜ブルゴーニュ〜 おれたちの村には上等なワインと料理がある
ツール・ド・フランス by 山口 和幸[写真](c) Pressports/Kazuyuki Yamaguchi
それはブルゴーニュ地方だったことを記憶している。とある年の第6ステージの122km地点、グィドンという町で礼服姿の老紳士にいきなり行く手を阻まれた。
「ステーキがご機嫌な具合に焼けてるんだ。それにこの町には上等のチーズとワインもある」
ほとんど強制的に農家の中庭に連れて行かれた。
「ようこそ!」と村長が手ぐすねを引いて待っている。
ツール・ド・フランスで脚光を浴びるのはスタートやゴールの町だ。しかし途中の町もなんとかピーアールしたい。そこで町の特産品をずらりとそろえて網をはり巡らして報道陣を待ち構えるわけだ。
「この町はベルナール・テブネが生まれたところよ」
テレビの解説者をしているかつてのチャンピオンだ。
「日本から来たのか。日本ってどこにあるんだ?」
「ツール・ド・フランスはテレビでやってるのか。選手は出てるのか?」
祭りの衣装で着飾った村民から質問攻め。
「肉食え。ワイン飲め」。このブルゴーニュはワインは赤も白もおいしいし、なによりも新鮮な食材を使った料理が最高だ。そう言われてちょっとうれしかったが、ゴールのリヨンまではまだ108kmもあるし、ハンドルを握る立場なのでごちそうだけをいただいた。
ブルゴーニュ地方の主要都市と言えばマコン、オーセルなどだ。ツール・ド・フランスはあまり通過しないが、アルプスが後半にある年はパリまでの大移動の途中で一息つくところ。ボクも最後のガソリンを入れ、パリを目指す。期間中はジャージで過ごしていた女性スタッフも、ブルゴーニュでスカートに着替える。パリはそれほど特別なものだからだ。
1998年には最終日前日にこのブルゴーニュ地方でタイムトライアルが行われ、ヤン・ウルリッヒが優勝している。2006年はそのときとは逆のコースで同様に行われた。この最終日前日の個人タイムトライアルが終わると、総合優勝は事実上確定し、ゴール後のプレスセンターで1位選手が優勝者会見に臨む。
最終日のパリまではTGVで一直線。総合成績を確実にした選手たちが口にするブルゴーニュワインはどんな味がするのだろう?
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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