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【ブエルタ・ア・エスパーニャ2020 レースレポート:第17ステージ】奇妙なシーズンの、美しきフィナーレ。ログリッチが2年連続のマイヨ・ロホに「僕こそが最強で、僕らのチームこそが最強だった」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか身体の大きな「平地の風よけ要員」の背後で、少し息をついたログリッチに、もう1人、思いがけない助けがやって来る。区間勝利が無理だと悟ったソレルが、残り1.5kmほどでマスのために「前待ち」していたのだ。残り1kmでカーシーはひとり前へと飛び出していってしまうが、ログラはこの「ウェルカム」な状況を利用した。ソレルとマスの影でしばらく走り、それからフィニッシュに向けて、改めて最後の力を振り絞った。
「自分のペースで走り続ければ、十分なはずだと分かっていた。一瞬たりとも自分のブエルタ総合優勝を疑わなかった。もちろんフィニッシュラインを越えるまで、決して戦いは終わらないのだけれど」(ログリッチ)
カラパスが、もはやボーナスタイムの発生しない区間8位で山頂にたどり着いた15秒後、カーシーが区間を終えた。さらにその6秒後に、マイヨ・ロホはフィニッシュラインを越える。力強いガッツポーズと共に。
通常よりも3日短いブエルタの最終日前夜、ログリッチは改めてマイヨ・ロホに袖を通した。総合2位カラパスを24秒差で、3位カーシーを47秒差で振り払った。たしかに過去17日間で収集した48秒のボーナスタイムがなければ、8秒差でカラパスが首位に立っているはずだった(カラパスのボーナスタイム16秒、カーシー10秒)。しかしこの大量のボーナスタイムとはまた、ログリッチが区間4勝を力強くもぎ取った結果であり、集団スプリントにさえ果敢に挑んだ証拠でもあるのだ。
「一旦勝ってしまえば、どんな勝ち方をしたかなんていういのはどうでもいいことなんだ。僕はただ最高に嬉しいだけ。僕こそが最強で、僕らのチームこそが最強だった。自分が成し遂げたことを誇りに思う」(ログリッチ)
エキサイティングな大会の終わりだった。ブエルタでは初めての表彰台に立つカラパスは「本当に楽しい戦いだった」と振り返り、生まれて初めてグランツール表彰台を射止めたカーシーは「後悔はない。自分が誇らしい」と言葉少なく語った。
最後の逃げでデラクルスとゴデュは希望通り総合順位を3つずつ上げ、総合7位と8位で大会を終える。マルタンは念願の区間勝利こそ逃したものの、コフィディスにとっては6度目となる山岳賞をもぎ取った。全部で47登場した山岳のうち13峠で先頭通過を果たし、さらに8峠でポイントを収集し、2位以下に65pt差をつけての圧勝だった。マスは新人ジャージを持ち帰り、そして地元スペインチームの責任として連日攻撃的に走ったモビスターは、最強チームとして最終表彰台に立つ。
最後まで戦い続けた143人の勇者と共に、晩秋のマドリードへと、ブエルタは帰り着く。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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