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【ブエルタ・ア・エスパーニャ2020 レースレポート:第12ステージ】クレイジーなほどの勾配を、凄まじいパワーでねじ伏せたヒュー・カーシー「観客が望むものがすべて揃った」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか表彰台のヒュー・カーシー
いつ果てるとも知れぬ、一寸刻みのバトル。2020年ブエルタの主役たちが、自転車界有数の激勾配で、限界ぎりぎりの死闘を繰り広げた。アングリルのてっぺんでは、ヒュー・カーシーが力づくで栄光をさらった。攻めたリチャル・カラパスはマイヨ・ロホを取り戻し、受けたプリモシュ・ログリッチは損失をわずか10秒に留めた。2度目の休息日明けの33.7km個人タイムトライアルを控え、総合上位4人が35秒以内で並んだ。
「エキサイティングだね。観客が望むものがすべて揃ったんじゃないかな。タイムトライアルに向けて、大接戦だよ」(カーシー)
とうとう11月に入った。自転車界にシーズンオフの始まりを告げる風物詩、来夏のツール・ド・フランスのコースが発表されたこの日、晩秋のグランツールは最高潮を迎えた。全長109.4kmの短距離クイーンステージ。道の果てに待ち構えるのは怪物だ。「誰もあそこで素の自分を隠すことなどできないのさ」と、3度目のアングリル登坂に挑む前に、こうクリス・フルームは証言していた。過去2回上った時は、最終的に、自らが大会覇者に輝いている。
恐ろしい山へ向かって、しかし多くの選手が勇敢に前へ飛び出した。たとえば総合エース擁するモビスターとイネオス・グレナディアーズ、EFエデュケーションファーストは前方にアシストを送り込み、青玉を着るギヨーム・マルタンは今大会5度目の逃げへと邁進した。
スタートから18km、ついに最前線で21人がひとつにまとまる。全22チーム中16チームが参加し、コフィディス2人、ロット・スーダル2人、ミッチェルトン・スコット2人、UAEチームエミレーツ2人……が滑り込んだ先頭集団は、いよいよ順調に先を急ぎ始めた。
ただUAEだけは、計画遂行に向けて、ちょっとした修正が必要だったようだ。前方のスプリンター(ジャスパー・フィリプセン)とメイン集団内のクライマー(ダヴィデ・フォルモロ)を、大胆にも入れ替えることにした。遠ざかっていく逃げを追いかけ始めたフォルモロに、ロットのトーマス・マルチンスキーが相乗りした。2人は30kmにも渡る粘り強い追走を続けた。2つの山を上って下りた先で、見事に合流を成功させた。
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