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【宮本あさかのツール2020 レースレポート】サム・ベネットが史上最強の緑男からまたしてもジャージを奪う「このチームが誇らしいし、本当に満足している」 / 第10ステージ
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか先頭で突き進むトレインを、しかし発射台職人モルコフが350mでするりと抜き去る。もちろん背中には、ベネットが潜んでいた。
「このチームが誇らしいし、本当に満足している。信じられないような仕事を成し遂げてくれた。ただ僕のためだけに、切れ目なく働き続けてくれた。チームのみんなに感謝したい。彼らが僕にこの機会を与えてくれた。どれほど感謝してもしたりないほどさ」(ベネット)
あとはスピードに乗って一直線。ラスト150mを先頭で駆け抜けた。自らの後輪からスプリントを切ったカレブ・ユワンにも、その後ろにいたサガンにも、一度も先行を許さなかった。今大会ここまで4位→2位→3位と涙を飲んできた後の、嬉し泣き。2018年ジロで区間3勝を、2019年ブエルタで2勝を上げ、「サガンと同チームだとツールには絶対に呼んでもらえないから」と、今年思い切って移籍した新チームで、念願のツール1勝目を計上した。
レース前のログリッチとサガン
もちろんマイヨ・ヴェールも3日ぶりに取り戻した。区間勝利で大量50ptを稼ぎ出したおかげで、7pt差の2位から、21ptリードの1位へと浮上。1度だけでなく、2度までも、サガンからジャージをむしり取った。もちろん史上最強の緑男も黙ってはいない。「ベネットがグリーンジャージを手にしたけど、まだツールは半分終わっただけ。まだまだジャージを取り戻すチャンスはあるよ」と、リベンジを誓う。
最終的にプロトンは時速46.943kmでドタバタと忙しい休息日明けを終えた。一度は遅れたマルタンやポガチャル、ロペスやカラパスも、無事にメイン集団でフィニッシュし、その他3つのジャージにも変更はなかった。おそらく初めてのマイヨ・ジョーヌをゆっくり心から堪能する暇はなかったけれど、それでもログリッチは、これまでとの違いをはっきりと感じた。
「マイヨ・ジョーヌはなんといっても自転車界で最高のリーダージャージ。僕はその頂点にいる。このジャージを着ていることを心から誇りに思う。ツールはツールだ……なにものにも代え難い存在だ。1度でもこのジャージを着たことがある人なら、誰でも理解してくれると思う。これは中毒になるね」(ログリッチ)
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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