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【宮本あさかのツール2020 レースレポート】幸と不幸の両方がフランスを包む。ティボー・ピノ「今日はもしかしたらキャリアの分岐点かもしれない」 / 第8ステージ
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかマイヨ・ジョーヌにとっても、マイヨ・ア・ポワにとっても(コヌフロワは最初の1級山岳首位通過で10pt追加)、都合の良い逃げだった。ただし数日前から熾烈にマイヨ・ヴェールを引っ張り合う2人……ペーター・サガンとサム・ベネットは、もしかしたら少々不満を抱いたかもしれない。なにしろ中間スプリントポイントは、都合よく山の前に設定されていた。しかし前方に13人もいたせいで、分け前は大幅に減ってしまった。それでもベネットは14位通過でかろうじて2ptを手に入れ、緑首位サガンとの差を7pt差に詰めている。
ちなみにベネットの発射台モルコフは、「単なる事故で」前集団へと入ってしまったそうだ。その後しばらくは「逃げを潰すために」せっせと働き(つまり一切の先頭交代を放棄)、そのくせマジソン現役世界チャンピオンは中間ポイントでスプリント2位を奪った。「逃げの他の選手たちより、きっと自分のほうがポイントを有効に活かせるから」という理由で。
3日目にひとり逃げを強いられたクザンが、逃げ集団の中で真っ先に動いた。残り60km、単独でアタックを打つと、ポール・ド・バレスをいの一番で上り始める。しかし今大会初の超級峠の、山道は長く、勾配もきつい。真のクライマーでなければ絶対に攻略はできないのだ。いつしか先頭は、2017年ブエルタ総合3位ザカリンと、昨ジロの山頂フィニッシュで独走勝利をさらったピーターズの2人に絞り込まれた。
ポール・ド・バレスの標高1755mの山頂を、2人は共に越えたが、15kmの長い下りが運命を分ける。ザカリンは「グランプール(フランス語で上る人)」ではあるが、決して「モンタニヤール(上りも下りも強い山男)」ではない。しかも2016年ジロでは長いダウンヒル中に道の外に投げ出され、鎖骨と肩甲骨を骨折した嫌な想い出もある。
「マント峠からの下りでザカリンが(よろよろと)『ヤギのように』下る姿を見ていたから、ポール・ド・バレスは全力でダウンヒルへと打って出た。振り向いちゃだめだ、と自分に言い聞かせて」(ピーターズ)
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