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プロトンでバンドを組んだなら、リードボーカル&ギターは、ネイサン・ハースで決まり
今日は俺たちのライブに来てくれてありがとう!さっそくメンバーを紹介します。まずはリズムの要!ドラム、ジュリアン・アラフィリッーーーープ!
……たくさんの自転車選手にとって、音楽とはきっと、職業上欠かせないものである。スタート前に集中力を高めるため、選手たちはイヤホンをつけ、音の中に閉じこもる。勝利の後や、シャンゼリゼの夜には、チームバス内部に大音響が鳴り響く。音楽とは長く果てしない移動時間の友でもあり、新型コロナウイルス禍によるロックダウン中は、おそらく毎日ローラー台をまわすためのモチベーションにもなった。
お気に入りのプレイリストをファンにおすそ分けするほど、とびっきりの音楽好き選手もいる。だけど、もちろん、自らで音楽を奏でる選手だっている。うん、プロトン内で、小さなバンドなら作れるくらいに。
ミュージシャンで、いわゆるダンスホールのバンドマスターだった父上の影響で、アラフィリップは小さなころから自然に楽器を手にしてきた。毎年6月21日の、フランスにとっては「音楽祭」の日に、弟と2人でミニバンドを編成して街角で演奏したこともある。息子に音楽の道に進んで欲しい……と密かに考えていたらしい両親は、自宅に防音室を作ったほど。おかげでアラフィリップのドラムの腕前はめきめきと上達したそうだ。コンセルヴァトワール、いわゆる音楽学校にも通った。幸か不幸か「ソルフェージュも授業も大嫌い」だったジュジュは、16歳であっさり学業放棄。自転車の道へと本格的に突き進んだ。
ただし音楽はいつだってアラフィリップの側にいる。本人によれば「音楽は僕の日常の縮図」。「集中し続け、大切ではないものを頭の中から追い出すため」に、耳に音を流し込む。
続いてベースは、「グランジ・プロフェッショナル・サイクリスト」こと、ダニエル・オス!
ベースの形も音も好き。なによりベースの「バンド内における意味が好き」。さすがオスらしい意見だ。こと自転車レースにおいてはチームワークを尊重し、スポットライトの中のリーダーをますます輝かせるためのアシスト任務にせっせと励む仕事人である。
時間さえあれば何時間でも弾いていたい……なんて真にベースに心酔するオスだが、超絶テクには走らない。むしろストレスをふっとばすためにシンプルで野太い音を鳴らす。ジャンルで言えばアメリカンパンクで、一番のお気に入りはニルヴァーナ。さらにはクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ、ブリンク182、オフスプリング、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ等々……つまりはカリフォルニア系?著者的にもおお〜っとさせられたネタとしては、「ラモーンズ(Ramones)はサンレモ(Sanremo)のアナグラム!!」なんてSNSを投稿したこともある。
キーボードは……少々チョイスが悩ましいところ。音楽一家で生まれ育ち、ラフマニノフを弾きこなすほどのクラシックピアニストのチャド・ヘイガか、それともやはり小さい頃からクラシックピアノを習い、今でも遠征先のホテルにピアノがあれば弾いて楽しむというドメニコ・ポッツォヴィーヴォか。
しかし、今回は、ヘイガを選ぼう。礼節正しき青少年の雰囲気を醸し出し、日曜日には教会でオルガンさえ弾く一方で、なんとメタルも好きなのだというから!一瞬ビックリはさせられたものの、たしかに、デスメタルやゴシックメタルに傾倒してもおかしくはない。
そしてバンドの花形、リードボーカル&ギターは、ネイサン・ハースで決まりだ。今回の新型コロナ禍の真っ最中に、オンライン上にギターの弾き語りを投稿しているから、その才能をご存知のファンも多いだろう。高音の良く伸びる奇麗な声だし、おしゃべりも上手だからライブ中のMCも問題なさそうだし、なんならパンチャーの才能を大いに発揮してステージからダイブだってできそう……。
ただし重大な問題がひとつ。この3月にハースが投稿したビデオはバックストリートボーイズの「I Want it that way」だった。強いこだわりを持つオスや、独特な美的感覚を追求するヘイガと、果たして肝心の音楽性が一致するだろうか!?
宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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