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サイクル ロードレース コラム 2020年8月20日

【ツール・ド・フランス2020:選手相関】共通するものは高い《プライド》か。エースとしての走りに期待!ミケル・ランダ × ワレン・バルギル

ツール・ド・フランス by 山口 和幸
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ミケル・ランダ × ワレン・バルギル

ミケル・ランダ × ワレン・バルギル

フランスのブルターニュ地方出身で、その地を拠点とするアルケア・サムシックの主力選手であるワレン・バルギル。スペインのバスク地方出身、ツール・ド・フランスでは常にアシスト役だったが、今季バーレーン・マクラーレンに移籍したミケル・ランダ。

これまでのツール・ド・フランスの戦いにおいて、つばぜり合いを展開するほどのライバル関係というわけではないが、2020ツール・ド・フランスではパリの表彰台や山岳賞争いで確実に相まみえる存在であることは確実だ。

バルギルは28歳、ランダは30歳。どちらも自転車が盛んな地方で生まれ育ち、地元チームで実力をつけてプロ入りした。まずは両者のツール・ド・フランスでの総合成績を比べてみよう。

バルギルのこれまでのツール・ド・フランス成績
2015年 総合14位(ジャイアント・アルペシン)
2016年 総合23位(ジャイアント・アルペシン)
2017年 総合10位、ステージ2勝、山岳賞(サンウェブ)
2018年 総合17位(フォルテュネオ・サムシック)
2019年 総合10位(アルケア・サムシック)

ランダのこれまでのツール・ド・フランス成績
2016年 総合35位(スカイ)
2017年 総合4位(スカイ)
2018年 総合7位(モビスター)
2019年 総合6位(モビスター)

ランダはバスク地方にあるムルギア出身。スペイン男性にありがちな、カモメの眉毛がトレードマーク。2012年にバスク地方を拠点とするエウスカルテルで頭角を現したが、チームの消滅によって2014年にアスタナに移籍。2015年には地元のツール・ド・ペイバスクで総合優勝した。

見た目は温厚で、アシスト役をきっちりこなす選手に見えるが、地元スペイン紙によればそれほどでもないとする記事も多い。アシスト役になったことで総合成績が挙げられなかったこと、チームの作戦に対してもスペイン語が流ちょうな記者に対しては不平不満もぶちまけている。

ミケル・ランダ

ミケル・ランダ

2015ジロ・デ・イタリアではファビオ・アル(イタリア)のアシスト役に起用され、アルを総合2位に送り込むとともにランダ自身も総合3位に。休息日をはさんで行われた山岳区間の第15、16ステージでは2連勝する走りを見せた。これはランダにとっては大きな自信になり、エースとして走った時の可能性を夢想したに違いない。

さらにその年はブエルタ・ア・エスパーニャでアルの総合優勝に大きく貢献するとともに、最難関のステージでアルのアシストをしっかりと務めた後に単独でゴールを目指してステージ優勝した。

ただしその活躍が評価されたのはアシスト役としてのランダだった。2016年、クリス・フルームをエースとするスカイに移籍。ツール・ド・ペイバスクでステージ優勝するなどレースによってはエースとして走った。2017年はジロ・デ・イタリアでステージ優勝している。

2017年のツール・ド・フランスではフルームの4勝目に大きく貢献。ただし、好調ステージで「待て」のチーム指示もあって、1秒差で総合3位の表彰台を逃したことが悔やまれた。

2018年からの2年間はモビスターで走るが、ツール・ド・フランスでは相変わらずアレハンドロ・バルベルデやナイロ・キンタナのアシスト。2019年のジロでは、ナンバーカード1番、モビスターのエースとして起用されるが、終わってみればチームメートのリチャル・カラパスが総合優勝していた。

常にアシスト役だったランダだが、今季はバーレーン・マクラーレンの唯一の総合エースとしてツール・ド・フランスに登場する。もはやだれにも遠慮はいらない。だからツール・ド・フランスではランダに注目なのだ。

一方のバルギルは端整な顔立ちのフランス選手。社交的で、インタビュー時に見せる配慮は大人の社交性が垣間見える。さいたまクリテリウムに来日した時は、ゴール後の公式記者会見に登場し、進行を務めた筆者の一問一答に真摯に応える姿に好感が持てた。

ワレン・バルギル

ワレン・バルギル

一方で、自転車の操作に難があり、ツール・ド・フランスの下りのコーナーで外側に大きくふくらみ、ゲラント・トーマスをコースアウトさせたこともある。

バルギルが大活躍したのは2017年のツール・ド・フランスだ。第9ステージではリゴベルト・ウランにステージ優勝を奪われたが、2つの山岳ポイントでトップ通過を果たし、ここで山岳賞1位に。パリまでその赤豆ジャージを守り抜くことになった。

さらにフランス革命記念日に行われた第13ステージでモビスターのキンタナ、トレック・セガフレードのアルベルト・コンタドール(スペイン)、フルームのアシスト役であるランダとのスプリント勝負を制して初優勝を飾った。

この日、バルギルと第1集団を形成したのは、すでに総合優勝争いから遠ざかっているコンタドールとキンタナ、そしてランダだった。前日にフルームからアスタナのアルにマイヨ・ジョーヌが移ったことで、これまでとは異なる動きが発生した。

ランダはまだ総合成績の上位にいて、アルとしては追いかけなければいけない存在。スカイチームとしてはこうして疲労を蓄積させて、終盤戦になってフルームが逆転をねらっていくという戦略だ。案の定、アスタナの手薄なアシスト陣は最後までアルを援護できず。アルはからくも首位を守ったに過ぎない。

コンタドールとキンタナは区間勝利に目標を修正してゴール勝負に挑んだが、山岳賞を着るバルギルの執念にかなわなかった。バルギルはランダのアタックも許すことなく、フランス選手が特別の日を飾り、沿道の地元ファンは大喜びだった。

バルギルは名峰イゾアール峠への頂上フィニッシュとなった第18ステージでステージ優勝した。同時に山岳賞獲得を確定させ、総合10位でフィニッシュ。総合敢闘賞も獲得した。

ところがその年のブエルタ・ア・エスパーニャ。好調を維持していたバルギルは、エースとしての走りを望んだが、チームの指示はウィルコ・ケルデルマンのアシスト役。ケルデルマンがパンクした時にアシストとしての役割を果たさなかったことで、バルギルは大会途中でレースから離れるように命じられた。

バルギルが地元チームに移籍すると発表するのはその後である。プライドがなせる移籍だったが、その後はなかなか成績が残せず、2019年にフランス選手権で優勝するものの、ツール・ド・フランスでは2年前のような活躍はできなかった。

両者に共通するものはプライドだ。そして周囲の期待に応えられないというジレンマだ。

2020年、ツール・ド・フランスで初めて自らのために走れることになったランダ。そして、実績のあるキンタナがチームメートになったことで、単身にふりかかっていた重圧からすっかり解放されたバルギル。この2人がどんな成績を勝ち取ることができるか。それは2020ツール・ド・フランスの楽しみの1つである。

文:山口和幸

あつまれツールの森 第7話 「アシスト」

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山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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