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サイクル ロードレース コラム 2020年8月18日

【ツール・ド・フランス2020:選手相関】男をも魅了する千両役者。ペーター・サガン × ジュリアン・アラフィリップ

ツール・ド・フランス by 山口 和幸
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ペーター・サガン × ジュアリアン・アラフィリップ

ペーター・サガン × ジュアリアン・アラフィリップ

2020ツール・ド・フランスでも人気を二分するであろう存在が、ボーラ・ハンスグローエのペーター・サガン(スロバキア)とドゥークニンク・クイックステップのジュリアン・アラフィリップ(フランス)だ。

どちらも個性的な立ち居振る舞いがトレードマーク。サガンはヤンチャなキッズで、アラフィリップはロックスターという感がある。そしてその裏には、プロフェッショナルとしてのあくなきファンサービス精神が垣間見える。

サガンがあまり得意とはしない超級カテゴリーの峠で脱落したとき、沿道で「サガン自伝本」を持ちながら応援していたファンを見つけ、走りながらペンを取ってその表紙にサインをするという動画を見たことがある。

こんなツラいときでもファンサービス。余裕のある態度にサガンの底知れない実力が明らかになった瞬間だ。

アラフィリップもマイヨジョーヌを着用して総合優勝争いが熾烈を極めていた2019年終盤にもかかわらず、早くホテルに入って疲労回復したらいいのにとこちらが心配するほど、ゴール後インタビューを済ませてからも熱心なファンに対応していた。

いやあ、どちらもじつにカッコいい! 男としてホレてしまいそうなくらいだから、女性にとってもきっと魅力的な存在に違いない。

他のスポーツではあまり見られない光景でもあった。でもツール・ド・フランスではたまにあるシーンだ。スーパースターでありながらも、そんなことをさりげなくやってくれる身近なヒーローがやっぱりみんな大好きなのだ。

ともに兄弟レーサーであるという共通点も。サガンには2つ年上にジュライ、アラフィリップは3つ年下にブライアンがいる。そうは言ってもサガンとアラフィリップ。そこにいたる道は対極的だった。

両者の歩みとライバルとしての激闘を振り替える前に、これまでのツール・ド・フランスでの実績をチェックしてみよう。

●ツール・ド・フランスでのステージ優勝回数<br>
サガン12×アラフィリップ4<br><br>

●マイヨジョーヌ着用日数<br>
サガン4×アラフィリップ14<br><br>

●ポイント賞ジャージ着用日数<br>
サガン107×アラフィリップ0<br><br>

●山岳賞ジャージ着用日数<br>
サガン0×アラフィリップ12<br><br>

●新人賞ジャージ着用日数<br>
サガン14×アラフィリップ0<br><br>

●総合成績における最高順位<br>
サガン43位(2012年)×アラフィリップ5位(2019年)

ペーター・サガン

ペーター・サガン

アラフィリップは2013年に現チームの前身であるエティックスでプロデビュー。駆け出し時代はツアー・オブ・カリフォルニアで複数のステージ優勝を挙げているが、メジャー優勝経験はなし。

サガンはリクイガス・キャノンデール時代の2012年にツール・ド・フランス初出場し、第1ステージでいきなり優勝。第6ステージまでに3勝を挙げ、全日程が終わってみれば最初のポイント賞を受賞している。

アラフィリップはエティックス・クイックステップのメンバーとして2016年にツール・ド・フランスに初起用された。

当時のエティックス・クイックステップにはエーススプリンターとしてマルセル・キッテルがいて、アラフィリップはキッテルがゴール勝負に加われなかったときのサブスプリンターとしての動きが期待された。

しかしその前に立ちはだかったのが、同じようなタイプでありながら、すでに実績を積み重ねてきたサガンだ。前年に1回目の世界タイトルを獲得し、その称号である5色の虹色ジャージ、アルカンシエルを着用して乗り込んでいたのである。

2016年の第2ステージで激突

第2ステージはノルマンディー地方のコタンタン半島の南端にあるシェルブールがゴールの町だった。残り5kmでシェルブール港を素通りすると、ここから高低差150mを駆け上がってゴールに向かう。ゴール手前に想像以上の激坂が待ち構えていたのである。

前日に区間優勝してそのままマイヨ・ジョーヌを獲得したマーク・カヴェンディッシュも、前日2位のキッテルも最後の戦いの前に脱落していた。

サガンが少人数のゴール勝負を制して1着になるのは想像にたやすかった。スプリント力がありながら、過酷な上りも距離がそれほど長くなければ一気にスパートできる。それがサガンの持ち味なのだ。

しかしつばぜり合いで先行したのは、まだ有名ではなかったアラフィリップ。世界の第一人者であるサガンは、最後の最後で逆転し、間一髪で勝利をつかんだに過ぎない。

「先行している選手がまだ2人いると思ったので区間優勝と聞いてちょっと驚いたけど、1位になれてとてもうれしい」とサガン。

ジュリアン・アラフィリップ

ジュリアン・アラフィリップ

一方、当時のアラフィリップのコメントは、さまざまな情報サイトを探してもなかなか見つからない。まだ期待されていなかったのである。

アラフィリップは第1ステージが終わって10秒遅れの14位。この日ステージ優勝のボーナスタイムを獲得すればマイヨジョーヌ獲得のチャンスもあった。勝利への執着心があり、その後もゴール勝負に加わったが、いつもわずかに届かず、ゴール後にハンドルをこぶしでたたいて悔しがった。

しかしアラフィリップは、一時新人賞ジャージを着用するとともに、第2ステージから第7ステージまでは総合2位につけ、一気にその名前を売り出すことになった。

新型コロナウイルス感染拡大により、短いシーズンにメジャーレースが詰め込まれた過密日程。8月から欧州ロードレースが本格化し、サガンもアラフィリップも再開直後から全力で飛ばす。

8月8日のミラノ〜サンレモではアラフィリップが2位、サガンが4位。ツール・ド・フランスにもベストコンディションで乗り込んでくるはずだ。

文:山口和幸

代替画像

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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