芸歴80年超！　内海桂子師匠が語るツール・ド・フランス＆スポーツの魅力

先日96歳を迎えたばかりの内海桂子師匠。漫才協名誉会長を務めながら、今も現役芸人として舞台に立ち続けている。内海桂子師匠の知られざる顔の1つが大のスポーツファンということ。ツイッターを通して、野球、ラグビー、さらにはサイクルロードレースまで、様々な競技の魅力を語っている。今回は、内海桂子師匠にツール・ド・フランスの魅力に加え、スポーツのどこに惹かれるのかをうかがった。

J SPORTS：「内海桂子師匠がツイッターでツール・ド・フランスのことを呟いている！」ということが以前からファンの間で話題になっておりまして、今回お話をおうかがいすることにしました。

あらそう。ありがとう。でも、いつも見ているわけじゃないのよ。テレビが点いているときはだいたいスポーツを見ていますよ。

J SPORTS：初めてサイクルロードレースを見たのはいつですか？

スポーツとかレースとか、小さい頃からずっと好きだったのよ。いつだったかは覚えてないけど、自然に見るようになりました。ツール・ド・フランスは、時間があるときは、5時間ぐらいやっていても平気で見ちゃいますよ。最初はルールもわからなくて、おんなじ色のユニフォームの選手がなんで抜かしたり抜かされたりするんだって。風よけのために選手が入れ替わるたびに、勝った負けたって騒いでましたよ。でも、解説の方がいろいろルールだったり、自転車レースのことを教えてくれるから、そこがいいですよ。90歳を超えた私でも楽しめるんだから。

J SPORTS：ツール・ド・フランスはどんなところが魅力ですか？

いろいろな風景が映って、それを見るのも楽しいけど、山の中とか行くだけでも大変でしょ。それを自転車で走るんだから、選手は命がけ。一生懸命な選手をこっちもただ見ているだけじゃなくて、本当に真剣に応援していますよ。

J SPORTS：サイクルロードレース以外にもたくさんのスポーツを見てらっしゃいますが、師匠の芸人人生とスポーツと共通するところはありますか？

私らも勝手なことやって人を笑わせているけど、真剣勝負なのはスポーツも舞台もおんなじだけど、そこに命がかかってる仕事は本当に大変でしょ。

J SPORTS：逆にスポーツ中継の実況アナウンサーに対しては厳しい面もありますね？

解説者が「そうですね」というのが気に入らないのよ。昔の夫婦漫才の奥さんは相槌を打ってるだけでよかったけど、全然ノーを言わない奥さんなんて実際にはいないでしょ。それと同じ。スポーツ中継も「そうですね」だけじゃつまらないんですよ（笑）。

J SPORTS：スポーツ選手の服装に関しても意見があると伺っています。

服装や髪型で個性を出す時間があったら、芸の方に力を入れなさいと言いたいですよ。でも、おしゃれに対して自分の形を作ることはとても大切なんです。だから若い頃のナイツにもお金があったらネクタイでも買ってシャンとしなさいと言ってあって、いまだにそのスタイルでしょ。ナイツはまだおしゃれと言えるほどじゃないわね（笑）。おしゃれの形ができれば私はもう何も言いませんよ。

J SPORTS：師匠は漫才協会の名誉会長を務めていらっしゃいますが、選手たちを見守る視線は、漫才の弟子たちを育てる視線と近いように感じます。

若い芸人はちゃんとお客さんにうける話ができるかだけなんですよ。そこに若い感性でちゃんと世の中をとらえて話ができるかどうか。ただ話ができるだけでもダメだし、他の人の真似でもダメ。スポーツでも芸でも、超一流はみんなちゃんと形があって、真似したくなるようなものを自分で考えて作っていかなきゃいけないんです。そういうところ見ているんですね。

J SPORTS：今年はツール・ド・フランスでマイヨ・ジョーヌという黄色いジャージを着るようになってから100年目の記念イヤーです。内海桂子師匠も長年芸を極めていらっしゃいますが、長く続けることの大変さはどんなところですか？　

私は80年以上仕事やっているけど、最初は小学校3年で7つの坊っちゃんの子守の奉公から働きはじめたの。その後、舞台に出るようになって、芸はお金になるからやっていたようなもの（笑）。でもそのお金で親は助かるし、周りも喜んでくれる。だから芸もどんどんうまくなっていったし、積み重ねていくことで自分がどういう風にしたら笑ってもらえるのか、そういうことを1つ1つ学んでいっただけなのよ。

J SPORTS：最後に人生の師匠として、若い人たちにメッセージをお願いします。

スポーツも真似をされるって大切でしょ。最初は真似でもいいんだけど、芸も同じで、自分だけの芸を作っていくことが大事なのよ。自分の芸に個性があれば、また若い人たちが真似して、自然と未来へと芸が受け継がれていくものなんです。ただ、昔は何十年も経験を積んで真似したくなる先輩がいたけど、今はそういう真似したくなる先輩もいないんですよ（笑）。

J SPORTS：さすがに内海桂子師匠を超える方は今後なかなか出てきそうもないので、先輩として舞台に立ち続ける必要がありますね。

（笑）まだまだ頑張りますよ。