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映像を見ていたすべての人たちが、おそらく一瞬心臓が止まりそうになるほどの衝撃を受けたに違いない。多くの関係者の脳裏には、嫌な思い出もよぎったはずだ。なにしろ23年前にファビオ・カザルテッリが落車事故で命を落とした場所――山頂から4km地点には追悼の碑が建っている――から、ほんの数百メートルしか離れていなかった。
「あれは完全なる自己責任による軌道ミスだね。落っこちた瞬間、体がバラバラに壊れてしまうかもしれない、って考えた。でも実際は、幸いにも、どこも壊れてなかった。むしろ僕を救出してくれた人たちの方が、大変な思いをしたんじゃないかな」(ジルベール、TVインタビューより)
実際には左膝蓋骨の骨折が後に判明するが……落車直後のジルベールは、すぐに立ち上がった。ニュートラルサービスのマヴィックスタッフから救出されると、大急ぎで自転車に飛び乗った。さすがに逃げ集団への再合流は試みなかったものの、チームメートの勝利から31分11秒後に無事に完走を果たした。フィニッシュ直後に大急ぎで左脚と左腕の治療を受けると、敢闘賞の表彰式へと挑んだ。
「少なくともこうしてフィニッシュまで帰ってこられてよかった!」(ジルベール、TVインタビューより)
残念ながら、救急車に乗って、ジルベールは今年のツールから永遠に去っていった。
実はバルギルも、同じ下りで落車した。それでも次の1級マンテ峠の上りでは、真っ先に加速を試みた。ただもはや他者を振り払う脚は残っていなかったし、それどころか先頭集団についていくことすら難しかった。ポルテ・ダスペ峠でジルベールに次ぎ2位通過を手にしたアラフィリップが(バルギルは3位)、元気よくマンテ峠で先頭をさらい取った一方で、バルギルはこれ以上のポイント収集はあきらめざるを得なかった。
上りで逃げ集団は小さくなり、下りで再び大きくなる。そんな繰り返しの中で、マンテ峠から下り切った先の谷間では、逃げ集団は17人に絞り込まれた。最終ポルティヨン峠の上りが開始すると、再びエスケープは小さく切り刻まれていく。
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