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「上り5km、下り10km」と言われるポルティヨン峠の上りでは、ロベルト・ヘーシンクやドメニコ・ポッツォヴィーヴォという名うてのクライマーが威力を発揮した。祖国スペイン通過に際して、ゴルカ・イザギーレやマルク・ソレールというスペイン人たちも発奮した。山頂まで残り3km地点では、ついに6人に小さくなった先頭集団から、アダム・イェーツが単独アタックを試みた。
ただし上りも残り1kmに迫ったところで、ついに赤玉が勢いよく飛び出した。前の2峠でも、長い山道ではライバルたちにさんざん争わせておいて、山頂間際でまくる作戦を採用してきた。しかし今回はイェーツの17秒後に最終山頂を通過し、ピレネー最終峠はポイント2倍ルールに則って2位通過16ptを懐に収めた挙句に、下りへと猛スピードで飛び込んだ。
「今日の最終盤は走ったことがあったんだ。仲良しのユンゲルスと合宿を組んで、この地を下見しに来た。これが大いに役立った。テクニカルで危険な下りだと把握していたし、僕にだって落車する危険性があることは十分に承知していた」(アラフィリップ、公式記者会見より)
一方でこの日のコースを事前に下見していなかったミッチェルトン・スコットの総合エースは、雨上がりのアスファルトとヘアピンカーブ、さらにほんの十数秒背後からたっぷりプレッシャーをかけてくるアラフィリップの存在とに大いに苦しめられた。そしてフィニッシュまで6.7km、アダムは道の真ん中で地面に転倒した。すでにハプニングだらけのこの日を象徴するような、勝負の流れを変える落車だった。
「イェーツは僕の15秒前を下っていた。でも風が強くて、無線が上手く聞き取れず、彼が落車したことは知らなかった。僕が追いついた時、ちょうど彼は自転車に再び乗って発進するところだった。敵である僕さえやりきれない気分になったし、フェアプレーの精神で彼を待とうかとも思った。でもすでに100mも通り過ぎた後だったし、彼も追いついては来なかった」(アラフィリップ、公式記者会見より)
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