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プロコンチネンタルチームNIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニでメカニックをしている西勉(にし・つとむ)がお送りする特別コラム。4回目は機材の話。まずはタイヤのサイズに関してプロメカニックの常識について説明したいと思います。
よくタイヤメーカーの名称で、20とか25とかサイズを連想させられる数字がモデル名に入っていますが、自分たちは空気を入れた状態の実寸を重要視します。使用してるうちにサイズが変わってくることも把握した上で、選手にサイズの正確な情報を提供します。
クリンチャー、チューブラータイヤ共通で近年選手から好まれるのは実測25mm~26mmのタイヤ。このサイズ帯なら少々のダート区間にも対応できるので、機材で迷うということも防げます。近年スタンダード化している空気抵抗を考えたリム幅のワイド化など、最近設計されたホイールとのマッチングもよく、転がり抵抗と重量バランスも良い。
レースで使用し幅の実測値が拡がったタイヤは、どんどん交換していきます。またレース路面が砂利、泥、石畳メインになると27~28mmが常識になり、一方で一時期のように18mmなど20mmクラスの「細いタイヤ」は全く姿を消してしまいました。これは概念の変化や流行が大きく関わっています。
もう一つは、プロレース機材として「サドル」についての新常識。
昔のサドルは、簡単には壊れない構造の大きな重いサドルが主流でした。選手とメカニックとの間で、「慣らし」や「馴染む」という感覚が存在し、よほどのことがないかぎりサドルを交換することは稀でした。
しかしカーボン軽量化時代に突入し、メカニックもサドルに対しての常識が大きく変わりました。誤解を恐れずに表現するなら、プロレースの世界ではサドルは正に「使い捨て」時代。クラッシュすると曲がってしまうので、即座に交換は当たり前(昔のスチームフレームのサドルは修正可能だった)、慣れて沈んでしまっても即座に交換します。
近年プロレースの世界では、メカニックはシーズンを通して必要なサドルを選手1名あたり平均7個と計算しています。そういった常識にスポンサーも対応しています。
現在は1選手につき2台~3台のレースバイク(+トレーニングバイク)をチームは所有しており、当然のことながらすべてのバイクをミリ単位で同じ寸法に調整しなければなりません。そんな状況で、ヘタり、馴染んだサドルだけしか使えないと、遠征先で準備できなかったり、クラッシュしてバイク交換した時にハンデを背負うことになります。基本的に何が起こるか分からないのがレース。即座に対応できる共通機材でないと役に立たないのです。
やはり最近流行の軽量サドル(カーボン素材)を使用し、レースのワールドワイド化に対応すると、レース現場のプロメカニックにとってサドルは「使い捨て」という表現が正しくなってきます。
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西 勉
兵庫県出身のプロメカニック。高校卒業後、 欧州でプロのロードレース選手になることをめざして、 単身フランスへと渡り、アマチュアレースを転戦。その後、 自転車競技のレースメカニックに転向し、 現在まで10シーズン以上にわたってヨーロッパを拠点とするトップチームで働く。 日本ナショナルチームのメカニックとして、オリンピックや世界選手権でも活躍。
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