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茨城ロボッツで4年目の昨季、キャプテンとして素晴らしいリーダーシップとコート上のパフォーマンスを見せ、チームのB1昇格に大きく貢献した平尾充庸。ポイントガードとしてゲームメイクをすることに加え、自身で貪欲に得点を奪いに行くアグレッシブさは、茨城がB1で戦っていくうえで欠かせない。今回のインタビューでは、昨季のことや今季に向けての思いを中心に話を聞いた(7月15日取材)。
平尾充庸(茨城ロボッツ #25)
Q 昨シーズン、茨城ロボッツのB1昇格に大きく貢献しました。昇格を決めた時はすごく感情が表に出ました。改めて振り返ってみて、どんなシーズンでしたか?
「非常にタフなシーズンで、コロナ下ということもあってシーズンが進んでいくのかという不安だとか、ファンの方々が会場に来てくれるのかというような心配はあったんですけど、しっかり対策をしながらシーズンを進めることができました。途中にロボッツとしていい流れ、上向き、右肩上がりになってきてチームとしてもいい出来になってきたなというときに、陽性判定者が出てしまい、2週間隔離。今からなのにという不安はあったんですけど、2週間という隔離の間にしっかりチームとしてミーティングをしたり、自宅でできる心肺機能を高めるトレーニングというのをチーム全員でオンラインでやりました。この2週間が明けた後にすぐ試合があったんですけど、そこで今まで以上のパフォーマンスが出たので、変な言い方をすればいいお休みになったのかなと思います。そこからどんどんチームとして良くなっていきましたし、シーズンの途中でまだ戦う気持が作れていないプレーヤーであったり、そういったところもたくさん見えたんですけど、しっかりとチームがまとまったからこそ昇格ができたのかなと思います」
Q 2位という結果でしたが、アウェイのファイナルで群馬から1勝できたことは大きな意味があったと思います。と同時にゲーム1を勝っていたら優勝できたという思いも強かったのでは?
「そうですね。ゲーム1を左右した一つのターニングポイントしては、リッチ(リチャード・グレスマン)コーチがテクニカルファウルを取られてしまったのです。リッチコーチだけじゃないですけど、ベンチが抗議をしたときですかね。そこが一つのターニングポイントで、ビデオを見返してもリッチコーチやベンチのスタッフ陣が“ワーッ”って言うのも仕方ないかなと思いました。あそこはあそこで仕方ないのかなと、切り替えなければいけない部分だったと思います。2戦目しっかり切り替えられて、ホームで無敗の群馬さんに土をつけられたのはよかった」
Q 北関東に3つB1のチームがあります。宇都宮ブレックスが現時点では実力を含めていろいろな部分で上を行っていますが、ロボッツも水戸市を中心に茨城県全体で徐々に盛り上がってきているなという感触はありますか?
「本当に街を見渡してもそうなんですけど、徐々にロボッツのステッカーであったり、街の中にポスターが増えてきたりと、僕が初年度(2017−18シーズン)に来たときに比べると、非常に街全体で応援してくださっているなといいう実感はあります。ただ、まだまだ知らない方もいると思いますし、だからこそ茨城県、水戸だけではなく県全体にロボッツというチームが“茨城を背負って戦っているんだよ。じゃあ見に行こうか”って思うようなプレーをしなければいけないと思っています。それがしっかり根付いているのが千葉(ジェッツ)だったり、宇都宮だったり、本当に県全体が応援してくれているチームだと思う。そういった意味で真似をするわけじゃないですけど、いい意味で県全体から応援してくれるような愛されるチームを作りたいなと思います」
Q 広島ドラゴンフライズ時代に天皇杯準優勝を経験するなど、元々トップリーグのチームにいましたが、Bリーグ創設以降はB2でプレーしていました。ようやく手にしたB1の舞台で戦えることをどう捉え、どんなチャレンジが待ち構えていると思いますか?
「B2で長いことやっていたんですけど、本当にB2にいるときでもいろいろな元チームメイトだったり、そういった人との会話というのもありました。そういった意味でも“早く上がってこいよ”だったり、“また一緒にプレーしたいね”でもあったり、本当にたくさんの声をかけていただいて、自分自身も早く上がりたいというちょっと切羽詰まった部分もあったんですけど、ようやく上がることができて、今までのチームメイトだったり、今までずっと対戦してきたプレーヤーであったり、本当に楽しみがたくさんあります。25、26でトップリーグから少し退く形になり、今32でまたトップレベルに戻れたということで、正直楽しみが多いです。今まで以上に経験も積んできましたし、いろいろな覚悟と責任を持ってコートに立ってきたので、早くトップのレベルで表現を早くしたいなと思います」
Q 父親として子どもたちにB1でプレーしている姿を見せられるのも、モチベーションが上がる要素ではないですか?
「本当にB1決めたときに嫁もそうですけど、子どもが一番喜んでくれて、ずっと家でもB1って言っているので、父親の頑張っている姿を見て何か自分の子どもに伝えられることはたくさんあると思っているので、そういった意味でも上の2人はある程度物心ついて、小学校と幼稚園ですけど、3人目がまだ1歳半くらいなので、その子が“パパはB1選手、トップリーグで戦っているんだよ”と理解するまでは、一生懸命頑張りたいと思います」
Q 篠山竜青や山下泰弘という東芝時代の先輩とB1でマッチアップできるのはすごく楽しみなのでは?
「そうですね。本当に僕も当初から勉強させてもらってましたし、今までもB1の試合をSNSやバスケットLIVEを通じて見たりするんですけど、格段に背負っているものが違う。戦う姿勢であったり、そういったことを画面を通じて感じることがたくさんあったので、やはり僕も負けたくない。東芝の時もそうですし、苦い経験もしているので、見返すつもりじゃないですけど、しっかりと自分が成長した姿というのを対戦して感じていただけたらなという風に思っています」
Q オフの間、レベルアップするために力を入れているところは?
「B1の外国籍選手が今までのリーグと違って非常にレベルアップしているのは見てもわかります。フィジカル面でもそうですし、外ができるビッグマンが非常に増えてきているので、そこをどう戦うかを意識しながら、体作りもそうなんですけど、相手の外国籍選手に当たり負けをしないような、当たったときに体勢を崩さないことであったり、そういったところの体幹トレーニングをしっかりして強化をしていかなければと思います」
Q 何人かの選手が抜けましたが、西川貴之、多嶋朝飛、エリック・ジェイコブセン、谷口大智が新たに加入する彼らへの期待は?
「同じポジションのガードで言えば、朝飛さんにはチームにフィットしていただきたいというのと、ガードですので僕自身もそうですけど、学ぶべきことがたくさんあると思っています。あとはトップリーグでずっと戦ってきた経験もあるので、僕らにそういったことを落とし込んでくれればいいなと思っています。西川と谷口はまだ若い選手なので、いろいろな意味でアグレッシブにチャレンジしてもらいたいですし、多嶋選手の加入というのはすごく大きなものだと僕自身も感じています。いろいろなことを指示できる、僕たちにもいろいろな経験を落とし込んでくれる存在だと思います。そこにジェイコブセン選手も強烈なリバウンドであったり、ずっとリムランしてくれる体力だったり、頼もしい存在が入ってきたなと思っているので、しっかりとバランスよく、今までとまた違ったロボッツのいい形になるんじゃないかなと思います」
Q グレスマンコーチはハイスコアの試合を好む印象があるのですが、司令塔としてプレーしている平尾選手自身はどう感じていますか?
「冷静なときはすごく良くても、熱くなりすぎるとどうしても周りが見えなくなってしまうタイミングってあるんですけど、それも含めてリッチコーチもB1初めてなので、そういった意味では共に成長できていければなと思っています。コーチ自身はすごく熱い人なので、僕たちもそうですけど、外国籍選手にもしっかりと言うことを言ってくれる。この人には言う、この人には言わないみたいな、日本人特有のあるあるといったことがなくて、だれにでもダメなものはダメ、いいものはいいと言ってくれる存在なのです。そういった意味ではすごく僕自身もリッチコーチを信頼しているので、本当にチームとともにリッチコーチも僕自身もそうですけど、一緒に成長していけたらなという風に思っています。
Q 天理大学で活躍されましたがが、関東1部の大学以外からBリーグにやってくる選手も増えています。中高で全国大会に出るような強豪でないチームでプレーしている子たちにアドバイスするならば、どんなことになりますか?
「僕自身田舎の学校から出てきたので、正直関東の大学生からすれば“だれだ、お前は”みたいになっていたと思うんです。それでも僕たちの代ではしっかり結果(2011年のインカレ3位)を残しましたし、だからこそ努力は裏切らないというか、僕らはたまたま努力をしてバスケットで実りました。例えばですけど、バスケットで実らなくてもどの努力はいろいろな私生活であったり、これからの仕事であったり、そういったところでみのってくるものだと思っています。一概にバスケだけだということではないと思うんですけど、努力をしている過程でたくさんのことに気付いたりとか、成長できるところとがたくさんあると思う。大きなところで言えばバスケットを通じて、人間を磨いていくところだと思っています。バスケットをしている以上、全国で勝ちたいとか、僕らは関西だったので関東の大学に勝ちたいとか、いろいろな想いはあると思うんですけど、そこに向かっていく過程がすごく大事だと思っているので、一概にバスケだけ頑張れよというのは言えなくて、バスケを通じてたくさんのことを学んでくださいというところですね」
Q その過程ということからすれば、自分でしっかり考えること、迅速な判断、能動的になることが大事だと思えますか?
「そうですね。高校生までは言われただけをただ淡々とこなしていっている時間だったと思うんですけど、大学に入るとどうしてもすべてを教えてくれない。だからこそ自分たちからアクションを起こしていくとか、それも含めてコミュニケーション能力であったりといったところも必要になってくると思う。大学、大人になればなるほど自主的に何かの行動をしなければいけない時間がたくさん増えたので、そういった意味ではすごくいい勉強になったなという風に思います」
Q ロボッツを応援する人たちにB1で戦う平尾選手をどう見てもらいたいですか?
「僕自身のアピールポイントは本当に声が大きいこと。いろいろな会場でいろいろな音響があると思うんですけど、それに負けないくらいのデカい声が僕のアピールポイントだと思っているので、音響に負けない僕の声をB1の舞台でも見ていただきたいなと思っています」
平尾充庸(茨城ロボッツ #25)
Q 最後に、この24時間ちょこっとだけ幸せだったこと、何かありましたか?
「今日、幸せってことではないですけど、朝僕も嫁もみんな寝坊してしまったんです。娘は学校に行かなければいけないんですけど、7時20分に出なければいけないのに気付いたときには7時10何分とかで“ヤバい”ってなった。娘がいなかったので下に降りて行ったら、ちゃんとランドセルを背負って着替えて、(学校に)行く準備ができているというところに、何か成長したなと。今までなら“あれをやりなさい、これをやりなさい”と言われなければできなかったものが、自分で“ああ、行かなければいけないんだ。じゃあ準備しよう”としっかり準備できて、“もういく準備できているよ”と言われたときは、ちょっとうれしかったですね」
文:青木 崇
【Bリーガーインタビュー】
茨城ロボッツ 25番/PG 平尾 充庸(取材日:2021年7月15日)
青木 崇
NBA専門誌「HOOP」の編集者からフリーのバスケットボールライターとなる。NBAファイナル、NCAAファイナル4、世界選手権などビッグイベントの取材や執筆活動を行なっている。
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