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トーマス・ケネディ(広島ドラゴンフライズ#1)
日本でプレーするようになって10年目を迎えているトーマス・ケネディは、昨年12月に帰化選手となった。2018−19シーズンにはB2のレギュラーシーズンMVPに選出されるなど、得点力が持ち味のフォワードとして活躍中。豊富な経験と一喜一憂しない冷静さを生かし、苦戦が続く広島ドラゴンフライズのチーム力アップに全力を注いているケネディに、1月26日の練習後に話を聞いた内容を紹介する。
Q 三遠戦は勝てそうな試合を落としての敗戦。約3週間試合間隔が空いたことで、練習に時間をかけてきたと思います。その成果は少なからず出ていたと思いますか?
「もちろんだ。今はよりアグレッシブなディフェンスをしているし、ヘルプやローテーションもよくなっている。ちょっとしたことを修正することだと思う。ボールのケア、価値を理解することが最も重要なことであり、ターンオーバーを半分に減らすことができれば、5〜6回多くオフェンスの機会を得られるだろうし、反撃もできる。悪いファウルで早い段階から相手にボーナス(のフリースロー)を与えないこと、ディフェンスにおけるコミュニケーションのミスだ。コミュニケーションの問題を改善すればディフェンスはよくなるし、いいオフェンスへとつながるものだ」
Q 日本での経験が豊富なベテランとして、事態を改善するために何をもたらそうとしていますか?
「この状況を改善するにはチームの一体感を維持し続けなければならない。コミュニケーションが最も重要な部分であり、コーチから選手、選手からコーチ、全員が一つになることだ。ベンチからプレーがコールされても、別のコールを耳にしたために選手たちが緊急モードでオフェンスすることを強いられてしまう。コート上における明確な意志決定と、遂行力をより高めることだと確信している。オフェンスでもディフェンスでもしっかり遂行することがとても重要だ」
Q 日本で10年目、bjリーグとNBLの統合によって生まれたBリーグが発展しています。日本のバスケットボールが最も向上したと思うところは何ですか?
「向上したいという思いが選手たちにあるからだと思う。みんながうまくなりたいと思っているから、より一生懸命に取り組み続けることへとつながり、コート上でより良いものが生み出されているのだろう。選手それぞれの向上したいという強い意志がそこにはある」
Q B1における自身のパフォーマンスについてどんな評価をしていますか?
「もっといろいろできることがあると感じている。チームが自分に求めていることと、自分たちががやろうとしていることに適合しようと心がけている。それに反するようなことをしていないのは明らかだ」
Q 日本への帰化を意識したのはいつごろからですか?
「約2年前、群馬(クレインサンダーズ)でのラストシーズンだったかな。機会が巡ってきたということもあり、日本人になることを考えるようになった。これを実現するために日本語を真剣に勉強しなければならないと思ったし、最初は50音からというちょっとしたことから始めた。2019年が始まったばかりのころかな」
トーマス・ケネディ(広島ドラゴンフライズ#1)
Q 初めてその話をした際の家族の反応は?
「みんなハッピーだったよ。(帰化までの)過程がすごく長かった。どんなに大変だったかなんて簡単に話せないくらいだ。振り返ってみると、最初はそうしたいという思いがあったけど、それをやるにはすごいチャレンジが待ち構えているとわかった。ほぼ毎日日本語のクラスを受け、学んだことを家で勉強していた。翌日クラスに戻ってからも継続して学習しても、何か新しいことが出てきた瞬間に“うわー、また新しいことか”ってことの繰り返し。毎日何か新しいことが出てきたんだ。自分が思っていた以上に大変なことだったけど、やり遂げたことはとてもうれしいね」
Q 帰化選手になったことでより長いキャリアを過ごせる可能性だけでなく、広島というチームで実現したことはどんな意味がありますか?
「機会、タイミングなどすべてだ。自分のキャリアにおける次のチャレンジだと思っている」
Q アイザイア・マーフィーは将来が楽しみな選手です。彼の印象は?
「彼を見たとき、素晴らしいアスリートで、いい選手だし、賢いと、時間の経過とともにもっと良い選手になると思った。3、4年後にはリーグ最高の選手になる可能性を秘めている。身体がより強くなりたいという思いを持ち、ゲームの状況をもっとしっかり見られるようになれば、Bリーグにおけるベストプレーヤーになると見ている」
Q マーフィーにとって良き師のような存在でありたいと思っていますか?
「そうだね。彼とはたくさん話している。プロとしてプレーする1年目のシーズンは、何を期待したらいいのか、何が起こるのか、何が起こるか想定すること、それぞれ状況でどう対応したら良いのかといったことは、正に学びのプロセスなんだ。だれが何と言おうが、状況はそれぞれ違う。違うことに影響されること、違うことを受け入れることが大事。とにかく経験して乗り越えていくしかない」
Q それを横浜(ビー・コルセアーズ)時代に経験したのですね
「いや、横浜はプロとして3年目だった。プロ1年目はオーストリアで、すごく大変な状況だった。今の広島と似ていて、なかなか勝てなかった。勝っていないとすべてのことが一大事にみたいになる。一つのことを改善していくのにも、それがどんなことであっても大袈裟なものになり、すべてが間違った方向に進んでしまう。1本のターンオーバーがまるで5本や10本のように、“まずい時間で犯してしまったぞ。何をしたらいいんだ”という感じになるけど、そこからどうなるかなんてだれにもわからない。重要なことは、そういった状況にいながら乗り越えていくことだ」
Q こういった経験が、今の広島が直面している状況を改善する助けになると思っていますか?
「もちろんだ。シーズンによってはうまく行かないことがある。大変なのは毎日コートに出て挑戦し、努力し、エナジーを持って正しいことをやること。諦めるのは簡単だ。最も簡単なことは諦めることだ。毎日コートに出て努力するのは、本当に根性が必要なんだ。“シーズンはもう終わりだし、次のシーズンに向けてやろう”なんて簡単なことだけど、勝利のためには毎日努力し続けるしかない。週末の試合に向けての準備では、どこが相手であっても“自分たちが勝つ”と思っている。彼らのほうがいいチームなんて考えたことなんてないし、コートに出たら自分たちが勝つと思っている。勝てないなんて思ったことは一度もない」
Q Bリーグのいいところは、NBAで起こるようなタンク(わざと負ける行為)が絶対にないってことですね
「間違いない。素晴らしいことだ。負けることによる利益なんてない。コートに出たら持っているものをすべて出し切る。それに加え、とにかく尊敬の念を持ってプレーすることだ。プレーオフに進んでも進めなくても、勝敗に関係なく尊敬の念を持ってプレーしなければならない」
Q 残りのシーズンに向けて目標をお願いします。
「もっと向上したい。特にディフェンスやコミュニケーションだ。成長していることを示しているし、我々はB1でプレーするに値する思っている。それが私の望みだ」
文:青木 崇
【Bリーガーインタビュー】
広島ドラゴンフライズ 1番/SF/PF トーマス・ケネディ(取材日:2021年1月26日)
青木 崇
NBA専門誌「HOOP」の編集者からフリーのバスケットボールライターとなる。NBAファイナル、NCAAファイナル4、世界選手権などビッグイベントの取材や執筆活動を行なっている。
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