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「先発メンバーがアグレッシブにプレーしていたが、スマートでなかったり、流れも悪く、外で回っているだけのオフェンスだったので、少し流れを変えようとベンチユニットを出した」
富山グラウジーズとの2連戦に勝利したといえ、栃木ブレックスの安齋竜三コーチは、ゲームの入り方が悪かったことに不満を隠さなかった。1戦目は積極性を欠いたプレーが要因のターンオーバーでリズムをつかめず、2戦目はエナジーで富山が上回る展開で12点のリードを奪われる。
それでも逆転して勝利できたのは、ベンチ陣のステップアップが大きい。1戦目は3Q終盤に渡邉裕規の連続3Pで引き離し、2戦目は生原秀将が1Q途中から2Qにかけて8点を奪い、逆転への道筋を作った。また、鵤誠司はディフェンスで相手からターンオーバーを誘発させ、チームに勢いをもたらすシーンが多くなっている。
3月3、4日にアウェイで京都ハンナリーズに連敗した後に迎えた名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦以降、栃木の成績は9勝4敗。ワイルドカードでのチャンピオンシップ進出に大きく前進している状況を作ってきた要因として、ベンチ陣の質が高くなり、貢献できる選手が非常に多くなっている点が見逃せない。それは、ベンチ陣全体の得点数を見ればわかる。
ここ13試合で相手より少なかったのはわずか2度しかなく、1試合あたりの平均にすると28.5点。3月30日のサンロッカーズ渋谷戦での42点を最高に、30点以上を記録したのは5回。富山相手の連勝も1戦目が32点、2戦目が33点という数字からも、ベンチ陣が勝利に大きく貢献していることははっきりしている。
優勝した昨季の栃木は、ライアン・ロシターと古川孝敏が得点面でチームを牽引するスタイルだった。しかし、今季のチームは試合を重ねるごとにどこからでも得点できるオフェンスの遂行力が向上。レバンガ北海道との1戦目、終盤に喜多川修平がドライブでフィニッシュしたシーンは、安齋コーチがタイムアウト後にすばらしいプレーをデザインできる指揮官であることを示すもの。昨季のセミファイナル、シーホース三河戦でロシターが決めた決勝点も、当時アシスタントだった安齋コーチがデザインしたものをトム・ウィスマンが採用したことで得た結果だった。
田臥勇太はシーズンを通じて、「自分たちはチャレンジャー」と口にしてきた。ここ1か月で明確になったベンチ陣のレベルアップは、チャレンジャーというメンタリティーがいい結果につながり、チーム力を着実に上げていること示しているものと言っていいだろう。
青木 崇
NBA専門誌「HOOP」の編集者からフリーのバスケットボールライターとなる。NBAファイナル、NCAAファイナル4、世界選手権などビッグイベントの取材や執筆活動を行なっている。
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