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野球 コラム 2022年6月13日

「監督はクビになるため雇われる」エンジェルスのマッドン解任に見るメジャー監督の運命

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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解任されたマッドン監督(左)

解任されたマッドン監督(左)

「監督はクビになる(fired)ため雇われる(hired)」。こんなメジャーで古くから伝わる格言を思い起こした。

現地時間6月7日、エンジェルスはジョー・マッドン監督を解雇した。フィリーズのジョー・ジラルディに次ぐ、今季2人目の監督解任だった。

その前日まで、マッドン率いるエンジェルスは単一シーズンでは球団史上ワールストタイの12連敗を喫していた(その連敗は最終的に14まで伸びた)。表面的に捉えると、連敗の責任として理解できなくもない。さすがに12連敗じゃあね、という訳だ。

しかし、まだシーズンは2/3以上残っていて、今シーズンから拡大されたプレーオフ進出最終枠のワイルドカード3位にまだ1.5ゲーム差だった。それどころか、27勝29敗という戦績は、開幕前それほど評価が高くなかったエンジェルスにとっては「こんなもの」かもしれない。敢えて監督が詰め腹を切らされるほどの低迷ではない。

12連敗はそこまでインパクトがあったということになるのだが、別の見方をすれば、もともとマッドンはHot Seat(危ない立場)にあったとも言える。

2019年シーズン終了後にエンジェルスから3年契約で迎え入れられたマッドンは、今季がその最終年だった。メジャーでは、フロント上層部からそれなりの評価を得ている監督は、最終年に入る前に契約延長を持ちかけられることが多いが、マッドンの場合はそうではなかったようだ。

それは、彼が指揮を執った2020年、2021年ともエンジェルスは負け越したからかもしれない。しかし、両年とも同球団は戦力的には不十分な編成で、不成績は「織り込み済み」と言えなくもない。

実はひとつ、見落とせない要素がある。マッドンをエンジェルスの監督として迎え入れた同球団GMはビリー・エプラー(現メッツGM)だったが、彼は2020年シーズン終了後に解任されている。そして、その後任に就いたのが、今回マッドンに引導を渡したペリー・ミナシアンだった。

そのミナシアンは、昨年もシーズン中(5月)に、将来殿堂入り間違いなしのスーパースターだが衰えも顕著なアルバート・プーホルスを戦力外とし、大きな話題となった。

ミナシアンだけに限らず、概ねGMというものは前政権から引き継いだ負の遺産(マッドンに対し、この表現は酷かもしれないが)には、思い切ったアクションを取るものだ。

マッドンとミナシアンの関係がどんなものだったかは、当人同士しか分からない。しかし、昨季終了時点でマッドンがそれほど高い評価や信頼、好感を勝ち得ているわけではなかったとすると、この12連敗はミナシアンをして決断せしむるに十分だったと言えるだろう。

やはり、「監督はクビになるため雇われる」ものなのだ。


文:豊浦彰太郎

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豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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