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野球 コラム 2022年3月30日

プーホルス、思い出の地セントルイスでそのキャリアを締めくくる

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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アルバート・プーホルス

アルバート・プーホルス

カリフォルニアでの決してハッピーなだけではなかった10年間を終え、アルバート・プーホルスがセントルイスに戻ってくる。カージナルスと1年契約を結んだのだ。

プーホルスがいかに偉大な打者であったかは、いまさら語る必要がないだろう。デビューからの10年連続3割30発100打点、3度のMVP獲得など、カージナルスでの11年間は栄光に満ち溢れていた。しかし、エンジェルスと10年契約を締結してからのキャリア後半は、そうではなかった。30本塁打以上が4度あったとは言え、あまりに輝かしいセントルイス時代と比較すると、長すぎる晩年とすら言えるものだった。そして今季、42歳になった彼はセントルイスに帰る。

歴史的なスーパースターが、華々しいデビューを飾った、または全盛期を過ごした街に戻り、キャリアを締めくくるケースは少なくない。1951年にニューヨーク・ジャイアンツでデビューしたウィリー・メイズ(通算3293安打、660本塁打、338盗塁)は、チームのサンフランシスコ移転により西海岸に活躍の場を移したが、思い出の地ニューヨークにその後誕生したメッツに、41歳になった直後の72年5月に移籍。翌73年を最後に引退した。

通算755本塁打のハンク・アーロンも、ブレーブスでの21年目にベーブ・ルースが持つ当時の歴代最多本塁打記録714本を更新すると、翌75年ミルウォーキー・ブルワーズに移籍した。彼がメジャーデビューした54年から65年まで、ミルウォーキーはブレーブスのホームだった(66年にアトランタに移転)。アーロンは、そのミルウォーキーで偉大なキャリアの最後の2年間を過ごした。

近年では、ケン・グリフィー・ジュニアの例もある。彼のキャリアのハイライトは、シアトルでの最初の11年間に凝縮されている。2000年にレッズに移ってからは、ある意味ではプーホルス同様に、「早すぎる、長すぎる晩年」だった。2009年、グリフィーは39歳でマリナーズに復帰し、10年6月に引退した。

イチローもそうだ。結果的には引退のためのシアトル復帰となったが、その偉大なキャリアを締めくくる舞台としては、マリナーズ以上の球団はあり得なかった。

プーホルスも、今季限りの引退を示唆している。しかし、彼の復帰は史上有数のスラッガーと全米一のベースボールタウンの温かいファンの再会、という感傷的なストーリーだけではない。ナ・リーグは今季から指名打者制を採用する。昨季も左投手に対してはOPS.939と結果を残したプーホルスは、カージナルスには貴重なDHのプラトーン要員なのだ。

カージナルスにとってプーホルスとの契約は、かつての至宝への温情という以上に、Baseball Deal(戦力強化策としての契約)だ。昨季のメジャー平均年俸417万ドルを大きく下回る250万ドル(約3億円)というプラトーンプレーヤー見合いのサラリー額が、それを示している。

しかし、個人的には2011年の夏の思い出が蘇る。

プーホルスは契約最終年で、オフに大型契約を求めてビッグマーケット球団を選ぶのか、それとも愛するセントルイスに留まるかは、全米のファンの関心事だった。

その8月、ぼくはセントルイスを訪れた。カージナルスは、ナ・リーグ中地区で首位のブルワーズに水を開けられ、苦しい状況にあった。いつも選手や球団に支援的な地元紙「セントルイス・ディスパッチ」ですら、「夏場に失速しているのは、高齢化に手を打たなかったフロントオフィスの責任だ」と批判的な論調だった。

試合前、ぼくは球場ツアーに参加した。ブッシュ・スタジアムのゲート3には、同球団史上最大のスターであるスタン・ミュージアルの銅像が建っている。ルー・ブロックやボブ・ギブソンら他の偉大な選手達の銅像は、別の場所にまとめられている。単独はミュージアルだけなのだ。ガイド役の職員さんは、「将来、ミュージアルの隣りにアルバートの像が建つかは、このオフ彼がどんな選択をするかに掛かっている」と語っていた。

その後、それまで低迷していたカージナルスは盛り返した。ワイルドカードでポストシーズン出場を果たすと、そこから躍進した。レンジャーズとのワールドシリーズは歴史的な大熱戦となり、プーホルスも第3戦での3打席連続本塁打などのパフォーマンスで、チームの5年ぶり、11度目の世界一に貢献した。

そして、それを最後にセントルイスを去った。

あれから10年が過ぎ去った。ぼくはまだ、ブッシュ・スタジアムにミュージアルと並び、プーホルスの銅像が建つことを夢見ている。

カージナルスでは、プーホルス流出後のハート&ソウルだったヤディアー・モリーナも今季限りの引退を表明しているし、通算184勝のアダム・ウェインライトにとっても、今季がラストシーズンとなる可能性が高い。今シーズンは、カージナルスから目を離せない。

文:豊浦彰太郎

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豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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