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野球 コラム 2021年8月27日

来年には史上7人目の「3000安打&500本塁打」も、最後の三冠王ミゲール・カブレラの傑出した球歴

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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ミゲール・カブレラ

ミゲール・カブレラ

タイガースのミゲール・カブレラが通算500号本塁打を放った。史上28人目の快挙だが、彼には他にも秀逸な記録が多い。間違いなく歴史に残るスラッガーだ。

記念の500号は、8月22日アウェイのブルージェイズ戦だった。一昔前までは「500本塁打は殿堂入りのパスポート」と称されたが、1999年以降だけで全体の半数近い13人が達成している。それ以前に比べるとややありがた味が薄れた感は否めないが、現役選手では他はアルバート・プーホルス(ドジャース)のみで、タイガースの選手としては史上初。ベネズエラ出身者としても同様だ。大記録であることは間違いない。敵地トロントのファンもスタンディングオベーションで讃えていた。

カブレラの場合、通算3000本安打にもあと42本に迫っている(現地8月25日時点)。タイガースの今季残り試合は34試合なので、ここまで101試合出場で92安打のカブレラには今季中の達成は難しそうだが、来季早々にはベーブ・ルースもテッド・ウィリアムズもバリー・ボンズも到達しなかった、史上7人目の「500本塁打&3000本安打」の偉業が期待できそうだ。

彼は、2012年に1967年のカール・ヤストレムスキー(レッドソックス)以来の三冠王に輝いている。1リーグ6球団のNPBの場合、三冠王はぼくがリアルタイムで見届けた範囲でも1973年の王貞治を初め、のべ9人が達成した(2リーグ分裂後初の達成となる1965年の野村克也は、流石に記憶にない)。

しかし、メジャーの場合は1969年に両リーグとも10球団から12球団に増え、それ以降も何度もエクスパンション(球団数拡張)行なっている。カブレラが三冠王を達成した2012年のア・リーグは14球団だ。この環境下での達成は、長い間事実上不可能とされていたし、ぼくもそう思っていた。

ヤストレムスキー以降も、卓越した強打者が登場すると「次の三冠王候補」というフレーズが使われた。1970年代のジム・ライス(レッドソックス)、2000年代のプーホルス(当時はカージナルス)などはその代表例だ。しかし「次の・・・」という表現には、暗に「三冠王などそもそも出るわけがない」というニュアンスが含まれている。「あり得ない大記録の希望を持たせてくれるくらいの強打者」ということだ。だからこそ、カブレラの2012年の達成は驚きであり、偉業だった。

世はセイバーメトリクス全盛期だ。その観点からは、打率より出塁率に注目すべきであり、勝負強さよりも運に左右される打点などは評価に値しないということになってしまう。実際、プレーヤーとしての総合的な価値を示すWARでは、この年のカブレラをマイク・トラウト(エンジェルス)は遥かに上回っていた。

それでも、2012年のア・リーグMVPに、トラウトではなくカブレラが選出されたのは良いことだったとぼくは思っている。同年ア・リーグのいわばMan Of The Yearは、やはりあり得なかったはずの三冠王を達成したカブレラだと思うからだ。

彼は1999年に16歳でマーリンズと契約し、2003年に20歳でメジャーデビューしている。初本塁打はサヨナラ弾で、主として4番打者としてその年のチームのワールドシリーズ制覇に貢献した。翌2004年には、日米野球で来日している。この頃はまだ少年のあどけなさが残る顔つきだった。

2004年から2007年までは4年連続で球宴に選出される大活躍だったが、2007年12月、マーリンズお家芸?のファイヤーセールでタイガースに移籍する。

移籍後の2011〜13年はキャリアのピークだった。2012年は前述の自身の三冠王に加えチームはア・リーグ優勝を果たした。2012〜13年は連続MVP。タイガースの観客動員も両年とも300万人を超えた。
しかし、34歳の2017年シーズンからは、故障に苦しみ欠場が多くなる。チームも低迷が続き、2014年3月に締結したカブレラとの最低10年2億9200万ドル(約321億円)の契約が再建の妨げとなっている面は否定できない。しかし、30代中盤から選手が衰えるのは致し方ないことで、プーホルスもあのケン・グリフィー・ジュニアも同様だった。契約は選手と球団の合意があって初めて成り立つものだ。カブレラを批判するのは筋違いだろう。彼は、その契約の最終年となる2023年限りで引退するかもしれない。いずれにせよ、引退後5年を経て資格を得れば、初年度に殿堂入りするだろう。

文:豊浦彰太郎

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豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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