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初のラジオ番組出演時の勝野昌慶
開幕の先発ローテは叶わなかったが、来シーズンに向けての伸びしろを感じさせたのが勝野昌慶だ。今シーズン13試合に先発、4勝5敗、防御率3.88。4勝にとどまったが、その投球スタイルは魅力満載だ。
今シーズンの初登板は散々だった。7月11日ナゴヤドーム広島5回戦。チームは19-4の大敗を喫した。先発の勝野は2回8安打6失点。試合を壊した。
「終わったって思いましたね。かなりイライラしていました。どうやって打たれたかも記憶にないです。頭真っ白。もう今シーズンは2軍だなって。僕が監督でもそうします。でも阿波野コーチから、次もう1回行くぞって言ってもらえて」。
1週間後の甲子園。再び勝野はマウンドに上がった。しかし4回2失点。チームは敗れた。
「前回より前進した手ごたえはありましたが、結果はついてきていませんからね。ダメかなって」。
しかし、1週間後も与田監督は勝野を先発マウンドに送った。勝野の投球に可能性を感じていたのだろう。シーズンは11月まである。必ず勝野の力、成長はプラスになる。そう信じているような起用だった。
勝野は3度目の正直を結果で示した。ナゴヤドーム阪神戦。勝野に勝ち星はつかなかったが、チームは1-0で勝利、何より勝野自身、6回4安打無失点の好投だった。
勝野らしい投球だった。ベース盤の上で150キロの力強い真っすぐが唸る。さらに落差のあるフォークボールが決まっていた。勝野のパワーピッチングは可能性を感じさせてくれる。
昨年11月。勝野はどん底だった。シーズン途中から抱えていた腰痛。椎間板ヘルニアが悪化し、トレーニングすらできない状況だった。サードオピニオンまで聞き、オペをしない決断を下した。
「神経が腫れてしまい、そこが痛んでいました。メスを入れるのは嫌でしたね。何とか手術しない方法を考えていました。注射で神経の腫れを引かせる処置でしたが、これが奇跡的に1回の注射で全く違和感がなくなりましたね」。
吉見の引退登板Tシャツを着る勝野
勝野は元々、身体が硬かった。柔軟性が不足する中で爆発的な力をボールに伝える。結果、腰へのダメージが大きくなっていた。処置後、柔軟性を高める事に重点を置いた。腰へのダメージを軽減させるフォームの入手に全力を注いだ。どん底からわずか1か月で勝野は復活ロードを歩みだした。
「投げ始めてすぐ行けると思いましたね。リハビリが明けて投げている感覚が別物だったんです。これは150キロすぐ出るぞって。手応えがあったからこそ、結果が出なければやばいなって思うくらい感触は良かった。腰にストレスを感じて動いている事もなくなったんです」と話す。
そんな勝野も夏を越した所で故障期間の反動が来た。スタミナ切れだった。フォームを崩し、平均球速は143キロまで落ちた。
「野手からもテンポが悪いなって。フルカウントが多いし、少し先を見すぎた部分はあります。長いイニングを投げたい意識が強すぎて、フォームもバラバラでスピードも出ない。自分を見失いました」。
勝野は門倉2軍投手コーチの言葉に救われた。「1イニングを積み重ねろって言われました。1イニングを全力で行って、それでバテたらしょうがないぞ。お前はそういうタイプなんだ。先はまだ考えなくていい。6回まで全力イニングを続けてみろ。それがお前の投球に合うはずだって」。
「確かに大野雄大さんが凄いピッチングされてて、自分もああなりたいって気持ちもありましたが、今の自分にはまだ無理。1試合のバランスを考えすぎていたかなと思いましたね」。
自分のピッチングを取り戻した勝野だが、最後の登板は野球の神様が課題を与えた。
11月4日ナゴヤドームDeNA戦。勝野は好調だった。4回まで1安打投球。5回にソトにソロホームラン。6回にロペスに同点の3ランを浴びリードを吐き出した。
「イケイケ、押せ押せではダメですね。試合後、柳さんにも言われました。いい時ほど慎重にいかないといけないと。もったいない失点でしたね。投球テンポ、立ち上がり、スタミナ、配球、精神状態、状況判断……。やる事は山積みですね」。
Aクラスに入ったドラゴンズには来季への期待が膨らむ。その期待値を上げてくれるのは成長戦力だ。勝野昌慶は間違いなくその1人だろう。勝野にとって4勝は大きな前進。しかし、勝野は勝ち星以上に多くを学んだ。来シーズンに向けた5敗の価値は計り知れない。
文:森貴俊(東海ラジオ放送)
森 貴俊
1976年愛知県出身。東海ラジオ放送スポーツアナウンサー。ドラゴンズ戦中心のガッツナイターをはじめJリーグ、マラソン等スポーツ実況を担当。原点回帰を胸に、再び強き竜の到来を熱望する43歳。日々体力の衰えを感じるがドラゴンズへの喜怒哀楽は衰え知らず。今年もマイクの前で本気で泣いて怒って笑います!
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