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野球 コラム 2020年10月30日

レイズのワールドシリーズ敗退を決定付けた?キャッシュ監督のスネル降板判断の是非

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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ワールドシリーズが終わった。ドジャースが32年ぶりの世界一に輝いたが、最終の第6戦では、レイズの投手交代が大きな波紋を呼んだ。好投を続けていた2018年サイ・ヤング賞投手であるエースのブレイク・スネルを、5回と1/3、わずか73球で降板させたケビン・キャッシュ監督の判断は果たして正しかったのか。

レイズは初回、ランディ・アロザレーナのソロホームランで先制した。ワールドシリーズ3本目、このポストシーズン10本目だった。試合はその後膠着状態に。スネルは5回終了まで、被安打1、無四球、9奪三振という圧巻の投球を続けた。しかし、6回裏一死からドジャースの9番打者オースティン・バーンズに中前打を許し、次打者ムーキー・ベッツを迎えると、キャッシュ監督は左腕のスネルに替え、右のニック・アンダーソンをマウンドに送った。ベッツは右打ちだが、スネルはその前の2打席、ベッツを2三振と完璧に封じていた。結局この交代は裏目に出てこの回レイズは逆転を許し、シリーズ敗退に至ったのはご存知のとおりだ。

キャッシュ監督は試合後のインタビューで「3巡目に入った」ことを交代の理由に挙げており、これが物議を醸した。「あんなに好投を続けていたのに」、「どうしてエースを信頼できないのか」ということだ。

実は、「3巡目に入ったら交代させるべし」という考え方は、アチラでは一般的な理論だ。さすがにその日三度目の対戦ともなれば、打者は順応してくるからだ。また、セイバー系サイトのfangraphsは、6回に入りスネルの球威が衰えていたことをデータで示し、キャッシュの判断を擁護していた(参照)。また、スネルは、今季はレギュラーシーズン、ポストシーズン全ての登板において5.2回より長く投げてはいない(タマ数では100球以上も数度あるが)。これが、いつものパターンだとも言えるのだ。

それでも、この投手交代を全面的に肯定はできない。なぜならこの投手交代の判断への評価は、「スネルの降板」ではなく、「スネルをアンダーソンに変えたこと」の是非で下されるべきだからだ。

アンダーソンは、レギュラーシーズンでは防御率0.55、WHIP0.49と完璧な投球を披露したがポストシーズンに入ってから調子を崩し、地区シリーズから6登板連続で失点していた(結果的には7連続になったわけだ)。もはや絶対的な存在ではなかったのだ。したがって、たとえfangraphsが指摘するようにスネルに疲れの兆候が見えたとしても、「アンダーソンへの継投」よりは「スネルの続投」がベターで、交代させるにしても、あの場面ではアンダーソンではなく他の勝ちパターンでの駒であるディエゴ・カスティーヨ、またはピート・フェアバンクスにすべきだったと思う。

実はこのゲームでは、その後もキャッシュ監督のやや不可解な継投があった。

1点ビハインドの7回頭から、キャッシュはフェアバンクスを起用した。彼はピンチを招きながらもなんとかこの回を無失点で乗り切った。21球を投じていたが、8回も引き続きマウンドに登った。これ自体は不思議ではない。フェアバンクスはイニング跨ぎは珍しくないし、8回の先頭打者はベッツで、その後左打ちのカイル・シーガー、1人置いてまた左打ちのマックス・マンシーとなるからだ。右打ちのベッツまでで右腕のフェアバンクスはお役御免とし、左腕にスイッチするものと思われた。そして、フェアバンクスはベッツに痛い、痛い一発を喰らった。それでもまだ2点差だ。しかし、キャッシュはここで投手交代は行わなかった。フェアバンクスはシーガーを歩かせたが、続く右打ちのキケ・ヘルナンデスを三振に打ち取った。そして、マンシーを迎えたところでキャッシュはレフティのライアン・ヤーボーへスイッチした。ヤーボーはマンシーを併殺に打ち取りイニング終了となったのだが、釈然としなかった。ヤーボーを投入するなら、なぜシーガーの場面でなかったのだろう。

試合後も6回の「スネル→アンダーソン」に関するモヤモヤが拭い去れなかったのは、この8回の理解に苦しむ継投により、一層キャッシュ采配に懐疑的になってしまったからかもしれない。

ともあれ、全てが例外的だった2020年MLBは幕を閉じた。これからファンにとっては長いオフに入るが、その間の絶好の「たら、れば」議論のネタを提供してくれたと思う。

文:豊浦彰太郎

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豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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