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また、「ストは損である」という当然のことを労使とも学んだ。試合をやらないことには、オーナーも選手も収入が途絶えてしまう。その後、2002年の協定更新の際も危機はあったが、「ストだけは避けよう」とのムードがあった。
もっとも、今日に至るまで25年もストライキがないことには「運」も作用している。MLBの経営努力は高く評価すべきだが、90年代以降のアメリカ全体の好景気に助けられた点は無視できない。ストで取り合いの対象となる利益というパイ自体が拡大していったのだ。ストライキ以降の四半世紀の間、テレビの放映権料も観戦チケットも信じられないほど値上がりした。その結果、溢れる収入は少なからず補強資金につぎ込まれ、スト終了年の95年には約115万ドルだった平均年俸は2019年には436万ドルだった。
あの忌まわしいストの後、MLBと選手会はどんどん拡大して行くパイを分け合う関係になった。しかし、今回の新型コロナショックで米経済自体が長期の不況に突入する可能性は高い。そうなると、両者は再び限られた、いや縮小するパイを奪い合う関係になりかねないのだ。
前回のストから長い年月が流れ、当然ながら選手は完全に入れ替わったしオーナー側も世代交代が進んだ。しかし、ロブ・マンフレッド・コミッショナーは前回スト時は経営側の顧問弁護士だった。ストの痛みはだれよりも理解しているはずだ。それでも、MLB はストの原因だったサラリーキャップを持ち出してきた。このことは、労使関係の長い蜜月が終わったことを象徴している。
文:豊浦彰太郎
豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]
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