人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

野球 コラム 2020年4月16日

「新型コロナ」で「ブラックソックス事件」発端のホテルが廃業

MLB nation by 豊浦 彰太郎
  • Line
ブラックソックス事件発端の舞台でもあったホテル・バックミンスター

ブラックソックス事件発端の舞台でもあったホテル・バックミンスター


旧聞に属するが、とても残念なニュースをひとつ紹介したい。それは、新型コロナウィルス感染症の蔓延により、ボストンでもっとも由緒あるホテルのひとつが3月20日をもって廃業に追い込まれた、というものだ。そして、そのホテルはメジャーリーグの歴史を語る際に欠くことができない大事件の発端となった「歴史が動いた」舞台でもあった。

それは、「ホテル・バックミンスター」。フェンウェイ・パークまで徒歩数分で、レッドソックス戦観戦にはこの上ないロケーションにあった。実際、ぼくも観戦のためここに泊まったことがあり、幸運なことにグリーンモンスターの後ろ姿が望める部屋だった。

J SPORTS 放送情報

一般的に、メジャーリーグ史上最大のスキャンダルとされているのは、1919年の「ブラックソックス事件」だ。チック・ガンディル一塁手を主犯格とするシカゴ・ホワイトソックスの7選手がギャンブラーからカネを受け取り、レッズとのワールドシリーズを「投げた」とされている。彼らおよび事態を知りながら報告しなかった1名の計8人は、裁判では証拠不十分により無罪判決を得た。しかし、球界のイメージダウン回避を最優先すべく就任した初代コミッショナーのケネソー・マウンティン・ランディスは、彼らを永久追放処分とした。その中には、通算打率.356がタイ・カッブの.366、ロジャース・ホーンスビーの.359、に次いで歴代3位の“シューレス”・ジョー・ジャクソンも含まれていた。

部屋の窓からフェンウェイがすぐそこに望めた

部屋の窓からフェンウェイがすぐそこに望めた


その1919年のシーズンも終盤の9月18日、ア・リーグ首位を快走しワールドシリーズ進出が確実視されていたホワイトソックス(当時は1リーグ1地区8球団制)は、レッドソックス戦のためこのホテルに逗留していた。そして、ガンディルが自分の部屋にブックメーカーのジョセフ・サリバンを招き、「商談」が持たれたという(このことを記したプラークは、ホテルのロビーに掲げられていた)。ガンディルは最初は8万ドルを要求し、その後10万ドルに引き上げたらしい。そして、シリーズではホワイトソックスは3勝5敗で敗退した。

この事件の伝えられ方には、少なからずバイアスが掛かっているように思える。一般的には、ホワイトソックス球団の吝嗇なオーナーであるチャールズ・コミスキーが不当に年俸を低く抑えており、それに嫌気が差した選手にギャンブラーが近寄った、というにが通説になっている。あたかも、スキャンダルが突発的に発生したかのようだ。しかし、そんなことはあり得ず、それ以前から球界とギャンブラーの間には抜き差しならぬ関係があった、このようなスキャンダルが発生する素地はあった、と考えるべきだろう。

このホテルは1897年オープンで、1920年代まではこのエリアで最も大きな建物だったらしい。1950年代にはホテル内のジャズクラブで、ルイ・アームストロング、ビリー・ホリデイ、サラ・ボーンらのレジェンドが演奏し、歌ったという。

バックミンスターも含め、ボストンでは宿泊需要は供給量を上回っており、今後数年に多くのホテルの竣工が予定されていた。そのような状況下、突然襲ってきた新型コロナウィルス禍でどこのホテルも一切の予約をキャンセルせざるを得なくなったのだ。ホテル側の公式ステートメントでは、「再開はない」とされているが、できればどこかの資本が買い取り再び営業して欲しいと思う。

文:豊浦彰太郎

代替画像

豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

人気ランキング(オンデマンド番組)

J SPORTSで
野球を応援しよう!

野球の放送・配信ページへ