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野球 コラム 2020年3月30日

「東京2020」1年延期で影響を受けるのはWBC?それとも五輪野球競技?

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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先日、新型コロナウィルスの世界的な蔓延問題による東京オリンピック・パラリンピックの1年延期が発表された。これにより、2021年春開催予定の第5回ワールドベースボール・クラシック(WBC)はどうなるのか、いやWBCと同年開催となったことにより、逆にオリンピックの野球競技は影響を受けないのか。

五輪延期が、当初「より現実的」とも見られた2年先ではなく2021年になったのは、巷で噂されている安倍首相やバッハIOC会長の任期の問題ゆえかはここでは触れない。しかし、来年に開催されることになっていた世界陸上や世界水泳が、五輪の延期に合わせ2021年をいわば明け渡す方向性を早期に示したことが、要因のひとつであったことは間違いないだろう。

一方、世界陸上&水泳とは異なり、WBCとの被りを懸念する声はほとんどなかった。それはそうだろう。WBCの国際大会としての認知度と権威性は、北米・中南米、アジア以外はまだまだ限られたものでしかないからだ。

しかし、WBCと五輪両方に出場する、それを目指す選手や彼らを派遣する団体にとっては、深刻な問題だ。春と夏の2度もトップチームを国際大会に送り込むのは相当な負担となるからだ。

かと言って、WBCを運営するMLBとMLB選手会が、自ら2022年へのリスケを表明する可能性は低いだろう。もともと、MLBはIOCと袂を分かった関係にある。21世紀初頭、商業主義を進めるIOCは五輪野球へのメジャーリーガー派遣を再三要請したが、ペナントレースを重視するMLBはこれに応じなかった。背景には、欧州主体のIOC対アメリカンスポーツの代表としてのMLBの心理的対立構造もあったと思う。そして、(それだけが理由ではないが)2008年北京大会を最後に野球は五輪の正式種目から除外された(その煽りを食ったのが女子ソフトボールだ)。

それに対しMLBは、野球の世界大会を運営していたIBAF(現在はソフトボール連盟と合併しWBSC)が五輪競技から外れたことによりIOCからの補助金が途絶え財政難に陥った際に、資金と役員を送り込むことにより事実上掌握し、WBCを野球の世界一決定大会として認定させた。五輪とは別に独自の道を歩むことを表明したわけだ。

そのWBCは、肝心のメジャーリーガーの出場回避傾向などの問題を抱えていたが、前回の2017年大会でついにアメリカが優勝したこともあり、少しずつではあるが認知が高まっている。また、先日、前回大会MVPのマーカス・ストローマン(メッツ)がSNSでメジャーリーガーにWBCへの参加を呼び掛けたところ、あくまで非公式ではあるが、今やドジャースのエース格のウオーカー・ビューラー、昨季ナ・リーグMVPのコディ・ベリンジャー(ドジャース)、本塁打王3度のノーラン・アレナード(ロッキーズ)らの超一流が参加意思を表明している。選手の意識も変化しつつあるのだ。

そんな環境下、MLBが五輪の延期を理由に自発的にWBCを2022年にリスケするとは思えない。むしろMLBが、すでに東京五輪出場枠を獲得している日本や韓国、メキシコ、イスラエルに対し、2021年はWBCにより重点を置いた編成を迫るのではないか。これはこれで理に叶っている。なにせ、五輪野球はしょせん東京大会だけで、2024年のパリでは採用されない。その次は、2028年アメリカのロサンゼルス大会だが、夏場の開催でかつMLBが公式戦を中断する意向がない限り、米国側から野球をプロが参加する正式競技として採用させようという動きもない、と考えるのが普通だろう。

それでも、MLBが自発的にWBCを1年遅らせるとすれば、それは今季ペナントレースの開幕が遅れに遅れ、噂されているようにポストシーズンが12月にずれ込む展開になった場合だろう。さすがに年内近くまで熾烈な戦いをこなし、その3ケ月後にWBCというのは酷だ。これでは、トップクラスの出場が望めなくなってしまう。

その一方で、この3月にアリゾナで開催予定だった次回大会の予選ラウンドがキャンセルされたことは、本大会の1年延期への強烈な動機にはならないだろう。すでに実績ある16の国と地域の参加が決定しており、予選を戦う12ケ国が争うのは2021年大会から拡大される残り4枠なのだ。どこが勝ち抜くにせよ、本大会での優勝の行方にはほぼ無関係だ。MLBが、予選を慮るあまり大切な本大会の開催を危ういものにするとは思えない。

もし、MLBが「WBCにこそベストメンバーで臨むように」と要望してきたら、NPBは五輪開催国としてかなり困難な選択を迫られることになるだろう。

文:豊浦彰太郎

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豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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