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MLBはスプリングトレーニングゲーム(オープン戦)に突入した。長い冬が終わったのだ。ここで、昨年ワールドシリーズ終了以降のストーブリーグを振り返り、5大ニュースを選んでみた。
サイン盗みスキャンダル
ワールドチャンピオンになった2017年のアストロズが、本拠地のセンターに設置したカメラでサイン盗みを行っていたとの報道が11月に流れ、大きな反響を呼んだ。翌年のレッドソックスにも同様な疑惑が持ち上がった。ともにそれぞれのシーズンでワールドチャンピオンに輝いていたことが問題を大きくした。 サイン盗み自体はMLBの歴史とともにあった。そこに画像解析テクノロジーなどが入り込んできたのが現代的だが、一方でアストロズの場合は打者への情報伝達はゴミ箱を叩く音という極めてクラシカルな手段だったのは興味深い(それに加え、打者がユニフォームの下に電子ブザーを付けていたという噂もあるが)。
MLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーは、アストロズに罰金、ドラフト上位指名権剥奪、幹部の資格停止などのペナルティを与えた。これにより早期に幕引きし、スプリングトレーニングの開始とともに本件を過去のものにしようとした意図が窺い知れる。
しかし、現実には関与したであろう選手への処罰がないこと(選手組合との取引があったかもしれない)、アストロズのジム・クレーン球団オーナーや一部主力選手の謝罪が誠意を欠いたと見なされたこと、などにより鎮静化には至っていない。
それでもこのスキャンダルをポジティブに捉えるとしたら、これからロボ審判導入などより一層のテクノロジー化が進む前に、人と人の真剣勝負であるプロスポーツの本質とは何か、ということを問いかけるきっかけとなったことだろう。
再活性化したFA市場
過去2年は空前の冷え切ったストーブリーグだったが、今回は一変した。世界一ナショナルズの投打のスター、スティーブン・ストラスバーグとアンソニー・レンドーンがくしくも同じ7年2億4500万ドルで、前者はナショナルズと再契約、後者はエンジェルスと契約した。ヤンキースはゲリット・コールに契約総額では投手史上最高額となる9年3億2400万ドルを投じた。また、ドジャースは2018年のア・リーグMVPで、1月にFA権を持たない選手としては史上最高額の2750万ドルで契約したムーキー・ベッツをレッドソックスからトレードで獲得した。
背景にあるのは、ホワイトソックスやレッズ、ブルージェイズら再建過程の終盤にある球団が積極的な補強に動いたことが挙げられる。また、ここ数年倹約モードだったヤンキースが遂に重い腰を上げ、エンジェルスは相変わらず長期的構想を欠く散財?を続けている。要するに市場の競争原理が刺激されたのだ。
この活発市場を考慮すると、このオフに残り4年8100万ドルの契約をオプトアウト(破棄)する権利を有していたダルビッシュ有が、その行使を見送りカブスに残留したのは、昨季中盤以降は歴史的快投を続けていただけに、ビジネス上の損得勘定だけを考えると少々もったいなかった。
マイナーリーグ削減
ポストシーズン真っ只中10月中旬にその報道は流れた。MLBは、現在約160あるメジャー傘下のマイナーリーグ球団の約4分の1にあたる42球団との提携関係を、2020年のオフを目処に解消する意向である、というのだ。マイナーリーグ球団はその運営費のかなりの部分をメジャー球団からのサポートで賄っているため、提携解消は死活問題だ。当然ながらこのことへの反発は強く、関係者だけでなく、今年の大統領選挙での民主党候補者で若者に絶大な人気を誇るバーニー・サンダース氏をはじめとする多くの議員も異を唱えた。
現時点では問題解決の糸口は見えない。MLB機構は強気の姿勢を崩していないが、議員を敵に回すとMLBが長年にわたり享受してきた独占禁止法免除の是非が問われる事態になるかもしれない。コミッショナーは、どこに「落としどころ」を設定しているだろうか。
「ジーター満票ならず」、より重要な「ミラー殿堂入り」
現地時間1月21日、今年の全米野球記者協会(BBWAA)選出の殿堂入り投票結果が発表された。前年のマリアーノ・リベラに続き史上初2人目の満票選出が期待された元ヤンキース主将で歴代6位の通算3465安打を誇るデレク・ジーターは、わずか1票を逃し満票はならなかった(もちろん、選出は果たした)。その後ウェブ上では「犯人探し」も始まった。
このことの話題性は相当なものだったが、歴史的な意義という点では、一足早い12月にMLB選手組合の元専務理事マービン・ミラー(2012年に95歳で死去)が、別ルートの時代委員会経由で遂に選出されたことの方が大きい。ミラーは在任中に史上初の労使協定の締結やFA制度の導入に大きな貢献を示し、本塁打時代の幕を開けたベーブ・ルース、黒人初の大リーガー ジャッキー・ロビンソンらとともに「球界を変えた男」とされている。しかし、その存在自体が反体制であったミラーは、これまで7度候補に挙げられながら選出されることがなかった。
実は、彼は存命中から「殿堂入りお断り」を表明しており、遺族もそれを尊重する旨の発言をしている。そのため、7月26日にクーパーズタウンで開催される記念式典には本人はもちろん遺族も不在という事態の可能性は十分ある。
ユニフォーム胸部にナイキロゴ
12月のゲリット・コールのヤンキース入団会見は、その契約総額の凄まじさだけでなく、会見で彼が着用していたヤンキースのユニフォームでも大きな話題となった。伝統のピンストライプの右胸に、ナイキのシンボルマーク「スウッシュ」がしっかりと付いていたからだ。
MLBは同社との10年契約をスタート。ユニフォーム前面への広告を解禁したのだ。ついにパンドラの箱を開けてしまった。もちろんナイキのマークはヤンキースだけでなく、全球団のユニフォーム右胸に付く。
しかし、その衝撃度はヤンキースやドジャースなどの伝統球団の方が遥かに大きいのも事実だ。今までもサプライヤーは自社ロゴを入れていたが、袖口部分など目立たない部分にひっそり取り付けられていた。ところが、ナイキは「スウィートスポット」をゲットしたのだ。
しかし、これも必然だ。激しい動きを伴わない映像が多い野球は、ユニフォーム広告の先駆者であるNBAに比べてもテレビ向きだ。それに加えてSNS(アチラ風に言うならソーシャル・メディア)経由での告知効果も見逃せない。球団のオフィシャル媒体からだけでなく、ファン同士でも選手の画像は飛び交うからだ。
もう後戻りはない。2022年から袖の球団単位の広告も解禁されるとの噂もある。数年後にはわれわれも当然のことのようにユニフォーム広告を受け入れているかもしれない。当初は異論・反論の多かった球場の命名権同様に。
文:豊浦彰太郎
豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]
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