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2019年も残り10日を切ったこの時期、昨年同様に今季限りで引退したメジャーリーガーを紹介したい。
イチロー(マリナーズ)外野手
この稀代のスーパースターの引退は、スポーツの枠を超え日本の今年の10大ニュースにも数えられる出来事だった。
昨年5月初旬から実戦を離れ、今年のオープン戦では25打数2安打ながら、開幕シリーズ2試合ともスタメンの機会を与えられた。東京ドームを埋めた大観衆の声援と祈りも虚しく、プレシーズンマッチ2試合も含め、日本ではそのバットから快音は聞けず。最終打席の遊撃ゴロは、かつてならその脚力で安打を勝ち散ったのでは、とも思わせた。これほどの才能の持ち主がストイックに鍛え上げても年齢に抗うことはできない、という人間の宿命を示したくれたように思えた。一旦守備位置についてから退場というメジャー流のお別れも、日本のファンには新鮮で劇的だった。
45歳での引退で、「最低でも50歳まで」は有言不実行になったが、「その表現をしてこなかったらここまでできなかった」には納得させられた。試合後の深夜の会見では、他にも「他人より頑張ってきたとは言えない、測りはいつも自分の中にある」「遠回りをすることでしか本当の自分に出会えない」など、一般社会人も共感できる深いコメントを連発した。国民栄誉賞を固辞し通したのも彼らしい。
CC・サバシア(ヤンキース)投手
2月に引退宣言。イチローと同じ2001年のデビューでその年は17勝も挙げるが、時期が悪く?新人王投票では1位票は地元記者からの1票のみだけだった。最終年の今季は通算3000奪三振(5月)、250勝(6月)のマイルストーンも達成した。積み上げた記録だけでなく、2007年のサイ・ヤング受賞や08年フラッグディールでのブルワーズ移籍後の驚異的なパフォーマンス(実質後半戦だけで11勝2敗、防御率1.65)などのピーク時の印象度も強烈だった。イチロー同様に殿堂入りの可能性が高い。
トロイ・トゥロウィツキ(ヤンキース)遊撃手
デレク・ジーターに憧れ、メジャー昇格直後を除き、全盛期を過ごしたロッキーズ、2015年からのブルージェイズでも背番号「2」。カル・リプケン・ジュニア、ジーター、アレックス・ロドリゲスの系譜を継ぐ打力のある大型遊撃手で、躍動感溢れる守備だけでなく、パワフルな打撃でもファンを魅了しただった。近年は故障が多く、昨季は出場機会なしだった。ヤンキースで「12」を背負った今季も5試合のみで7月に引退を表明した。その時点ではまだ34歳だった。
ブライアン・マッキャン(ブレーブス)捕手
重労働のポジションながら、15年のキャリアで20本塁打以上10度で球宴選出も7度を誇る。アトランタ出身で20歳でデビューしたブレーブスで9年間を過ごした。その後ヤンキースで3年、アストロズでの2年を経て今季は古巣に復帰。クラブハウスリーダーとして若いチームを牽引した。地区シリーズにも全5試合にスタメン出場し、敗退決定後に引退を表明した。まだ35歳だが、捕手としての「15年は長かった」。
デビッド・フリース(ドジャース)三塁手 / 一塁手
11年のメジャー生活で通算打率.277、113本塁打は傑出したものではないが、ポストシーズンヒーローとしてその名は語り継がれるだろう。カージナルス所属の2011年はリーグ優勝決定シリーズと、球史に残る名勝負と評されるレンジャーズとのワールドシリーズの両方でMVPに輝いた。今季も対左投手要員として限られた機会ながら打率.315&OPS1.002と存在感を示した。本人は昨年のワールドシリーズでレッドソックスに敗れた後に引退の意向だったが、チームの要請で現役を1年延長した。
イアン・キンズラー(パドレス)二塁手
12月20日に引退を表明した。通算1999安打での引退は、19世紀末から20世紀初頭に活躍したジミー・コリンズ(1945年殿堂入り)以来だった。30本塁打&30盗塁を2度達成(2009&11年)などレンジャーズで7年活躍した後、2013年オフにタイガースにトレードされたが、その際「レンジャーズは0勝162敗になって欲しい」と呪いの言葉を発し避難を浴びた。日本のファンには、大谷翔平初本塁打の際の「サイレント・トリートメント」で名を売った?8月には初めてマウンドにも上がった。
ブルース・ボウチー(ジャイアンツ)監督
2010年、12年、14年と3度の世界一。通算2003勝は歴代11位(ただし2029敗と負け越し)。実績は監督としての殿堂入り資格をクリアしている。今季限りの勇退を開幕前から表明。チームは春先から低迷し夏のトレード戦線でチームは解体を懸念されたが、なぜかその時期に一時的に快進撃。閉幕まで主力が残ったのはせめてものはなむけだった。年代的に、最先端データよりも人心掌握や勝負のあやを重視するオールドスクールタイプ。筆者が8月にオラクル・パークで観戦したゲームでは、イニング間にボウチーにスマホを操作に挑戦させ困惑させるといういじわるな?映像が流れた。顔つきは好々爺だが、190センチを超える大男で近くで見ると圧倒される。
文:豊浦彰太郎
豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]
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