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先日、2020年の全米野球記者協会(BBWAA)選出の野球殿堂入り候補者名簿が発表された。投票の行方には多くの見どころがあるが、その中でも注目度ナンバーワンはデレク・ジーターが前回のマリアーノ・リベラに続き、史上2人目の満票獲得なるか?だ。投票は現地時間12月31日に締め切られ、結果発表は2020年1月21日だ。晴れの殿堂入りとなった者は、7月26日にニューヨーク州クーパーズタウンで開催される記念式典に招待される。
野球殿堂入りには2つのルートがある。メジャーに10年以上在籍し引退後5年を経た元選手を対象とするBBWAA選出と、BBWAA経由で資格を失った選手(いわば敗者復活戦だ)に加え、監督、審判、経営者などもカバーする時代委員会選出だ。
BBWAA経由の選出では、在籍10年以上の記者(現場での取材から離れている“幽霊部員”はNG)に投票権があり、前回は425名が投票した。一方、時代委員会ルートは16名からなる選出委員による投票だ。いずれも候補者連記制(前者は最大10名、後者は4名まで)で、75%以上の得票率で晴れの殿堂入りとなる。
BBWAA経由では、今回、元ヤンキースの主将で歴代6位の通算安打3465本を誇るデレク・ジーターが、引退後5年を経て新たに候補者に加わった。彼は数字以外にも、2001年ア・リーグ地区シリーズでの伝説的な中継プレイ「ザ・フリップ」などの語り継がれる名場面が多く、5つのワールドチャンピオンリングと14度の球宴選出が示す通り常にスポットライトを浴びる立場にあった。また、薬物疑惑などのスキャンダルとも無縁。正に「鉄板」だ。ジーターに関しては選出されること自体は前提で、関心は冒頭記したように満票を得られるかどうかに集中している。
もちろん、結果はフタを開けてみなければ分からないが、可能性は高いと思う。その理由として、まずは今回の「あまり熾烈でない競争率」が挙げられる。投票は候補者間での相対評価という側面もあるので、この点は無視できない。BBWAAルートは、過去2年連続で4名が選出される空前の有力候補者ラッシュだったが、今回に関しては彼らが「卒業」してしまったため、ジーター以外は「選出間違いないし」と今の段階で言い切れるほどの有力候補者はいない。そのような状況下、敢えてジーターを回避する正当な理由は見当たらない。
もっとも、いつの世にもひねくれ者はいるものだ。前回のリベラまで、どんな有力な候補者も満票の栄誉は得られなかった。古くはあのベーブ・ルース(1936年)がそうで、近年では、通算355勝が歴代8位のグレッグ・マダックス(2015年)も、1990年代最高のプレーヤーとも称されるケン・グリフィー・ジュニア(2016年)も同様だった。
その中で、前回リベラが満票を獲得できたのはなぜか?もちろん、歴代ナンバーワンの通算652セーブや、ポストシーズンでの圧倒的なパフォーマンス(141投球回で防御率0.70)などの文句のつけようがない実績の賜物なのだけれど、実績の卓越性はここに名を挙げた他の名選手達も同様だ。彼の場合は、ここ数年の投票に関する環境の変化も少なからず影響を及ぼしたと思う。それは匿名性の減少で、多くの投票者が積極的に自らの投票結果を公表しているのだ。その傾向の中で、「その他大勢」として「おいた」を企むのははばかれようというものだ。
投票においては、投票者は自らの投票内容の公表に同意するか否か、チェックボックスに記入することによって選択できる。投票結果発表の2週間後にはBBWAAのホームページで、「公表可」を選択した記者の投票内容を閲覧できる。これは2012年から始まり、同年の公表者比率は12%だったが、前回にはなんと80%に達した。
また、結果発表前から投票者達が自らの投票結果を明らかにするサイトの認知度・利用度が高まっている。前回で言えば、投票者の54%が結果発表前に自らの投票内容を同サイトでつまびらかにしている(結果発表後の公表も含めれば84%)。
とにかく、自らの考え方、判断を積極的に公にするのが近年の殿堂入り投票のトレンドなのだ(アメリカのメディアでは基本的に記事は記名式で、もともと各記者は自らの商品性アップのため積極的に自己主張する傾向にあるが)。前回のリベラに関して言えば、この傾向が追い風になった可能性は高い。
一方ネット社会の現実として、ひねくれた自己主張型は徹底的に叩かれる。昨年は12月下旬にマサチューセッツ州の地方紙「テレグラム&ガゼット」のビル・バロウ記者が「リベラには投票しない」と述べた。「投球回数が少ない救援投手は殿堂入りに値しない」というのだ。しかし、彼の主張はネット上で非難に晒された。結局、彼は翻意しリベラに投票した。この事例は、今回ひねくれ投票者が一層発生し難い舞台をお膳立てしたと思う。
そして、リベラが先鞭を付けたことにより、ジーターの満票獲得に対する抵抗感もファンの間でも投票者達にも一層小さくなっていると言えるだろう。
繰り返すが、ジーターが殿堂入りするのは、彼が残して素晴らしい足跡によるもにだ。しかし、満票を得るとすれば、ここに挙げた環境の変化も要因として見落とすことができない。
文:豊浦彰太郎
豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]
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