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野球 コラム 2019年9月13日

「レッドソックス、昨季世界一の立役者ドンブロウスキー社長を解雇」は当然か

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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レッドソックスのデーブ・ドンブロウスキー球団社長が解任された。同球団は、昨季はペナントレースでは108勝という圧倒的な強さでア・リーグ東地区を制し、ポストシーズンでも危なげなく勝ち進み世界一となったが、彼はその編成面での立役者だった。今季のプレーオフ進出はほぼ絶望だが、世界一の昨季も低迷の今季も主力メンバーの構成に大きな違いはない。逆に言えば、来季の巻き返しの可能性も十分だ。しかもドンブロウスキーと球団の契約は2020年まで残っていた。なのに、この時期での解雇にこの世界の非情さを思い知らされたファンも多かったのではないか。しかし、同球団の置かれた環境を分析すると、これは適切な判断だったと言えなくもない。

来季、巻き返しを図るにはレッドソックスには大きな課題がいくつかある。まずは、枯渇したマイナー組織の再生だ。ドンブロウスキーは即戦力の大物を獲得するためには、若手有望株を手放すことを厭わぬタイプだった。クリス・セールを獲得するために超有望株だったヨアン・モンカダや豪速球投手のマイケル・コーペックをホワイトソックスに放出したのはその典型だったし、クレイグ・キンブレル(現カブス)をパドレスから獲得する際にもマニュエル・マーゴら複数のプロスペクトを惜しげもなく交換相手として差し出している。その思い切りの良さは昨季の世界一の重要な要素だったが、今後継続的に勝ち続けるには有望な若手の獲得は急務だ。

しかし、阻害要因になりかねない要素もある。そのクリス・セールはヒジの故障で今季絶望で、トミー・ジョン手術は回避の方向だが今後の健康状態には大いに不安が残る。しかし、彼には今年開幕前に来季から始まる1億4500万ドルの超大型5年契約をコミットしている。セールはすでに30歳で、この契約の行く末に不安は拭えない。

同じ左腕のデビッド・プライスもそうだ。彼のボストンでの4年間は必ずしも期待通りだったとは言い切れない。しかも現在34歳の年齢もありこれから下降線を辿るのは間違いないが、契約はまだ3年9600万ドルも残っている。

マイナー組織のテコ入れのためには、場合によっては彼らが完全に不良債権化する前に、ある程度の年俸負担を覚悟して引取先を探すことも必要になるかもしれない。それは、彼らを獲得したドンブロウスキーにできるだろうか?

また、ムーキー・ベッツやJD・マルティネスの処遇問題もある。ベッツは、来季オフにFAとなる。JDも今季オフにオプトアウト(契約破棄してFA となること)の権利が発生する。2018年MVPで首位打者、シルバースラッガー&ゴールドグラブを受賞したオールラウンドプレーヤーのベッツを引き止めるには、それこそマイク・トラウト(今年3月に12年総額4億2650万ドルでエンジェルスと契約延長)級の条件をオファーしなければならないかもしれない。JDも5年1億1000万ドルの2年目が終わるところだ。再契約には現在の契約以上の内容が求められる(自ら残留を選択する可能性もある)。彼らに超ビッグマネーを提示し引き止めるべきかどうか、これも大変難しいテーマだ。

今後のレッドソックスに求められるのは勝利追求と将来への投資の両立だ。それには、Win Now(とにかく今、勝ちに行く)タイプのドンブロウスキーは必ずしも最適の編成者ではない。

このことが明らかになったのなら再出発は早い方が良い。今年のストーブリーグに出遅れないためには、早期にドンブロウスキーをリリースし新体制をスタートすることは大いに意味がある。球団は今季の残り期間は現在の球団副社長と3名のGM補佐による集団指導体制で乗り切るとしているが、新たな編成責任者の人選はすでにスタートしているのではないか。

そう考えると、彼を、しかもこの時期に解雇するのはそれなりに理解できる。

文:豊浦彰太郎

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豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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