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野球 コラム 2019年5月16日

エンゼルスは、大谷翔平と共に上昇機運に乗って、どこに向かう?

Do ya love Baseball? by ナガオ勝司
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大谷翔平が、帰ってきたー。

日本だけではなく、アメリカの野球界にとっても良いことだ。

日本人びいき? いやいや、そんなことはない。

それは5月7日、大谷が敵地デトロイトでのタイガース戦で復帰した直後の英語のツイッターを見れば一目瞭然だろう。

「大谷に次の打席が回る三回か四回まで早送りできないかな?」とツイットする人もいれば、エンゼルスのユニフォームを着た人がテレビの前でハッピーに踊る映像をアップデー卜して、「大谷がエンゼルスのラインアップに戻る!」とツイートする人もいる。

もちろん、誹謗中傷が溢れているSNS上だ。

「大谷。三振。今すぐ戦力外にしろ」などと、たった1打席の結果だけで、とても不機嫌に書き立てる輩も出てくる。

今さらヤンキースのミゲール・アンドュハーが昨季、大谷に新人王を奪われたと糾弾し、それが無意味であることに途中で気づいて「エンゼルスは底辺のチーム」と話題をすり替えるヤンキース・ファンなども出現する。

それもこれも、「大谷祭り」の内である。

群がる日本人メディアの姿をこっそり撮影して自身のツイッターに載せる記者がいるということは、彼らも結局は、この喧騒を楽しんでいるわけだ。著作権の厳しいメジャーリーグで「あくまで個人のアカウントだから」と弁解しつつも、仕事の一部になっている。

大谷復帰の試合前、16勝19敗(勝率.441)と、ペナントレースですでに遅れを取っているエンゼルス・ファンは大谷に「救世主」的な活躍を望んでいたと思う。

「怪我から復帰したばかりだから、のんびりやってくださいよ」などという考えは微塵もないだろうし、本人もきっと、そんなことはまったく考えていない。

とりあえずは「打者・大谷」の限定復帰なので、彼の復帰前にチーム得点158(ア・リーグ11位)、チームOPS.730(同10位=出塁率.321+長打率.409)と苦戦しているオフェンス面での起爆剤になってくれることを望んでいただろう。

もちろん、たった復帰後10試合も出場していない段階で、大谷の影響云々を語るのはナンセンスだが、現在はチーム得点203がリーグ6位、チームOPS.754が同8位とかなり回復してきており、偶然にしては出来すぎの話ではないか。

そもそも大谷は昨季、104試合367打席で59得点、OPS.925(=出塁率.361+長打率.564)を記録しているので、ファンが期待するのも当然だろう。

実際、「打者・大谷」のメジャー復帰後、エンゼルスは大谷が出場した7試合で5勝2敗と勝ち越し、やれ復帰後初安打だ、初マルチだ、初本塁打だと我々日本のメディアが騒ぎ立ててる内に、エンゼルスは20勝22敗(勝率.476)と勝率5割まで「あと2勝」まで持ち直した。

順位的にはア・リーグ西地区2位のマリナーズ(22勝23敗、勝率.489)に次ぐ3位である。

ただし、この地区は2年連続地区連覇中で今年も優勝候補の首位アストロズ(28勝15敗、勝率.651)が抜けているので、今も今後も順位はあまり関係ない。

目指すは、2枚あるワイルドカード。つまり、勝敗(勝率)を追求するのみである。

目標が小さい? いやいや、5年前の2014年に98勝64敗(勝率.605)で地区優勝して以来、プレーオフから遠ざかっているエンゼルスにいきなり、「何が何でもアストロズを打ち負かして地区優勝しろ」と望むほうが現実離れしている。

過去5年、昨季のヤンキース(100勝62敗、勝率.617)を除いて、ワイルドカード進出チームの勝敗(勝率)は、最低が2017年ツインズの85勝77敗(勝率.525)。最高でも同年ヤンキースの91勝71敗(勝率.562)と「勝率5割台」に留まっている。

しかも、2018年の100勝ヤンキースと、同年に97勝65敗(.599)だったアスレチックス、そして2017年の91勝ヤンキース以外の7チームはすべて「80勝台でワイルドカード獲得」にたどり着いた。

平均では87.6勝である。

それをたとえば88勝としても、エンゼルスは残り120試合で68勝52敗(勝率.566)なら、その「圏内」に達する計算だ。

こう書いてみると、「なんだ、勝率5割台やん」と、なんだかとても可能性があるように思われる。今年も圧倒的な感じが出てきたアストロズが現在、28勝15敗(勝率.651)であることを考えれば、「アストロズほどは頑張らんでもええやん」とさえ思えるから不思議なものだ。

もちろん、そんなに簡単な話ではない(と思う)。

アストロズに手が届かないのなら、敵はア・リーグ東地区2位ヤンキースや同3位のレッドソックス、中地区2位のインディアンス、そして同じ西地区2位のマリナーズらだ。

現在、勝率4割台後半から6割までの間を行ったり来たりするチーム=エンゼルスと同じ20勝台のチームとの競争になる。

大谷復帰で再び、メジャーリーグを見出したファンの皆様にとっては、まずは勝率5割復帰を目指すペナントレースのはじまりであるー。

ナガオ勝司

ナガオ勝司

1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員

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