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他の多くのスポーツがそうであるように、ベースボール=野球もまた、天候に大きく左右されるスポーツだ。
とりわけメジャーリーグは、日本プロ野球のようにドーム球場を本拠地とする球団が全12球団の半分を占めるわけではないので、春先の不安定な天候次第で試合内容や結果、スケジュールなどが変わる。
とくにクリーブランド、デトロイト、シカゴ、ミネソタといったアメリカ合衆国中西部の北部に本拠地を置く本拠地の春は寒く、冷たい雨や雪が降ることもある。
選手たちにとって、厳寒の中での試合は大きなハンデとなり、野手のようにニット帽やフェイスマスクなどを着用できない投手にとっては最悪のコンディションに近くなる。
そんな状況でも試合を強行するのは、メジャーリーグには日本プロ野球のような「予備日」がないからだ。
労使協定により、昔よりは若干増えた「オフ日」だが、中止になった試合をその日に割り振ると、ただでさえ「一週間休みなし」のスケジュールが「二週間休みなし」、あるいは「三週間休みなし」になってしまう。
おまけに全球団の「オフ日」は同じ日ではないことが多く、中止になった試合を「オフ日」に割り当てるのが簡単ではない。
だからメジャーリーグでは、試合中止の決定をギリギリまで遅らせるし、グランドクルーと審判団が天気図(もちろん、レーダーだ)から雲や風向きを予想して待ち続ける。開始時間になっても試合が始まらないこともしばしばあるし、試合途中で中断しても、試合成立のためにひたすら待ち続けるのだ。
ところが4月18日(日曜日)のシカゴは、普段と少し違っていた。
エンゼルスとのシリーズが始まる前から、すでに週半ばの天気予報で悪天候が予想され、雨どころか雪予報が出ていたためか、シリーズ第2戦の17日(土曜日)のデーゲームを終えて帰ろうとすると、警備員から「See you next Friday!」などと声をかけられる。
金曜日とは次週19日のダイヤモンドバックス戦のシリーズの初戦のことだ。つまり、彼らにはすでに「18日の日曜日はどうせ雪で中止になるよ」という気持ちがあったのだ。
実際、日付が変わった頃から、雪が降り出した。18日もデーゲームなので地元での試合とは言え、朝8時には起きる。窓のブラインドを開ければ真っ白。しかも、まだ降り続いていた。
中止が決まったのは、そろそろ家を出ようかという9時過ぎの頃。いつもよりかなり早かった。夕方には止んだが、地元のオヘア空港で結構便が相次いだぐらいだから、正しい決定である。
問題はナ・リーグのカブスにとって、エンゼルスが普段は試合しないア・リーグのチームであること。本拠地がシカゴから時差2時間の西海岸のチームであることだった。
エンゼルスは地理的に、簡単にはシカゴに遠征できないチームなので、同じシカゴを本拠地とするア・リーグのホワイトソックス戦の前後か、シカゴと同じ中時間のア・リーグ中地区のカンザスシティー(・ロイヤルズ)やデトロイト(・タイガース)、ミネソタ(・ツインズ)、そしてクリーブランド(・インディアンス)の遠征の前後に、中止になったカブス戦が組み込まれると思っていた。
あるいはシカゴと同じ中時間でありながら、ア・リーグ西地区に所属するレンジャーズやアストロズ戦の前後に組み込まれると思ったが、意外や意外、数日後、エンゼルスがシアトル(・マリナーズ)遠征を終えた翌日で、次の日から地元でアスレチックス戦を行うことになっている6月3日のオフ日に、カブス戦が組み込まれると発表された。
理由はこうだ。
まず、シカゴが遠征先となるエンゼルスを中心に考えると、4月19日以降、公式戦終了までに16日ある「オフ日」(オールスター休みを除く)の内、カブスの「オフ日」とかぶっているのは4日しかない。そして、そのいずれもがどちらかのチームにとって非常に都合が悪い。
たとえばエンゼルスとカブスは共に4月29日にオフがあり、当日はエンゼルスにとって「シカゴに寄り道するには都合の良い」カンザスシティー(・ロイヤルズ)遠征からホームへ帰る日だ。
ところがカブスはアリゾナ(・ダイヤモンドバックス)からシアトル(・マリナーズ)と西地区の遠征が続くので、わざわざホームに戻るのは難しいというわけだ。そして、同じような理由で6月12日、8月26日、9月23日も都合が悪い(かあるいはチャリティーイベントなどの球団行事が入っているらしい)。
だから、6月2日ということになったのだが、その頃は「打者・大谷」が復帰してしばらく経っているはずなので、カブスの先発ローテーション次第では「ダルビッシュ有対大谷翔平」が実現するかも知れない。
大谷がまだマシン打撃をやってる段階の4月18日の時点では考えられなかったことが、6月2日なら実現可能になるわけだ。
現時点でのカブスのローテでは外れる可能性の方が高いのだが、今後も試合が中止になったり、カブスが「オフ日」を利用して先発5番手を外し、中4日でダルビッシュの登板を増やすような展開になっていけば、決してありえない話ではない。
普段はとても歓迎できない「天候不順」が、「ダルビッシュ対大谷」実現の立役者となるかも知れないー。
ナガオ勝司
1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員
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