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前回は今季限りで引退した選手を紹介したが、今回は今年この世を去った元選手たちの中からこの5人を取り上げたい。
レッド・シェーンディーンスト 6月6日没 享年95歳
19年間の現役生活(主として二塁手)を始め、監督、コーチ、特別アドバイザー等で合計72年間もメジャーリーグ組織で過ごした生涯野球小僧で、うち67年間はカージナルスだった。
選手としてはルーキーイヤーの1945年に盗塁王(26個)、脂の乗り切った1957年には最多安打(200本)を記録し、球宴には10度選出された。また、監督、コーチとしても世界一になっており、メジャーでは比較的稀有な選手・指導者両方で成功した例だ。
実質的な指導者としてのキャリアは、1995年に72歳でカージナルスのコーチ職を辞した時点で終了している。しかし、その後もなんと94歳になる2017年まで、フランチャイズヒーローとしての人気と人柄を買われ、特別アドバイザーとして永久欠番「2」のユニフォームを着て試合前の練習に参加した。スタン・ミュージアルの時代から現代に至るまでのカージナルスのチアリーダーだったのだ。ぼくも、2011年にセントルイスを訪れた際にはご挨拶をさせていただいた。握手すると、とてもやわらかい手だった。
漫画「巨人の星」にカージナルスの架空の強打者アームストロング・オズマの師匠として登場したのは、肖像権が問われなかった古き良き時代ならではだ。
1989年殿堂入り。
ウィリー・マッコビー 10月31日没 享年80歳
バリー・ボンズの場外本塁打が幾度となく飛び込んだ、ジャイアンツの本拠地AT&Tパークライトスタンド後方の入り江(マッコビー・コーブ)に名を残すスラッガー。
長身痩躯で左投げ左打ちのホームラン打者という一塁手らしい一塁手だった。史上最高の選手とも称される通算660本塁打のウィリー・メイズ、20勝以上6度の大エースのホワン・マリシャルとともに1960年代ジャイアンツの「スリーMメン」と呼ばれた。
アラバマ州モービル出身で、メイズ、ハンク・アーロン、オジー・スミスと同郷。通算521本塁打は、テッド・ウィリアムズ、フランク・トーマスと同数で歴代20位だ。
1959年に新人王に選出され1980年を最後に引退したので、50年代から80年代まで4つのディケイド(10年間)でプレーしたことになる。デビューから1973年までジャイアンツに在籍。その間、63年に初の本塁打王、68~69年は連続で本塁打&打点の二冠王に輝いている。36歳になる74年にパドレスへ移籍。この頃から衰えも指摘され出したが、アスレチックスを経て1977年にジャイアンツに復帰すると、39歳ながら28本塁打と復活した。
感情を表に出さず、控えめに話す人物というイメージが強いが、こんなエピソードもある。
1978年のことだ。マッコビーの所属するジャイアンツは開幕から好スタートを切った。要因としては、開幕前にアスレチックスからトレードで獲得した1971年のMVP&サイ・ヤング賞投手のバイダ・ブルーの活躍があった。ある時記者が、チームリーダーのマッコビーにこう声をかけたそうだ。「ブルー獲得は球団史上最高のトレード補強だったね」。するとマッコビーは、淡々とこう返したという。「それは2番目に素晴らしいトレードだね。最高のトレードは私をジャイアンツに呼び戻したことだ」。骨太な自信家だったのだ。
背番号44は1980年の引退ともに欠番に。1986年殿堂入り。
ラスティ・スタウブ 3月29日没 73歳
アストロズ、エクスポズ、メッツ、タイガース、レンジャーズで23年プレーした強打の外野手だった。
1963年にヒューストン・コルト45s(その後アストロズと改名)でデビューした際はまだ19歳だった。設立2年目の弱小球団だったこともあり150試合に出場した。
1969年に初の国外MLB球団として誕生したモントリオール・エクスポズに移籍。スターの少ない新設球団の顔として活躍した。モントリオールはフランス語圏のため、ディープサウスのルイジアナ州ニューオーリンズ出身の彼も自らフランス語を学び、ファンとのコミュニケーションに努めたという。
通算2716安打&292本塁打は好成績だが、殿堂入りを果たすほどのインパクトはない。しかし、在籍1シーズンのみのレンジャーズを除く4球団全てで500安打以上を記録(史上ただ1人だ)し、どの球団に所属しても人気者だった。また、慈善活動にも非常に熱心に取り組んだことで知られている。
クーパーズタウンには縁がなかったが、2012年にカナダの野球殿堂入りしている。ホゼ・カスティーヨ 享年37歳、ルイス・バルブエナ 享年33歳 12月6日没
今月6日に母国のベネズエラで事故死。普通の自動車事故ではなく、彼らの乗るワゴン車を狙う強盗団が予め路上に岩を置くなどしていたことが死亡事故の要因のようだ。容疑者4人が逮捕されている。
バルブエナはメジャー11年のキャリアで114本塁打のスラッガーだった。大谷翔平の同僚として日本でもその名が知られていたが、8月にエンジェルスから解雇されていた。一方の内野手カスティーヨはメジャーではパイレーツなどで5年間プレー。2010年は横浜に、翌年はロッテにも在籍した。
ここ数年、メジャーリーガーの自動車事故死が相次いでいる。昨年1月のヨーダノ・ベンチュラや2014年10月のオスカー・タベラスのケースなどだが、これらはいずれも運転・操縦上の過失によるものだ。カスティーヨとバルブエナの死が強盗被害の延長線上のものだったとすると、同列に語るべきではないだろう。
R. I. P.
豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]
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