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野球 コラム 2018年12月17日

やっぱり「絵に描いた餅」だったレイズ新球場プラン

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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アスレチックスの新球場プランに対して、「夢を語るのはもういい、実行してくれ」と述べたばかりだが、一足先の7月に発表されたレイズの新球場プランは早くも「絵に描いた餅」となった。プラン自体は魅力的だったが、結局資金調達が具体化しなかったのだ。

「ストライク・ツー」の新球場問題

レイズはチームがポストシーズンに進出していた時期も含め、慢性的な観客の不入りに悩まされている。その原因の一つが、人工芝で密閉式ドームの本拠地トロピカーナ・フィールドの魅力のなさだと言われている。

その本拠地のセントピーターズバーグ市との使用契約は2027年まで残っているが、3年前にレイズは2018年12月31日を期限とする新球場用地を探索する許可を同市より得た。それまでに新球場プランを固めることができれば、それがタンパベイエリア地域内であるなら現球場のリース契約をキャンセルできるというものだ。

そして、前述のとおりレイズはタンパベイの対岸にあるイーボーシティに新球場を建設するプランを発表した。それは近未来的デザインで、クリアガラスの固定ルーフをもちサイド部分のガラスウォールは一部開閉式、フィールドとファンの距離が極めて近いという中々魅力的なものだった。

しかし、今回その案を取り下げてしまった。9億ドルとも見積られている建設費用の調達に目処が立っていない、というのがその理由だ。期待する地元財界や投資家グループからの資金提供やネーミングングライツ獲得に具体的な進展がなかったという。

レイズの新球場プランは10年前にも頓挫している。この時は開閉式屋根で帆船を思わせるデザインでこれまた魅力的だったが、やはり資金集めが具体化しなかった。したがって、同球団オーナーのスチュアート・スターンバーグに言わせると、「ストライク・ツーに追い込まれた」状態だ。このままでは、あと9年間夢も希望もない?トロピカーナ・フィールドに縛り付けられたままとといことになりそうだ。

経済効果頼みの球場建設の行き詰まり

難航の背景には公費での球場建設が極めて難しくなっている現状もある。

1990年代から2000年代前半まで、メジャーリーグは新古典主義デザインの新球場建設ラッシュだった。いや、メジャーだけではない。全米でマイナーリーグの球場もすっかり建て替えられてしまった。そして、それらの多くが、税金での建設&低料金での球団へのリースだった。もともとプロ野球チームは地域の財産という考え方が強いのだが、魅力的な新球場建設によって地域経済が活性化されることも期待されていたのだ。

実際それらの多くは、球団には収益増を地域社会には経済の復興と球場周辺の治安改善(荒廃していたダウンタウンの再開発の一環であったケースが多いため)をもたらした。

しかし、野球観戦は国民的娯楽とは言え、全く関心のない人々もいる。公費投入には異論もある。また、いかに魅力的でも全米に雨後の筍のごとく新球場が乱立すると、目新しさもなくなった。すると、オープン初年度はともかく、チームが低迷しているとすぐに動員も頭打ちになることも明らかになった。

また、新球場の経済効果にも疑問が呈されるようになった。仮に野球観戦に伴う消費は促進されても、商圏の人口と可処分所得が一定である限り、家計内のレジャー費の中での消費配分の移動でしかない、という見方が主流になってきたのだ。具体的に述べるなら、家族揃って野球観戦に行く回数が増えても、その分遊園地や映画鑑賞、外食に費やされる費用が減る、ということだ。結局、「球団が儲かるだけ」。そうなると、さすがに公費は投入し難い。

この先の見通しも明るくない

今回の案が頓挫したレイズはセントピーターズバーグに限定して新球場プランを模索するしかないのだが、見通しは決して明るくない。もともと同市を含むタンパベイ地区はNFLのバッカニアーズやNHLのライトニングスを抱えており、野球に関しては2~3月のスプリングトレーニング需要で潤っている(それこそこれには全米から旅行者が訪れ、お金を落として行く。「内需」だけではない)。自治体はもちろん、民間の投資家にしてもこれ以上スポーツ施設を建設する動機には欠けるように思えてならない。

この状況下でも、喜んで(は言い過ぎかもしれない。「なんとか」か)資金を投入し新球場を作れるマーケットがあるとすれれば、それはモントリオールやポートランドなどのMLB誘致にやっきになっている都市ではないか。ロブ・マンフレッド・コミッショナーは32球団制に向けたエクスパンションに大きな意欲を表明しているが、それには「レイズとアスレチックスの新球場問題が解決することが前提」としている。しかし、これはA’sのケースにも言えることだが、問題解決にはエクスパンションに望みを賭ける都市への転出しかないかもしれない。

代替画像

豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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