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野球 コラム 2018年12月5日

「夢を語るのはもういい、実行してくれ」アスレチックスの新球場プラン

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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オークランド・アスレチックスが 新球場プランを披露した。2023年の竣工を目指すという。計画自体は魅力たっぷりだが、「夢を語るのはもう良い、早く実行してくれ」というのが偽らざる心境だ。

今回のプランのポイントは以下の通りだ。

現在の本拠地コロシアムの北西約10キロの波止場ハワード・ターミナルに同球団のフィラデルフィア時代の本拠地、ジャイブ・パーク(1909~54年まで使用)を彷彿とさせるシェイプのフィールドにルーフトップの公園をインテグレートした新コンセプトの新球場を建設する。建設費は公費ではなく完全に球団の自費だという(アメリカでは地方自治体が税金で球場を建て、安く球団にリースするケースが多い、もちろん公費投入には異論もあるが)。

現コロシアムはフィールド部分のみを残して取り壊され、市民のための野球場に姿を変える。その周囲は憩いの場としての公園となり、集合住宅も建設される。

要は、新球場建設のみではなくコミュニティ全体の再開発プロジェクトなのだ。

ここで、アスレチックスの「約束の地」を求めての旅をおさらいしていこう。

まずは、2006年だ。オークランドの南約60キロのフリーモントに新球場を建設する計画が発表された。球場名も「シスコ・パーク」とネーミングライツ付きで公表された。しかし、このプランは環境悪化を懸念する周辺住民の反対で日の目を見なかった。

2009年には、いわゆる「シリコンバレー」のあるサンノゼ(サンフランシスコの南約80キロ)が候補地になったが、フランチャイズ権を有するジャイアンツの反対で実現に至らなかった。MLBにはニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスなど複数球団が本拠地を置く都市があるが、それらは「共有」されている。ヤンキースとメッツのテリトリーは被っているのだ。ところが、ジャイアンツとアスレチックスはベイエリアを共有しているのではなく、きっちり線が引かれているのだ。

これらの「転出失敗」を経て、アスレチックスはオークランド回帰へ大きく舵を切った。2年前には、現コロシアムとハワード・ターミナルの中間にあるレイニー・カレッジの敷地を一部買収し、そこを建設予定地とする計画が発表された。しかし、この案は大学側から一方的に交渉中止を宣告され頓挫してしまった。

その間もコロシアムの老朽化は進み、配管が破裂し下水が流れ出すという出来事もあった。

その後は、「もうコロシアムをそのまま立て直すしかないよ」という声も挙がったが、球場のみ新しくなっても周辺の環境が殺風景なままでは・・・という部分がウィークポイントだった。その意味では、今回のプランでは、魅力的な新球場だけではなく、広範囲に亘る地域の再開発とセットになっているところがポイントだ。

しかし、アスレチックスの新球場問題を10数年間フォローしてきた立場で言わせてもらうと、「夢はもう良い、実行してくれ」というのが正直な印象だ。

ここまで読まれて疑問に思われた方もいるかもしれない。「新球場は自費で建てるとあるが、メジャー有数の貧乏球団のアスレチックスにそんなカネがあるの?借金でかき集めてもそれを回収できるほど利益を出せるのか?」

アスレチックスに限らずほとんどのMLB球団は財務状況を公開していないのだが、想像するに最低でも5~6億ドルと思われる球場建設費の減価償却分を吸収し、毎年の損益計算書上で利益を出すのは同球団には無理だろう。しかし、新球場を持つことにより球団の時価総額は確実に増す。アメリカでは企業を買収しその価値を高め売却し利益を出す、というのがビジネスモデルとして定着している。これはMLB球団の経営とて例外ではない(日本と異なり、オーナーが変わっても球団名が変わらないので分かりにくいが)。

経済誌「フォーブス」が2018年4月に発表した球団価値総額は全球団平均では約16億ドルで前年より7%上昇している。アスレチックスは26位だが、それでも約10億ドルあり対前年+16%だ。これが新球場完成によりどれだけ上昇するかは分からないが、2017年に新球場サントラスト・パークをオープンさせたブレーブスの場合、新球場起工前の2014年は約7.3億ドルだったが、2017年には倍増以上の15億ドルとなっている。

何も現在のジョン・フィッシャー・オーナーが球団売却モードに入っているとまでは言うつもりはない。しかし、自費での球場建設にあたり、将来の球団売却益をアテにし、ロングスパンで旨味があるとしている部分があることは間違いないと思う。

代替画像

豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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