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野球 コラム 2018年8月14日

日本人選手不在ながらメジャー屈指の人気球団レッドソックスは、世界一を目指す

Do ya love Baseball? by ナガオ勝司
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田中将大投手や松井秀喜氏の活躍を見ながらヤンキース・ファンになった人々にとって、ヤンキースが8月2日からの宿敵レッドソックスとの4連戦でスウィープ(シリーズ全敗)されたのはショックだっただろうと思う。

だが、それはメジャーリーグ屈指の人気球団レッドソックスの地元メディアやファンにとっては、それほど驚くようなことではなかった。なぜなら、それぐらい今年のレッドソックスが強いからだ。

レッドソックスは現地8月12日、85勝35敗でメジャー最高の勝率.708でア・リーグ東地区を独走し始めた。現時点で「最後の4割打者」テッド・ウイリアムス外野手がいた1946年以来のシーズン100勝以上の達成が現実的になってきた。今後の展開次第では、イチローがメジャー・デビューした2001年のマリナーズのシーズン116勝の記録にも手が届くかも知れない。

ただし、アレックス・コーラ監督はつい最近、地元紙に「まだ何も成し遂げてないので、今の数字を気にすることはない」と言っている。

その通りだ。プロ野球チームの究極の目標は優勝であり、シーズンで何試合に勝つかは問題ではない。90勝でも100勝でも優勝すれば同じ。ましてや昨季のワールドシリーズ王者アストロズのベンチ・コーチをしていたコーラ監督にとっては、就任1年目のシーズン途中なので現時点での順位などあまり意味がないだろう。

それにレッドソックスは上原浩治投手が胴上げ投手になった2013年以来、ワールドシリーズ優勝から遠ざかっているものの、2015年からア・リーグ東地区を連覇中である。地区3連覇の最大の難敵ヤンキースを自力で後退させた今、過去2年の屈辱=地区シリーズでの敗退の雪辱を果たすことこそが目標であるはずだ。

もしも今の状況のまま、プレーオフに突入すれば、リーグ最高勝率のレッドソックスは一戦必勝のワイルドカード・ゲームを勝ち上がったチームと対戦することになる。今の彼らの戦力を考えれば、その対戦相手がヤンキースになるか、マリナーズになるか、アスレチックスになるかはあまり問題ではない。ワイルドカード・ゲームを勝ち上がったチームを地区シリーズで一蹴し、ア・リーグ優勝決定シリーズでアストロズ(もちろん、マリナーズやアスレチックスの可能性もある)か、中地区を独走中のインディアンスに競り勝たなければ、あまり変わり映えしないシーズンになってしまう。

レッドソックスに「打倒アストロズ」は可能だろうか。

メジャー最高と言ってもいいぐらいの強力打線は、37本塁打&104打点(ア・リーグ最多)、打率.333(同2位)と三冠王の可能性さえある指名打者J.D.マルティネスを中心に、同選手を上回る打率.350でチーム最多の23盗塁のムーキー・ベッツ外野手、エンゼルスの大谷翔平と同じ1994年生まれ(大谷の誕生日7月5日の翌日生まれ)で15本塁打のアンドリュー・べニンテンディ外野手、14本塁打のミッチ・モアランド一塁手、17本塁打のザンダー・ボガーツ遊撃手らを中心とした強力打線がリーグ最多の655得点を叩き出している。

これに16本塁打のラファエル・デバース三塁手と11本塁打のジャッキー・ブラッドリー外野手が加わり、7人もの選手が二けた本塁打を記録していることもあり、リーグ最多の655得点を記録している。その攻撃力は昨季11人もの選手が二けた本塁打を記録し、リーグ最多の896得点を叩き出してア・リーグ西地区を独走で制し、ワールドシリーズ優勝まで駆け上がったアストロズを思い出させる。事実、レッドソックス打線のチームOPS(出塁率+長打率)は120試合経過時点でメジャー唯一の8割台=.805に達しており、昨季全日程終了時点でメジャー唯一8割台=.823に達していたアストロズと似たような数字を残している。

投手陣はどうか。

先発投手陣には過去7試合の先発登板で防御率0.20と調子を上げているクリス・セール、サンディー・レオン捕手と組んだ6試合はなぜか4勝無敗、防御率1.71と往年の持ち味を出すデイビッド・プライスという両左腕エースがいるからだ。

そのほかにも元サイヤング賞投手のリック・ポーセロや左腕エドアルド・ロドリゲスが頼りにならなくても、レイズから補強したネイサン・エオバルディという「隠れ3枚目」がいるし、状況によっては球宴で渋い活躍をしている左腕ブライアン・ジョンソンだって先発できる。救援投手陣も守護神クレイグ・キンブレルとマット・バーンズ、ヘクター・ベラスケスやジョー・ケリーが試合終盤を締める。

王者アストロズは現在73勝46敗、ア・リーグ2位の勝率.618で、ア・リーグ西地区の首位に立っている。ただし、前出の先発マッカラーズJr.に加え、昨季のワールドシリーズMVPジョージ・スプリンガー外野手、イチロー以来となる4年連続シーズン200安打以上&2年連続首位打者で昨季のア・リーグMVPホゼ・アルトューベ内野手らの主力が故障者リスト(DL)に入っており、危機的状況にあるように見える。8月9日からの同地区2位マリナーズとの4連戦では、スプリンガーとアルトューベという「飛車角抜き」で戦ってスイープされてしまった。

それでもアストロズは、まだレッドソックスより上なのではないか。たとえば先発投手陣のチーム防御率はアストロズがア・リーグ最高の3.09に対し、レッドソックスが同3位の3.61となっており、エースのジャスティン・バーランダー(11勝7敗、防御率2.50)と2番手のギャレット・コール(10勝5敗、防御率2.75)という2枚看板に加え、「もう一人の元サイヤング賞投手」左腕ダラス・カイコー投手(9勝9敗、防御率3.52)と、今季キャリア最高級の成績を残しているチャーリー・モートン(12勝3敗、防御率2.88)の2枚もかなり強力だ。右前腕部を傷めて故障者リスト(DL)入りしているランス・マッカラーズJr.が復帰すれば、これはどう見たってアストロズが上である。救援投手陣もそれは変わらない。救援投手陣のチーム防御率は、やはりリーグ最高の3.00で、レッドソックスのそれは同4位の3.35だ。打線は昨季に比べると少し「大人しい」。それでも582得点やOPS.754はリーグ4位であり、2018年シーズン最強のレッドソックスにとっては最大の難敵であることに変わりない。

「(4戦全敗で)とても厳しい週末だった。でも我々は以前もこういう状況にあったし、大丈夫だよ」

マリナーズとの首位攻防戦で惨めな結果に終わったアストロズのA.J.ヒンチ監督は試合後の会見で、いつもと変わらぬ自信に溢れた表情でそう話した。そう、アストロズはすでに「その場所」を知っているし、そこへ行くための「闘い方」も知っている。

レッドソックスの敵はニューヨークにあらず。「敵はヒューストンにあり」である。

ナガオ勝司

ナガオ勝司

1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員

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