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野球 コラム 2018年6月7日

二転三転したヤンキース戦開始時刻、最大の被害者はチケットを購入したファン?

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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一言で言い表すならチケットを買ってくれた「ファン不在」の騒動だった。毎週日曜日夜の全米放送「サンデーナイト・ベースボール」のカード選択権を持つスポーツ専門チャンネルESPNが、7月8日(日)のカードとして翌日にボルティモアで昼夜のダブルヘッダーを抱えるヤンキースのトロントでのゲームをチョイスし、試合開始時刻を当初の東部時間午後1時から同8時に変更しようとしたことに端を発するドタバタの顛末だ。

7月9日(月)のオリオールズ対ヤンキース戦はボルティモアでのナイトゲームだったが、5月31日の同カードが雨天中止になったため、この日に組み入れダブルヘッダーになってしまった。これ自体は仕方ない。天候には勝てないし、余裕のないスケジュールが組まれているMLBでは良くあることだ。

しかし、この後が悪かった。9日が昼夜の2試合であることが決まった後で、ESPNは全国放送のため、トロントでのヤンキース戦をナイトゲームに変更したのだ(莫大な放映権料を払うESPNにはこの権利が契約上認められている)。

しかし、これにヤンキースのアーロン・ブーン監督が噛み付いた。彼はもともとESPNの解説者だったが、「これでは睡眠不足で戦う自軍は不利だし、故障のリスクさえ伴う」というのだ。この主張はもっともだ。8日夜8時試合開始だと終了は11時過ぎと見るのが順当で、それから深夜・早朝のボルティモアへの移動が必要になる。そして、9日は朝10時には球場入りしなければならない。これでは仮眠程度しか取れない。

ブーンの反発はポーズではなかった。ヤンキースはESPNを「出禁」にするとまで言い切ったのだ。その「脅迫」に怖気付いたのではないと思うが、ESPNは8日のゲームを本来のデーゲームに戻すと発表した。どうやら事態の収拾にロブ・マンフレッドMLBコミッショナーも動いたようで、ESPNは世論や選手組合をも敵に廻すことも恐れたのだろう。そして、サンデーナイト・ベースボールのカードには西海岸のエンジェルス対ドジャースの通称フリーウェイ・シリーズが選ばれた。このカードは西部時間午後1時過ぎの開始予定だったが、午後5時(東部時間では午後8時)からの薄暮ゲームに変更されたのだ。両軍とも翌日はゲームが組まれていないのでこの変更は全く問題ない。メデタシ、メデタシだ。

しかし、ここで冒頭の結論に戻る。8日のトロントのゲームのチケットを購入済のファンは「昼 → 夜 → 昼」の変更に振り回されたことになる。いや、「昼 → 夜」のロサンゼルスのファンも同様かもしれない。もちろん、試合開始時間はSubject to changeであることは約款に書かれているはずだ。しかし、それを前提には購入していないはずだ。

代替画像

豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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