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野球 コラム 2018年5月18日

だから、ロビンソン・カノーの薬物規定違反にはウンザリさせられる

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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マリナーズのロビンソン・カノーが、MLBの薬物規定違反で80試合の出場停止処分に服することになった。復帰は8月中旬になる。また、仮にマリナーズがポストシーズンに進出したとしても、カノーに出場権はない。

多くのメディアの報道によると、カノーが陽性反応を示した「フロセミド」はステロイドなどのいわゆるPED(能力増強剤)ではないが、利尿作用を高める効果があるためしばしば薬物使用の隠蔽用として使用されることがあるという。そのため、禁止薬物に指定されている。

カノーは選手組合を通じコメントを出している。それにはファンや球団への謝罪も含まれているが、「これはドミニカのちゃんと免許を持った医師から処方されたものであり、禁止薬物とは知らなかった」というものだ。言い換えれば、知らなかった、悪意はない、医師のミステークということで、これはメジャーリーガーが薬物規定違反で処分に服するケースに毎度繰り返される弁明の典型だ。もし、本当に担当医師の過失なら選手は損害賠償を起こすのが自然だと思うが、そういう事例は聞いたことがない。

考えてみてほしい。カノーのケースだと、彼の今季年俸は約2400万ドル(約26.4億円)で、シーズンのほぼ半分に当たる80試合が処分期間だとすると、それにより彼は1200万ドル近くのサラリーを失うのだ。そして、ポストシーズン出場サラリーも同様だ(マリナーズが地区優勝またはワイルドカードを掴んだ場合、ということだが)。さらに言えば、今回の処分により、現時点では十分可能性ありとされる引退後の野球殿堂入りもかなり危うくなった(今後、投票権を持つ記者たちの歴史観に劇的な変化がない限り)。また、今後ほぼ永遠にカノーには「ベースボールを欺いた男」というレッテルが付いて回るのだ。それなのに医師の過失の責を問わないなんてあり得るのか?

さらに言うと、薬物規定違反の処分を受け入れることの発表タイミングも胡散臭い。カノーは13日のレンジャーズ戦での右手への死球で骨折。復帰まで2ケ月は必要と発表されたばかりだ。また、カノーの陽性反応判明は開幕前のことで、それから今の段階までMLB機構とカノー側の間で異議申し立てに関する討議が行われていたという報道も一部にはある。ということは、カノーは機構から意図的な服用としか考えられない動かぬ証拠を突きつけられた、または偶然骨折で長期間欠場せざるを得なくなったため、回復に向けた治療・リハビリ期間を処分期間に充当した方が総合的に得と判断した、またはその両方の事情があると考えるのはごく自然なことだと思う。

ここにぼくが書いたことは、推測の域を出ない。しかし、各種の状況を総合するとそう考えるのは自然なことだ。また、心の中に芽生えた疑いを払拭することは出来ない。悪さを犯したことを証明することは場合によっては可能だが、過去において何もなかったことを証明することは不可能だからだ。カノーが、そして球界がファンの疑念を完全に払拭するには今後何十年とかけて「何もない」ことを積み重ねていくしかない。

なお、カノーが80試合の処分を経て復帰すると、マリナーズ打線にはネルソン・クルーズ(2013年)、ディー・ゴードン(2016年)、そしてカノー(2018年)と、薬物規定違反者が3人も並ぶことになる。これも凄いことだ。

代替画像

豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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