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大谷翔平の次回登板は、現地4月24日(火曜日)のアストロズ戦になりそうだ。
「どんな試合も大事である」を百も承知で書くが、かなり重要な試合になる。その理由は単純に、アストロズが昨季のワールドシリーズ王者だからだ。
これは大谷にとっても、エンゼルスにとっても、シーズン序盤の大事なテストになる。つまり、「王者相手にどれぐらい戦えるのか?」という最初のテストだ。アストロズ相手に互角以上の闘いができれば、シーズン序盤ということを差し引いてもエンゼルスには現時点で「かなり競争力がある」。できなければシンプルに、現時点では「まだまだ力不足だな」ということになる。
王者アストロズは現在、首位エンゼルスの背後にピッタリと張り付いている。20試合を経過した時点でエンゼルスが13勝6敗、アストロズが13勝7敗と違うのはたった1つの負け星だけなので、並走していると言ってもいい。
2000年にヤンキースがワールドシリーズ3連覇を果たして以来、同シリーズを連覇したチームはいないが、地区優勝やリーグ優勝するチームは少なくない。たとえば2016年のワールドシリーズ王者カブスは現在、ナ・リーグ中地区を3連覇中であり、昨季のナ・リーグ王者ドジャースは現在、同地区を5連覇中である。
そして、今年のアストロズも充分にリーグ優勝や地区連覇を狙える。たとえばパイレーツのエース、コールを迎え入れた先発投手陣は、現在チームの先発防御率2.45とリーグ1位であり、救援投手陣も昨季のクローザー、ジャイルズをデベンスキーと入れ替える不測の事態があって尚、救援防御率2.45とこちらもリーグ1位である。
とは言え、シーズン序盤の多くのチームがそうであるように、彼らも今はまだ本調子ではない。チームの総得点は20試合経過時点でリーグ6位の88点であり、自慢の強力打線がアストロズ(106点)やアスレチックス(104点)の後塵を浴びている。
打線の弱点は結構、分り易い。それは下位打線だ。
「下位打線が打てないなんて、当たり前だろう?」と言うのは、昨季のアストロズには当てはまらない。今年と同じ20試合経過時点で、昨季のアストロズは6番ブレグマンが打率.243、7番グリエルが同.344、そして8番青木宣親(現東京ヤクルト)が同.354と当たっており、上位打線につなぐ役割を確実にこなしていた。シーズン途中に青木をブルージェイズにトレードしてからは一時的に下位打線が機能しなくなったが、それでもシーズンが終わった時点での下位打線の打率は6番が.271、7番が.267、8番が.295、9番が.241と揃っていたし、出塁率は総じて3割以上、アストロズの打最大の武器である長打率に至っては4割から5割あった。
今年はここまで6番に入った全選手が打率.194、7番が打率.156、8番が同.333、9番が.137と8番以外は苦しんでおり、出塁率や長打率もそれに準じて低い。これは現在まで6、7番に入ることの多いゴンザレスとガティスがともに打率1割後半から2割台前半と低迷していることと、9番に入ることの多いフィッシャーが打率1割台前半に沈んでいるからだろう。
では、今季のアストロズ打線は、昨季のような破壊力を失ったのだろうか?
もちろん、違う。前述のように彼らはまだ、「本調子ではない」だけで、いつ目覚めてもおかしくない状況にあるのだと思う。左手の怪我で開幕から長らく欠場していたグリエルの復帰は大きく、彼の代わりに一塁を守ってきた低迷中のゴンザレスは、昨季20試合を過ぎた辺りから10試合連続安打を記録するなどして調子を上げ、最終的には打率3割を記録する活躍を見せたSuper Utility Player=スーパー控え選手だ。問題は彼らが本調子になるのが「いつなのか?」だけだと思う。
もちろん、昨季のワールドシリーズ優勝を支えた1番スプリンガー、二年連続首位打者の2番アルトューベ、攻撃型遊撃手の先鋒を行く3番コレアの3人は初回から息つく暇もないほどのプレッシャーを与えてくる(今年は前出のブレグマンが2番に入ることが多い)。だが、アストロズ打線が本当にその破壊力を発揮するのは、昨季のように下位打線が上位につなげる役割を果たした時だ。
打者としても大事な役割を果たしているが、やはり、エンゼルスにとって気がかりなのは投手・大谷である。今はまだ5人いる先発投手の一人にすぎない彼が、二枚看板のリチャーズやスカッグスをしのぐエース級投手となれるかどうかは、今後の登板内容と結果次第だ。
そのための最初のテストが、アストロズ戦である。投手として破壊力抜群の強力打線を分断してエンゼルスが描く「アストロズ攻略プラン」をいかに遂行するか。自分の調子に関係なく、ゲームを作り、チームに勝つ可能性を残して降板することが何よりも大事だ。急角度のラーニング(学習)・カーブを描きながらメジャーリーグに適応している大谷にとって、注目すべき一戦である。
ナガオ勝司
1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員
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