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野球 コラム 2018年4月18日

ロビンソン・デーに今なお根強い人種問題を再認識したい

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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現地時間4月15日は毎年恒例のジャッキー・ロビンソン・デーでした。今年は、エンジェルスの大谷翔平が投手として先発予定だったカンザスシティでのロイヤルズ対エンジェルス戦を含め計6試合も悪天候で中止になってしまいましたが、開催されたゲームでは全員がロビンソンの現役時代の背番号42を背負いプレーしました。

1947年のこの日にカラーバリアを破ってブルックリン・ドジャースでデビューしたロビンソンは、間違いなくメジャーリーグの歴史上最も重要な人物の1人です。彼の偉大さはいくら言葉を費やしても表現しきれないのですが、近年はもはや神格化された感もあり、そのためロビンソン・デーに彼を賞賛することが白人社会による免罪符となっているようにも思えます。

また、彼の登場はある意味ではマイノリティたちの戦いの始まりでもあったのですが、遠く離れたわれわれ日本のファンは、「彼がカラーラインを破ってくれたおがけで現在の人種的多様性がある」と、彼のデビューをMLBの人種問題の終焉として捉えがちなのは気になるところです。

もちろん、残念ながら実態はそうではありません。昨年5月頭にオリオールズのアダム・ジョーンズが、ボストンのフェンウェイ・パークで観客に人種的侮蔑行為を受けたとメディアにぶちまけ波紋を広げたことは記憶に新しいことです。

そして、今年もこの時期に別の人種問題が物議を醸してます。

それは、クリーブランド・インディアンスの先住民族をあしらったマークを取り付けたキャップに関してです。この図柄は「ワフー酋長」と呼ばれ、赤い顔にむき出しの歯、羽付きヘアバンドというその昔白人から見たステレオタイプな先住民のイメージがマンガチックかつ野蛮に描かれたものです。そのため、インディアンスは2019年以降、この時代錯誤なマークを使えないことになっており、キャップやユニフォーム袖のワフー酋長は「C」のマークに切り替えられつつあります。

しかし、1947年から使用されているワフー酋長はインディアンスのシンボルとしてファンの間に定着していることも事実で、このマーク付き商品は球団にとってはグッズ販売での稼ぎ頭でもあります。そのため、「使えなくなる前にしっかり利用せよ」とばかりに、こともあろうか、ジャッキー・ロビンソン・デーの記念キャップ(サイドにロビンソン・デーのパッチが縫い付けられています)の中央にワフー酋長があしらわれているという矛盾した状況が起きたのです。

この問題の本質は、マーチャンダイジング上のことに留まりません。

インディアンスの地元開幕戦では、球場の周辺で先住民族差別に反対する人たちがこのマークの使用廃止を声高らかに訴えましたが、彼らの前を通過し球場入りするファンの中には、逆に彼らを中傷する言葉を投げ返す者もいたようで、その様子は動画投稿サイトでも確認できました(そうではないファンも多かったとは思いますが)。

われわれ日本のファンにとって大事なのは、今なおアメリカ社会やその野球界にとって人種問題は大きな十字架であるということをしっかり認識することです。ジャッキー・ロビンソン・デーはそのために意義深いと言えるでしょう。

代替画像

豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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