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野球 コラム 2018年3月28日

開幕前にこのオフを総括「爆買球団の消滅が市場全体の競争を弱めた」

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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ついに2018年MLBが開幕します。今回は、本来ならば1ケ月以上も前に論じられるべき(終わっているべき)ストーブリーグの総括を、FA市場にフォーカスし述べて見たいと思います。

ジェイ・スポーツでMLBをご覧になるファンならご存知の通り、このオフはFA市場が空前の冷え込みを見せました。ストーブリーグ幕明けの時点では総額で軽く1億ドルを超える契約を得ると見られていたマイク・ムースタカスは、自ら蹴ったクオリファイング・オファー(1740万ドル)の1/3にも及ばない1年550万ドルでロイヤルズに帰らざるを得ませんでした。1年前にはロッキーズの3年4500万ドルを蹴ってFAとなったカルロス・ゴンザレスも1年500万ドルで再契約しました。いずれも、締結は3月にどっぷり入ってからのことです。売れ残ってしまい、当初の希望をはるかに下回る条件で契約せざるを得なかった有力FAは、彼らのみではありません。ダルビッシュ有とカブスの6年1億2600万ドル以上を要求していたジェイク・アリエタ(カブスからFA)は3月12日になってようやくフィリーズ契約したのですが、その条件は3年7500万ドルで契約した。5000万ドル以上を手にすると予想されていたランス・リン(カージナルスからFA)なども同日に1年1200万ドルでツインズと契約しました。

このようなFA市場停滞の理由としては一般的には以下が挙げられています。

まずは「2018年問題」です。今年のシーズン終了後には、ブライス・ハーパーやマニー・マチャドらの超大物がFA権を得ます。彼らを獲得したい球団はその前に高額な長期契約をコミットすることを回避する傾向にあるというものです。

この2年でカブスやアストロズが世界一となったことも指摘されています。彼らは徹底的なチームの解体(タンキングと呼ばれます)&有望な若手の獲得・育成で栄冠を手にしたのです。そして、それに伴いFA依存のチーム強化に疑問が呈されるようになりました。

また、近年FA獲得の代償としてドラフトでの上位指名権を失うことを忌避する傾向が強まる傾向にありました。

そして、最後には2016年暮れに締結された新労使協定により戦力均衡税が強化されたことです。

これらは、それぞれ大なり小なり影響を与えていますが、1年前のオフにはそれなりに活発にFA市場が動いていた(勝ち組と負け組の明暗ははっきりしていましたが)ことを考えるとどうでしょう。むしろ、ドラフト指名権喪失のリスクなどは現行の労使協定ではそれ以前に比べ低められています。

したがって、2017~18年オフ固有の事情である戦力均衡勢税の強化(最大で超過額の95%を納めねばなりません)がもっとも影響を及ぼしているように思えます。

このことはヤンキースなどの超富裕層が散財を控えるようになったというだけに留まりません。以前はヤンキースがもの凄い条件でFAを次々にかっさらうとレッドソックスなどのライバル球団もそれに追随し、これが市場全体の競争を刺激していました、と私は見ています。その競争がこのオフは弱まったのです。

「大物FAこそ獲得していないが超超高額契約のジャンカルロ・スタントンをトレードで獲得したではないか」という指摘もあるかもしれません。どこが「ワイズスペンディング」(この言葉もう古い?)なのか、ということです。しかし、「スタントンはハーパーより安い」という見方もできます。ハーパー獲得には総額4億ドルの10年契約が必要とも言われています(代理人のスコット・ボラスが吠えているだけ?)が、それに比べればスタントンの残り10年(2027年まで)の2億9500万ドルも安上がり?と言えなくもありません。それに、ヤンキースはスタントン獲得に当たり、ソコソコ高年俸(残2年2271万ドル)のスターリン・カストロを交換相手として放出し今季の年俸総額上昇の中和に努めています。

基本的に、FA相場の高騰は競争があってこそです。その証拠に、冷え切ったと評されるこのオフですら、近年その価値が再認識されている救援投手はウェイド・デービス(ロッキーズ)、ヘクター・ロンドン(アストロズ)などが意外なまでに好条件を手にしましたし、平野佳寿(Dバックス)や牧田和久(パドレス)もそれぞれ2年600万ドル、2年400万ドルを手にしているのです。供給量以上の需要があったと言うべきでしょう。

ところが多くの有力FAは、全体の競争が鈍化する中で「相場は年々高騰するもの」という前提に立った条件に固執しました。その結果、時が経過しスプリングトレーニングの時期に突入し競争原理が益々効かなくなってしまい、ある意味では屈辱的な条件を受け入れざるを得なくなってしまいました。

「経済原則」を改めて認識させられたこのオフでした。

代替画像

豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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