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バレーボール コラム 2025年5月30日

決勝で涙を飲んだジェイテクトSTINGS愛知の岩本大吾。「最高のメンバー」と交わした熱い抱擁と次なる誓い

SVリーグコラム by 坂口 功将
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岩本大吾(ジェイテクトSTINGS愛知)

バレーボールの「大同生命SV.LEAGUE(SVリーグ)」は、2024-25シーズンが閉幕し、さっそく各チームで次のシーズンに向けた動きが見られる。それは好成績を残したチームも例に漏れず。準優勝の男子・ジェイテクトSTINGS愛知はセッターの関田誠大、オポジットの宮浦健人、ミドルブロッカーの村山豪ら主力メンバーが退団を発表した。

大同生命SV.LEAGUE

とはいえ、その面々が放った輝きは色褪せない。特に今季のSTINGS愛知はミドルブロッカーの高橋健太郎(高ははしご高)、リベロの小川智大といった日本代表勢に加えて、リカルド・ルカレッリ・ソウザ(ブラジル)とトリー・デファルコ(アメリカ)という世界屈指のアウトサイドヒッターが入団。

ドリームチームといえる顔ぶれは、レギュラーシーズンこそ故障に見舞われるなど苦しんだものの、チャンピオンシップに入ってからは、抜群のチームケミストリーを武器にファイナルまで駆け上がった。

だが、サントリーサンバーズ大阪とのファイナルはGAME1で3時間半に及ぶ死闘を繰り広げた末に敗れ、GAME2は相手に終始ペースを握られる。目指したSVリーグ王者には、あと一歩及ばなかった。

大同生命SVリーグ チャンピオンシップ 2024-25

そのGAME2を終えて人目をはばからず大粒の涙を流し、ミックスゾーンに姿を現したのは入団2季目のミドルブロッカー岩本大吾。嗚咽を漏らしながら、その胸の内を明かした。

「もう、このメンバーでできるのが最後やというのが…、何よりも寂しくて。もちろん、勝って終わりたかったですけれど、いい試合はできたと思うので」

感情のおもむくままに目を真っ赤にするのは、学生時代から見られた彼の姿であり、社会人になっても変わらず。それほどまでに、溢れる思いがあったのだろう。

仲間とともに今季を駆け抜けた岩本大吾

「最高のメンバーで、何もできない僕を、この決勝で得点をできるぐらいまで引き上げてくれたので。本当に感謝しかないです」

実際、ファイナルでは出場機会がめぐってきた。GAME2の第2セットは早々からサントリーに連続失点を許し、ルカレッリのアタックで追い上げるも、デファルコがブロックシャットを浴びると、続けざまに高橋のクイックがスパイクアウトとなり、4-11と苦しい展開に。

そこで高橋に替わって投入された岩本は、そのファーストプレーでクイックを決めきる。

「もう、やるしかなかったですから。点差も開いて、チームも少し沈んでしまっていたので。何か1つでもひっくり返すことで、次のセット、次の戦いに持っていけるようにしたいとだけ意識していました。

コンビの練習はしっかりと調整できていました。(関田)誠大さんがいいところで上げてくれたので、あとは打つだけでした」

ひとまずは連続失点の流れを断ち切っただけでも、十分に努めを果たしたといえた。

もっとも岩本自身、今季はそうした起用法が多かった。同じポジションには高橋、村山というトップレベルの選手が並び、身長210cmの饒書涵(ラオ・シュハン/中国)もいる。

選手層の厚さは、チーム内競争の過酷さを意味していた。それでもコートに立てば、持てる力を発揮する岩本を称えたのは、オリンピック金メダリストのルカレッリだった。

「このシーズン、自分は先発出場よりも途中でコートに立ったり、ときには仲間のアクシデントがあった際に入るようなケースが多かったんです。そのときに彼(ルカレッリ)はいつも『よくやった』というふうに声をかけてくれました。でも、僕からしたら周りの皆さんが本当に『やってくれた』という感じなんですけどね…」

ファイナルのGAME2直後も、ルカレッリは岩本を強く抱きしめていた。そこで感謝の言葉を受け取ったときに、岩本の涙腺は決壊したのである。

来季の活躍を誓う岩本大吾

「このシーズンが始まったときは、こんな経験ができると思っていなかったので。繰り返しになりますけれど、全員の気持ちでいっぱいです」

けれども、もうこのメンバーで戦うことが叶わないのが現実だ。この先はときに、一緒に過ごしてきた仲間が強敵として立ちはだかることだってありえる。

「チームを去ったメンバーに、なんて言うかな…後悔させるぐらい(笑)。残っているメンバーでまた次は勝ちたいなと思います」

それが、来たる2025-26シーズンに向けた岩本の活躍宣言。そう口にしたときはもう、すっかり涙は消えていた。

文/写真:坂口功将

坂口 功将

スポーツライター。1988年生まれ、兵庫県西宮市育ち。
「月刊バレーボール」編集部(日本文化出版)で8年間勤めたのち、2023年末に独立。主にバレーボールを取材・執筆し、小学生から大学生、国内外のクラブリーグ、そしてナショナルチームと幅広いカテゴリーを扱う。雑誌、ウェブメディアへの寄稿のほか、バレーボール関連の配信番組への出演やイタリア・セリエAの解説も務める。

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