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まさかの骨折で連覇にストップがかかったキングズベリー。カムバックを待ちたい
'21シーズン序盤戦の北欧ラウンドが終了した。今季はいろいろな意味で“何が起こるか分からない”シーズンだが、早くもまさかの事態が発生した。W杯10連覇を目指していた“絶対王者”ミカエル・キングズベリー(カナダ)が負傷欠場となったのだ。
開幕戦会場となった、ルカ(フィンランド)でのトレーニング中に、エアのランディングに失敗し脊椎を骨折したのである。脊椎の骨折というのは選手生命に関わるものだが、幸い神経に影響がなかった模様。本人は復帰を前提にとしているとのことでまずは一安心だ。
絶対王者が不在によりプレッシャーが高まったのが、2シーズン連続総合2位の堀島行真だろう。ナンバー1を目指す堀島にとってはキングズベリーとの直接対決抜きでのシーズン制覇は本意ではないだろう。だが、ここで総合2位以下に甘んじては、いつかカムバックする好敵手に合わせる顔がない。なんとしても、総合優勝を果たしたいところである。
選手・関係者はマスク着用も レースの中身はコロナの影響なし
これまで行われた3戦を振り返ってみたい。まず、ルカで行われた開幕戦(モーグル)での優勝者は、男子:堀島、女子:ペリーヌ・ラフォン(フランス)という順当な結果となった。
世界的なパンデミックにより、国によってオフシーズンの練習環境に差が生じたはずだが、開幕戦を観る限り、技術的な部分で影響はとくに見られなかった。むしろ、ターンテクニックを向上させている選手が目立ったほど。日本の女子選手もその典型だ。ただし、選手や関係者がマスク着用、本来なら自国五輪を控えて張り切っているはずの中国の選手のエントリーがないなど、いつものW杯とは違う風景であったのは確かだった。
そのほか、開幕戦でのリザルト的な特筆点は、男子で2位がタデ・マルコ(スイス)、3位がルドビッグ・ジャルストロム(スウェーデン)といった表彰台の常連ともニューカマーともいえない選手達が表彰台(実際はソーシャルディスタンス確保のために従来のような台は設置されていない)を記録したことである。これは、今季の大乱戦を予感させるものだ。
ラフォンが貫禄の3連勝。 堀島はスウェーデンでまさかの失速
続く、イドレ(スウェーデン)でのモーグル、デュアルモーグルの2連戦は、またまた“何が起こるか分からない”展開となった。
まず、初日の第2戦(モーグル)で堀島がスーパーファイナルに進出も、第1エアのランディングでのミスが影響し、第2エア後に転倒で表彰台を逃す。また、ニック・ページ(アメリカ)という18歳の新鋭が初表彰台をゲットするというサプライズもあった。
男子優勝は2シーズン連続で総合3位のベンジャミン・カベット(フランス)。'19シーズンのレイクプラシッド大会以来のVだった。
女子は昨シーズンの開幕戦で2位デビューを飾り、総合7位という戦績を残した川村あんりが2位に。もはや、日本チームのみならず、世界のトップクラスにいることを証明した。
そして、2日目の第3戦(デュアルモーグル)もまた波乱の展開だった。堀島がクォーターファイナル(準々決勝)でまたも転倒して敗北。そして、ベスト4に残った女子は、ラフォン、テス・ジョンソン(アメリカ)、ジャエリン・カウフ(アメリカ)、そして川村。男子は好調のジャルストロム、新鋭のジョーダン・コーバー(カナダ)、マット・グラハム(オーストラリア)、ブラッドリー・ウィルソン(アメリカ)という顔ぶれだった。
カベットは嬉しい優勝。ただし、開幕戦と第3戦の戦績は今ひとつで、総合順位は6位
注目の川村はセミファイナル(準決勝)でカーフに敗れたものの、スモールファイナル(3位決定戦)でジョンソンに勝利し、3日連続の表彰台。ビッグファイナル(決勝)ではラフォンがカウフを下し3戦連続優勝。今季も頭一つ抜けた存在であることをアピールした。
男子はジャルストロムとグラハムがビッグファイナルに進んだが、濃霧によりスモールファイナル以降が実施不可能に。その結果、リザルト上は1位がジャルストロムとグラハム、3位がウィルソンとコーバーとなった。ただし、ポイントは1位の2名が80点、3位の2名が50点という、それぞれ2位、4位の点数が振り分けられた。
ジャルストロムが堀島と並ぶポジションに 川村はすでに表彰台が定位置か?
第3戦終了時点で、特筆すべき存在はまず、開幕戦と第3戦で表彰台をゲットし、現在総合2位にいるジャルストロムだ。これまで表彰台経験は1度しかなかった27歳の選手が今季は絶好調なのだ。もし、第3戦のビッグファイナルが行われ、勝っていれば総合1位になっていたことになる。過去にもドミトリー・ライヘル(カザフスタン)が20代の後半になって表彰台の常連に浮上した例もあるので、この選手が今シーズンの優勝候補の一角となったとしても不思議ではないのだ。
女子はやはり川村の存在が光る。彼女は斜面対応力が優れているのか、あまり苦手そうなコースがない。これはまさに、総合優勝を狙う選手に求められる特性である。川村こそ、“ポストラフォンの最右翼”と断言してもいいだろう。
3戦中、表彰台に2度上がったのはジャルストロムだけ。W杯でのキャリアは11シーズン目である
堀島は現段階でイエロービブを身に着ける立場であるが、2戦連続で表彰台を逃したのは痛い。2月の北米ラウンドでの雪辱に期待したい。
秋田たざわ湖大会がキャンセル 残る5戦は濃密度120%に
最後に、今後の展望についてまとめたい。まず、残念なお知らせがある。3月に2戦が予定されていたW杯秋田たざわ湖大会のキャンセルが発表された。大会組織委員会はギリギリまで開催を模索していたというが、新型コロナウイルスの感染拡大により断念せざるを得ない状況だったようだ。なお、引き続き、'22シーズンの大会開催については準備を進めていくという。また、北京五輪のプレ大会として中国で行われる予定だったフリースタイルの世界選手権も中止が決まった。
もともとスケジューリングされていた、ロシアでの大会がシーズン前にキャンセルとなっていたこともあり、残された今季のW杯は、2月のディアバレー2戦とカルガリー2戦の北米ラウンド4戦、そして、3月のアルマトイ(カザフスタン)での最終戦のみという寂しい状態になってしまった。今後の大会も状況次第ではキャンセルとなり、その時点のランキングがシーズンの総合順位となることもあり得る。
また一方で、各国とも今季は北京五輪代表選考の対象シーズンのはずである。つまり、総合上位と五輪出場を狙う選手には、失敗が許されないシチュエーションであり、一戦ごとの価値はこれまでより格段に上がっているのだ。
2月上旬開催の北米で再開予定のW杯 3つの見所をチェック!
世界選手権の中止でW杯に集中する堀島と川村。2人が北京五輪の有力メダル候補であることに変わりはない
現状で北米ラウンドの見どころは次の3つだ。
まず、男子の優勝争いである。現状では、堀島優勝の可能性が大……とは断言できず、その堀島と筆頭に混沌とした状況となっている。過去3戦の表彰台メンバーがバラバラであり、残る5戦で大乱戦となることも予想される。
北京五輪を前に、各国の若手がブレイクしているのも楽しみな要素。川村あんり1人ではなく、女子はアナスタシア・スムルノワ(ロシア)、ヴィクトリア・ラザレンコ(ロシア)、カイ・オーエンス(アメリカ)、男子は前出のニック・ページ(アメリカ)、ニキータ・アンドレフ(ロシア)ら21世紀生まれの選手がいよいよW杯の第一線に揃ってきたのだ。こうしたニューカマーたちが勢力図を一気に塗り替える展開となれば面白いだろう。
もうひとつの見どころは、日本の女子チームのサバイバルレースだ。川村以下、滑りの質を向上させた冨高日向子(8位)、パワフルな滑りが魅力の住吉輝紗良(10位)とランキングトップ10内に3名が名を連ねている。また、昨季は2位表彰台に上がった星野純子、スーパーファイナル進出歴のある井原遙香、柳本理乃と選手層が厚い。このメンバーで来季の序盤戦まで五輪出場権を争うことになる。今季はラフォンが強さは圧倒的で、女子は総合優勝争いに波乱はなさそうだが、日本の女子同士の戦いを追うだけでも十分に楽しめるだろう。
1月に大会がなく、しばらくブランクが開くのは寂しいが、まずは、2月4日のディアバレーでの第4戦が無事に行われることを祈ろう。
STEEP
スキー・スノーボードの本質を追いかけるWEBメディア。90年代からフリースタイルスキーを追う編集部による、モーグルW杯の見どころを紹介。サイトでは様々な情報を更新中。https://steep.jp/
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