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昨季は川村あんりの2位表彰台というビッグサプライズがあった開幕戦ルカ大会。果たして、今季はどんなスタートとなるのか?
今季のFIS ワールドカップは、パンデミックの影響により開催そのものが不安視されたが、各種目とも例年と変わらない規模でのスケジュールが発表された。
アルペンやジャンプなどは11月から始まっており、モーグルも12月11日から予定される恒例のフィンランド・ルカでの開幕戦から、全9戦というラインナップだ。
また今季は、2月18日から中国のタイウー(張家口市)でフリースタイルの世界選手権が予定されている。これは、北京五輪の1年前に同会場で行われる、本番に限りなく近い前哨戦となり、選手たちはここをシーズンの山と考えるだろう。そして、W杯序盤戦は各国の世界選手権出場の選考レースであり、また、それ以降も含め全戦が来季に迫った北京五輪の出場枠を争う場となる。
さて、今季のW杯について展望するにあたり、やはり新型コロナウイルスの感染拡大による多方面への影響について触れない訳にいかない。
まず、特に大きく影響したと考えられるのが、オフシーズンの練習環境である。国外への渡航に制限が生まれたことで、特に北半球の選手は十分な雪上トレーニングをできなかった……という可能性は大いに有り得る。これは、国ごとの感染拡大状況、自然環境、地理的環境によっても異なるだろう。
一方で、雪上練習ができないことで、ウォータージャンプやトランポリンなどでのエアのトレーニングに注力し、これまでより難度の高い技に挑んでくる選手が続出したとしても不思議ではない。
コロナ禍にあって何があってもおかしくない展開が続く
もう一つ、大きな影響が出そうなのが、やはりスケジュールの面だ。昨季は、スウェーデンで開催予定だった最後の2戦は感染拡大を理由に中止になっている。また、今季は当初発表されたロシアでの大会が早々とキャンセルとなった。つまり、今後もW杯は必ずしも全戦行われるとは限らないということだ。フィンランド、スウェーデン、カナダ、アメリカ、日本、カザフスタンでのW杯開催が予定されているが、これら6カ国はそれぞれ状況が異なり、今後も何がどうなるかは誰も予想できない。
したがって、選手たちはそれを前提に心身のコンディション作り、モチベーションの維持が必要になってくる。特に総合優勝を狙う選手は、いつシーズンがカットアウトになってもおかしくないつもりで戦わなければならないだろう。
もちろん、カザフスタンで予定されている最終戦まで無事に全戦が行われ、そこで世界トップレベルのパフォーマンスの競演がマックスで展開されるに越したことはない。そうなることを祈りつつ、以下はポジティブに、フルスペックのW杯が行われることを前提に展開していきたい。
キングズベリーの10連覇はあるのか? 堀島がそれを阻むのか?
世界選手権、そして五輪の舞台となる中国タイウーで行われた昨季のW杯MO表彰台。ここで勝ったことが堀島には大きな自信となった。
かつて、男子モーグルの常勝チャンプたちには、キャリアの後半にその存在を脅かす急成長の若手が登場し、追撃を受けている。
ヤンネ・ラハテラ(FIN)にはデイル・ベッグ-スミス(AUS)が、デイル・ベッグ-スミスにはアレキサンダー・ビロドウ(CAN)が、アレキサンダー・ビロドウにはミカエル・キングズベリー(CAN)が……といった具合である。
だが、W杯9連覇を果たしたキングズベリーに関しては、彼を王座から追い落としそうな勢いと、カリスマ性のある若者がなかなか登場しなかった。だからこその連続優勝なのである。そして、いよいよ前人未到、空前絶後の10連覇がかかったシーズンを迎える。
そんななか、昨季、ただひとり絶対王者に勝っている選手が堀島行真だ。10戦中、キングズベリーは7勝で堀島は3勝。つまり、他に優勝した男子選手は存在しない。実際は昨季もトータルで300点以上のポイント差があり、50/50のライバル関係ではないものの、現状で打倒キングズベリーを果たせる可能性を有した唯一の選手が堀島であることは確かなのだ。
昨季、キングズベリーはどの大会でも、まるで同じ映像を繰り返して観ているかのような滑りを見せた。だが、実際は同じ滑りをしているのではない。雪質、コブの形状、固さなどコンディションの異なる各大会の斜面にいずれも対応し、その都度、違った技術を用いてベストなランを見せているのである。彼の凄さはその引き出しの多さにある。舞台を選ばないのだ。そのため、堀島に負けた3戦でもすべて2位となり、確実に80ポイントを稼ぐことに成功している。
その点、堀島はシーズン中に何度か、どうしても100%の力を発揮できない斜面に遭遇する。昨季は予選落ちもあった。ここがキングズベリーとの大きな差だ。11月5日に行われた記者会見では、「ランキング1位を狙いたい」と発言した堀島が、その目標を果たすには、この差を埋める、つまり、どのレースでもベストな滑りをできるようになるしかないのだ。
W杯総合優勝を目的としていることを公言する堀島。有言実行のシーズンとなるか?
もちろん、絶対王者の背中が視界に入った今、それを念頭にオフのトレーンングに挑んでいたのだろう。緊急事態宣言中には、痛めていた腰を休ませることができたというプラス面もあったという。バージョンアップを遂げて新しいシーズンを迎える堀島に期待したい。
すでに世界のトップグループ入り。川村あんりはどこまでバケるのか?
女子はつい数シーズン前までは、誰が優勝してもおかしくない群雄割拠の状況だったが、ここ3シーズンはペリーヌ・ラフォンが連続優勝している。ラフォンも大きな失敗がほとんどないため、全戦で高ポイントをゲットし続け、結果的に他選手と大きく差をつける。
たとえば、昨季は総合3位のジャエリン・カーフ(USA)は単一大会で優勝する実力を持っている。実際、過去に優勝経験は何度かある。しかし、攻撃的なターンが災いしてか失敗もあり、上位に残れないことがたびたびある。彼女は一発勝負の五輪や世界選手権ではタイトルを狙えるだろうが、従来のままなら、シーズン戦であるW杯で総合優勝をするのは難しいだろう。これは、ジャスティン・デュフォー-ラポイント(CAN)やユリア・ギャリシェバ(KAZ)にもいえることだ。
総合優勝の条件が、高いレベルでの安定性だとした場合、昨季の総合リザルトを眺めると、ラフォン以外にもそれを満たしている選手がいる。総合2位のジャカラ・アンソニー(AUS)である。彼女は10戦中2位3回、3位1回、4位3回、5位1回と、ラフォンには劣るが高確率で上位に名を連ねた。ジャッジからの評価も上がっており、たとえばエアの進化などなんらかのレベルアップの要素があれば、逆転も十分にあるのではないだろうか?
この観点で、昨季、初出場となる開幕戦で2位という鮮烈デビューを果たし、総合7位となった川村あんり(JPN)も要マークといえる。彼女は表彰台こそ1度だけだったが、以後も全戦で決勝進出。日本の歴代女子選手がなかなか残せないでいる、“シーズンを通した安定した戦績”を、デビュー1年目であっさりものしている。まだ16歳の若さであり成長の幅は広い。川村が、どこまで伸びるのか? これは今季の大きな注目点となるだろう。
川村に限らず、住吉も躍進、星野も健在と平昌五輪の前後は低調だったのが嘘のように勢いのある日本女子
日本のモーグルファンには楽しみな要素が多い'21シーズン、このコラムではその動向を逐一追っていきたい。
STEEP
スキー・スノーボードの本質を追いかけるWEBメディア。90年代からフリースタイルスキーを追う編集部による、モーグルW杯の見どころを紹介。サイトでは様々な情報を更新中。https://steep.jp/
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