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深めのコブに苦しむ選手が多かった開幕戦では、女子に大きなサプライズがあった。川村あんり──W杯初出場の15歳が、まさかの2位表彰台に上がったのだ。
2000年代以降の五輪金メダリストやW杯総合優勝者のなかで、初出場のW 杯で表彰台に上がったのは上村愛子だけ(’96季最終戦マイリンゲン大会で3位)。誰しも1度しかないチャンスで、カーリー・トゥロー(NOR=引退)、ジェニファー・ハイル(CAN=引退)、ハナ・カーニー(USA=引退)、ジャスティン・デュフォー・ラポイント(CAN)、クロエ・デュフォー・ラポイント(CAN)、ブリトニー・コックス(AUT)、ペリーヌ・ラフォン(FRA)らが果たせなかった偉業を、川村は上村を上回る順位で達成したのである。一般メディアから「愛子越え!」と煽られることになるのは当然なのだ。
川村は平昌五輪銅メダリストの原大智(今季は活動休止)と同じチーム(チームジョックス)に属し、幼少時より一緒に練習していたという経歴の持ち主。
第2戦タイウー大会MOでは、スーパーファイナルに進出し5位。開幕戦の快挙がビギナーズラック的なものではないことを証明した(第3戦は不出場)。年齢制限があったためFISの公認レースに出場したのも昨季から。そこから一気に世界にトップ戦線に躍り出たことになる。
川村ばかりが注目されているが、他の日本の女子選手も好成績を残している。もうひとりの今季W杯デビュー組である20歳の伊原遥香は、第2戦タイウー大会MOでスーパーファイナルに進出し6位。住吉輝紗良は第3戦タイウー大会DMで4位。星野純子、冨高日向子もコンスタントに決勝に残っている。
2シーズン前、“平昌五輪の出場基準(W杯や世界選手権などで8位以内の成績を1回以上など)をクリアできた選手が1名(村田愛里咲=引退)だけだったが嘘のような大躍進。 日本チーム女子は、スーパーファイナルの進出がありうる……つまり、表彰台を狙える選手が5名という厚い選手層となったのだ。
安定感を武器にラフォン3連勝。総合V3に向けて独走体制に
女子全体にフレームアップすれば、ペリーヌ・ラフォン(FRA)の3連勝が大きなトピックだ。シーズン開幕前、このコラムで「他にも優勝できる実力者が複数おり、ラフォンのポジションはまだ盤石ではない」といった旨を書いたが、早くもそれを撤回しなくてはならないかもしれない。技術的なもの以上に、彼女が他選手と大きく違うのは、とにかく大崩れをしないこと。現状で総合2位のジャエリン・カーフ(USA)以下、これまでの3戦で複数回表彰台に立った選手はいない。一方で、ラフォンは、'18最終戦から13戦連続で表彰台に上がり続け、今季は3戦3勝。その差はどんどん開いている。
現状のポイントはラフォンが300点で、カーフが180点。数字だけを見ても、負傷欠場がない限り、しばらくはラフォンが総合1位を走ることになる。
第4戦トレンブラン大会からの北米ラウンド以降の女子は、2位以下の選手たちのサバイバルレースが面白くなりそうだ。そして、そのバトルに日本勢も何人か名を連ねることになるのだろう。また、第1エアでコークを見せたり、従来のエアにグラブを取り入れる選手が目立つようになったことも、大きな見どころとなる。
1 LAFFONT Perrine(FRA) |
2 KAUF Jaelin(USA) |
3 KAWAMURA Anri (JPN) |
4 DUFOUR-LAPOINTE Justine (CAN) |
5 ANTHONY Jakara (AUS) |
6 COX Britteny (AUS) |
7 SOAR Hannah(USA) |
8 SUMIYOSHI Kisara (JPN) |
9 GALYSHEVA Yulia (KAZ) |
10 SMIRNOVA Anastasiia (RUS) |
堀島は3大会連続表彰台。もはや、これは驚くべきニュースではない!?
一方、男子はどうか? ここでは、堀島行真の第2戦タイウー大会MOでの優勝、現状で総合2位という戦績を過剰に煽ることはやめておきたい。なぜなら、もはやミカエル・キングスベリー(CAN)に肉薄するいまのランクが彼の定位置だからである。堀島の優勝は珍しいことではなく、それほどニュースバリューがないのである。
これまで堀島には、“失敗、転倒による取りこぼしが稀にある”という弱点があった。総合優勝を狙うとなると、優勝を逃しても確実に表彰台に上がるキングズベリーとそこで差が開いてしまう。今季はいまのところは、開幕戦2位、第2戦優勝。第3戦3位と、連続して表彰台にあがっている。これは好材料といえる。
この“2強”以下は、ベンジャミン・キャヴェ(FRA)、マット・グラハム (AUS)、ドミトリー・レイヒャード(KAZ)、ウォルター・ウォルバーグ(SWE) らが名を連ねる。 これまでのところ、当コラムで予想した、〈キングズベリーに堀島が追随。以下、第2集団が数名続く〉という図式通りになっている。 日本勢男子は、原が不在の今季、堀島と他選手の差が大きく開いている状況だ。ただし、新鋭・松田颯が、デビュー戦となった開幕戦で決勝に進出し12位、第3戦タイウー大会DMでクォーターファイナルに残り6位と、非凡な才能を感じさせるリザルトを残した。いささか気が早いが、“北京五輪の有力代表候補”といえる選手が登場したことも認識しておきたい。
男子に関しては、もうひとつ触れておきたい話題がある。
昨季より、高いレベルでより多くの点を稼ぐための手段として、男女ともに「エアの難度を上げる」というテーマに取り組み始めた選手が目立っている。今季、女子はそれがより顕著だが、男子は予想されたほどの現象は起きていない。いまのところ、キングズベリーも堀島もまだ「コーク1440」を披露していないのだ。昨季、W杯で堀島が最初に挑み、キングズベリーが初めて成功させたこの新次元エアは、リスクが高いと判断されたのか、ここ一番に温存されているのか……? 今後の展開に注目していきたい。
さて、W杯はしばらくブランクを挟んで、W杯は2020年1月25日にカナダのトレンブランで再開。以後、最終戦までほぼノンストップのサーキットとなる。>
1 KINGSBURY Mikael (CAN) |
2 HORISHIMA Ikuma (JPN) |
3 CAVET Benjamin(FRA) |
4 GRAHAM Matt (AUS) |
5 REIKHERD Dmitriy (KAZ) |
6 WALLBERG Walter (SWE) |
7 DUMAIS Laurent (CAN) |
8 CHUNLAUD Kerrian (CAN) |
9 ELOFSSON Oskar(SWE) |
10 WALCZYK Dylan(USA) |
STEEP
スキー・スノーボードの本質を追いかけるWEBメディア。90年代からフリースタイルスキーを追う編集部による、モーグルW杯の見どころを紹介。サイトでは様々な情報を更新中。https://steep.jp/
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