星野純子＆伊藤さつき表彰台、王者の歴史的記録達成

2月28日～3月1日、秋田県･田沢湖スキー場で行われたW杯第7戦＆第8戦は、大変盛り上がり、内容の濃いものとなった。
2日間とものべ4000人もの観衆を集め、外国選手らは風情あふれる温泉や角館の武家屋敷の訪問など、レース自体以外も大いに楽しんでいた。

そして最も盛り上げたのは、第7戦モーグルで星野純子(チームリステル)が2位。第8戦デュアルモーグルでは伊藤さつき(立命館大学)が2位という、日本勢が表彰台に食い込む活躍だったことは疑いようがない。

星野は予選を4位で突破。ファイナル1を80点越えの高得点(81.06点)で2位。スーパーファイナルも女王ハナ･カーニー(アメリカ)に肉薄する展開で、見事2位フィニッシュ。自己最高位、自身3度目の表彰台に上がった。
刻々と変化した天気、雪質にきっちり対応し、3本とも上位をキープしたことは、高い評価に値する。ハナですらその変化に苦労し、スーパーファイナルでミスをしただけに、あわや初優勝か? とも思わせた。今回のような戦いが今後も出来れば、表彰台の常連にもなりうる。

伊藤さつきは、記念すべき自身初の表彰台獲得となった。
ラウンド16で、W杯優勝2度で前日も表彰台に上がっていた実力者オードリー･ロビショウ(カナダ)を撃破。セミファイナルでは、ハナを転倒に追い込んだ。1つのレースで2人の強者を打ち負かした自信は、大きなものとなったに違いない。

また男子でも、新星の活躍が見られた。
20歳の杉本幸祐(松本大学)がシングル、デュアルともに決勝進出。W杯3戦目ながら、その成長ぶりは明らかだった。
日本チーム期待の高校生、17歳の堀島行真(岐阜第一高校)はデュアルで、王者ミックと対戦。14対21で敗れはしたが、サイドバイサイドの接戦を演じた。
両者ともまだまだ課題は多いが、今後に期待を感じさせる。

さらに田沢湖大会では、歴史的記録の連発となった。

まず男子は、ミカエル･キングスベリー（カナダ）が今季第2戦から7連勝。
これまでは、セルゲイ･シュプレツォフ(ロシア)が'94季から'95季にかけて記録した6連勝、ジェレミー･ブルーム(アメリカ)が’05季に記録した6連勝が最高だった。ミック自身憧れだったと語る伝説の2選手の記録を超えることに成功したのだった。
そしてさらに、田沢湖での2勝により、W杯史上最多勝利数28勝にも並んだのだ。ミックの並んだ記録ホルダーは、エドガー･グロスピロン(フランス)。モーグル史上最高のスーパースターと言えるレジェンドに、22歳で追いついてしまった。
なお、現在のところミックのW杯出場試合数は60レース。なんと5割近い確率で優勝しているのだ。

一方ハナも、通算最多勝記録がかかっていた。2連勝すればドナ･ワインブレヒト(アメリカ)が持つ46勝に並んだのだ。しかし前述のようにハナは、デュアルでは準決勝敗退。その記録に並ぶのは持ち越しとなった。
そんな中、ジャスティン･デュフォー-ラポイント(カナダ)が不調に終わったため、W杯総合優勝の5連覇が確定した。
これでハナは6度目のW杯総合グランプリ！
これまでの最多は、ドナの5回だ。W杯総合のタイトルは、選手たちが一様に「最も価値がある」と話すものである。一発勝負の五輪や世界選手権よりも、強くあり続けなければ獲れないという意味で、”女王”という称号がよく当てはまる。この6回目のタイトルは、女王の最強度を最も表すものと言えるだろう。

そして15日は、いよいよ今季W杯最終戦のデュアルモーグルが、フランス･メジェーブで行われる。
ここでは、ミックによるエドガー越えの記録達成がかかる。ハナは、ドナの記録に並んで、有終の美を飾りたい。
星野純子、伊藤さつきといった好調日本勢の表彰台も十分に考えられる。
J SPORTSの生中継には、怪我で欠場中の日本の男女エース、遠藤尚(忍建設)、伊藤みき(北野建設)がゲスト解説として登場する。

見どころ盛りだくさんの最終戦となるはずだ。