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まずは、
「愛子、表彰台おめでとう!」
12月15日、モーグルW杯の2012-2013シーズン(‘13季)が、フィンランド・ルカにおいて開幕した。
初戦がデュアルモーグルという珍しいケースで早速、結果を出した上村愛子。3年ぶりのフル参戦となるシーズン初戦で準決勝まで進出。決勝へは進めなかったものの、3位決定戦を制し表彰台をゲットした。
彼女にとっては通算32回目の表彰台。W杯通算勝利数も10回を誇る。もはや驚くべきことではないと思われがちだが、今回のこの結果にはいろんな意味がある。
まず、1人ずつ滑るシングルで行われた予選が3位通過。ターン点は全体での2位評価であり、滑りの質は休養前に戻りつつあり、高く評価されているということだ。
次に、決勝ラウンドの対戦相手が興味深かった。1回戦のヘヴィッグ・ワッセル(ノルウェー)は17歳。’02年ソルトレーク五輪金メダリスト、カーリー・トゥロー(ノルウェー)のチームメンバー。言わば元女王の秘蔵っ子だ。準々決勝で対戦したアンディ・ノード(カナダ)は16歳。各国関係者からも’06年トリノ五輪金メダリスト、ジェニファー・ハイル(カナダ)以上の素材と噂される注目新人だ。
33歳の彼女にとって、自分が選手として活躍し始めた頃に産まれた選手との対戦。しかも、2人ともかつてのライバルの後継者的存在。その構図はたいへん興味深い。両選手との対戦も決して楽勝ではなかったものの、若い勢いを退けることが出来た。
さらに準決勝は、18歳のジャスティン・デュフォー・ラポイント(カナダ)。今季の女王候補筆頭には完敗したイメージだが、彼女にとっては差を感じたというよりも、届くことの出来るターゲットを感じることが出来たということではないだろうか? ただ、スタミナが必要なデュアルでバーンも固いうえに、10代選手との連戦は、さぞ疲れただろう…。
全盛時に戻すことができれば絶対的に強い30代と、伸び盛りの10代の若手選手達。最終的にはどちらの力が上回るか? ソチ五輪でのメダルを占う上でも、大きなポイントになりそうだ。
決勝のジャスティン vs. ヘザー・マクフィー(アメリカ)に関しては、ミドルで大きなミスをしたジャスティンの自滅。3Dエアを飛んだ上、安定した滑りを続けたヘザーの優勝はあっぱれだが、実力的にはジャスティンが上回っているように見えた。このような失敗がなくなった時こそ頂点に立てる。今回のレースでジャスティンは女王昇格への厳しい最終審査を受けているようだった。
男子は早速、注目の決勝カードが実現した。ミカエル・キングスバリー vs. アレックス・ビロドウである。カナダの新旧王者対決となったわけだが、ミック(ミカエル)がアレックスに競り勝った。新王者の喜びの大きさと、旧王者の悔しがりようは手に取るようにわかった。この戦いは今後、幾度となく繰り広げられる名勝負となりそうな予感。本コラムでも注目していきたい。
そして、最後に気になるのは、上村愛子以外の日本チームの状況だ。
伊藤みきは、決勝ラウンドデュアルではエアでミスし1回戦負けしたものの、安定したターンは健在。オフに怪我による休養はあったものの、ウェアのサイズを変えるほど筋力アップしたとの情報もあり状態は悪くない。
村田愛里咲は、途中棄権の予選落ちとなったが、エアにバックフルを再導入し、滑りのポテンシャルは増している。今後に期待が持てる。また、星野純子は、昨季に決勝ラウンドでの戦いに慣れ、表彰台も夢ではない存在になりつつある。
一方、男子は、遠藤尚が予選5位の好スタート。スピードは上位3人を上回っていた。決勝ラウンドでは第2エアの着地でタッチダウンし1回戦負けとなったが、上位を狙える戦闘能力は確実に備わっている。王者のような安定感が欲しいところだ。
西伸幸は26位と奮わなかったが、スピードは相変わらずトップレベル。ハマれば上位進出もある爆発力を持つ。
「ハマれば…」という意味では、ベテラン上野修も西同様。過去3度W杯表彰台の実力が大きく損なわれているわけではない。小林樹生、山口卓也、四方元幾は、フィンランド・ルカの固いバーンに苦戦していた印象だ。しかし、世界で戦うポテンシャルはある。いま彼らに必要なのは経験だ。
上村愛子、伊藤みき、村田愛里咲、遠藤尚、西伸幸、上野修。
男女あわせてトータル6人のW杯表彰台経験者がいる日本チームは現在、カナダ、アメリカに次ぐ第3勢力。
ジャパンパワーにも、ぜひ注目してほしい。
STEEP
スキー・スノーボードの本質を追いかけるWEBメディア。90年代からフリースタイルスキーを追う編集部による、モーグルW杯の見どころを紹介。サイトでは様々な情報を更新中。https://steep.jp/
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